iLLNESS(BBC)インタビュー 現代の、第3空間としてのストリート

今、みんながいるストリートはどこか?

──BBCはヒップホップのファンにも人気ですけど、iLLNESSさん自身はどういう音楽を聴かれてきたんですか?

iLLNESS 反抗的なものが好きで、中学生の頃はパンクをよく聴いてました。そのあと、パンクに対するカウンターが自分の中であって、ダンスミュージックやアブストラクト、チルアウトとかなんでも聴いてます。

そこから、また人の声を聞きたくなったので、Antipop Consortiumとか、アブストラクトなトラックにラップを乗せるヒップホップを聴きはじめました。そのあとは、ずっとインディー・ロックばかりですね。
Anti-Pop Consortium - Volcano
──ずっとヒップホップを通ってきたというわけではないんですね。

iLLNESS Twitterでも「イルくん、好きなヒップホップアーティスト教えて」「尊敬しているラッパーは誰ですか?」みたいなリプライがよく来るんですけど、ヒップホップで尊敬するやつはいねえよって(笑)。ストーン・ローゼスとかは尊敬してる。

──(笑)。でもすごく面白いのは、そういうiLLNESSさんが今、ヒップホップのアーティストやファンから支持されてることです。iLLNESSさんが考えるストリート感はどういったものなのでしょうか?

iLLNESS 人間って誰でも空間を所有してるんですよ。俺は、第1空間に家庭や家族、第2空間に学校/職場があって、それで第3空間の遊び場として自分の居場所=ストリートだと定義してます。

第1空間でも第2空間でも居心地が悪い人が、第3空間でやっと居場所ができて、ストリートが生まれる。知り合いや友達との輪を広げる場所をストリートと呼んでいるんだと思うんですよ。

でも人によっては、第3空間が漫画喫茶や秋葉原だったりする。それで良い。そう考えると、今みんながいるストリートってインターネットじゃないですか。

だからラッパーとかが「俺らはストリートだから、あいつらはストリートじゃないから」とか話をしてるのは、すげえ馬鹿だなって思いますね。

──その定義は、ものすごく腑に落ちます。

iLLNESS 本当にリアルストリートだけでやってみればいいじゃんって(笑)。お前の声なんて届いてこないよって。

──それはBBCがポップアップ以外の実店舗を出さない理由にもなっている?

iLLNESS お店を出さない理由は、単純に考えれば分かるんですけど、ファッション業界ではZOZOTOWNが1人勝ちじゃないですか。

めちゃくちゃ便利なストリートがここに(*スマートフォンを指して)ある。なのに、わざわざ実店舗に行くなんて、逆にどれだけストリートじゃないんだよって。

こういうこと言っても嫌われるけど、インターネットでアパレルやってる他の人を見て下手くそだなと思うことがたくさんあります。例えば、福袋ってあんなのゴミの塊じゃないですか。大きな会社だったら、(余り物の服は)ブランド価値が下がるので、焼却して燃やすんですよ。

だけど、福袋やってる人たちはいる。だから、それをやってる時点でブランドイメージなんてどうでもいいっていう程度なんですよね。物が溢れかえってる時代に他と差をつけるのは、本当に小さい部分。どっかで付加価値をつけてあげないと。 iLLNESS 前にBBCの偽物が出た時に、お客さんから質問で「BBCと偽物はどこで見分けたらいいですか?」って言われて、「プリントが綺麗な方が偽物で、プリントが汚いやつがうちのです」って答えてましたね。

そしたら、みんな「BBCは嘘をつかない、面白い」って(笑)。やっぱり俺の考え方で間違ってないわ、みんなこういうものが好きなんだなって確信した。

──そこの信頼感が大事なんですね。

iLLNESS そこのスタンスだけ誰かが真似して、失敗してる人は1番痛いなって思いますけどね。 ──インターネットに可能性を感じたきっかけやタイミングはあったのでしょうか?

iLLNESS インターネットは、商品の購買や動画のアップロードもできますけど、基本的には文字情報のシェアが早い。単純に言語を使うのが得意な人間だったから、親和性が高かったというだけです。Twitterをはじめた理由はクリスタル・キャッスルズのライブがいつあるか知りたかったからだし。

──言語と親しみがある環境で育ったiLLNESSさんにとって、Twitterは親和性が高かったんですね。

iLLNESS そうですね。なので俺はBBCを服屋だとは全く考えてなくて、基本的に僕らの考え方はこうです。面白かったらドネーションしてください。そしたらTシャツ送りますね、というスタンス。

海外の1番大きいドラッグのデータベースに「Erowid」(外部リンク)ってサイトがあるんですけど、無料でドネーションだけで運営していて、本当に尊敬してます。

逆に他のアパレルブランドを見てこうなりたいとか、かっこいい洋服をつくって売ってやろうと思ったことは1度もないですね。

──思想が根本にあって、その表現の1つがあくまでアパレルになったという感じなんですね。

iLLNESS 本当にそうです。全然こだわりはないので、服以外にやりたいことが見つかればやると思います。

──現時点で、BBCとしての次の目標や新たなステップは考えてますか?

iLLNESS 俺は薄情な人間でもないですし、シンプルな人の考えとして、自分に良い影響を与えてくれたものに対する恩返しをしたいと思ってます。みんな本当に良い音楽を聴いてないし、良い本も読んでない。

そういうのもまとめて、何か還元できたらいいと思います。「普段何を読んでるんですか? どんな音楽聴いてるんですか? どんな服着てるんですか?」という質問が、DMで圧倒的に多いリアクションなんですよ。いや、ググりもしないような馬鹿は多いっすよね。Instagramに入れたそのワードで検索してみ? そのワンアクション入れたら安部公房とか出てくるからって。

BBCから入ったんだけど、その先で興味を持つものってあるじゃないですか。

──ありますね。

iLLNESS 俺だったら好きなスケーターがいて、「なんでこいつこんなオーリー飛べるんだろう?」って見てたら、その人のキャラが好きになる。それでその人が好きな何かを買ってみるとかあるじゃないですか。

それは、何か人やブランドを好きになっていく過程で自然なことだと思うので、ただの受け手でいるやつには教えたくないけど、興味がある人にはそういうものを教えられたら面白いかなと思ってます。

──話が少し戻りますけど、日本では酩酊や快楽を与えるドラッグの多くは違法ですし、社会的にも認められていません。そんな状況に対してイルネスさんが何か思うことはありますか?

iLLNESS 俺も悪さしすぎて人をど突いて逮捕されたこともあるので、禁止してた方が良いんじゃないですかね。

──ありがとうございました。

特集「2018年のストリート」


KAI-YOU.netが送る特集第3弾「2018年のストリート」は、1月中に更新予定。

記事一覧と更新予定記事の予告は、特設ページから。続々更新していきますので、ご期待下さい!!
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BLACK BRAIN Clothingディレクター

Black Brain clothing(BBC)のディレクター。BBCは、2015年頃より不定期にインターネット上で販売を開始し、ストリート/ネットカルチャーに敏感なユース世代を中心に絶大な人気を集めている。YouTuberのマホトさんやへきトラハウス・カワグチジンさん、ラッパーのJinmenusagiさんやJUNKMANさんらが好んで着用。ラフォーレ原宿1階・LITTLE UNION TOKYOにてポップアップストアも開催。

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