『GREEN QUEEN』はラッパー あっこゴリラの新章? 軌跡を振り返る

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『GREEN QUEEN』はラッパー あっこゴリラの新章? 軌跡を振り返る
『GREEN QUEEN』はラッパー あっこゴリラの新章? 軌跡を振り返る

『GREEN QUEEN』

STUTSやOMSBなど 新鋭クリエイターとのコラボ作品をリリースしてきたあっこゴリラがその集大成となるEP『GREEN QUEEN』を発表。

前作EP『Back to the Jungle』ではジャングルをコンセプトとしていたが、クリエーターとのコラボシングルを次々とリリース。PARKGOLFや食品まつりらとタッグを組み、新たな魅力を引き出した。

そこで今回は『GREEN QUEEN』のリリースにあわせ、彼女のこれまでの軌跡を振り返る。

あっこゴリラの軌跡を振り返る

まだ駆け出しのころは紙芝居を用いたラップを売りにしていたあっこゴリラだが、彼女を紙芝居ラッパーと呼ぶものはもはや誰もいない。

バンド「HAPPY BIRTHDAY」のドラムとして3枚のアルバムを発表。バンド活動と並行してラッパーとしても活動し始めていた彼女はバンド解散後にラッパーに専念することを選んだ。

彼女が敬愛して止まないゴリラにちなんでつけたMCネームはあっこゴリラ。当初は「戦極MC BATTLE」などMCバトルに果敢に挑戦しながらライブに出演を続けた。

紙芝居をラップで読み上げる紙芝居ラップを持ちネタとしていたが、持ち前のぶっとんだキャラクターにスポーティーかつ、セクシーな容姿、そしてエネルギッシュなライブなどが話題を集めた。手ごたえを感じたあっこゴリラは紙芝居ラップを卒業。そして手探りながらも1stアルバム『TOKYO BANANA』を完成させた。

『TOKYO BANANA』/画像はAmazonより

現在も楽曲制作でサポートを務めるヒラサワンダや狐火のトラック制作で知られる観音クリエイションなどと組みながら自身も積極的に楽曲制作に取り組み、アルバムを通して独特のジャングルワールドを構築。

タイトル曲の「TOKYO BANANA」や「谷原」などはドラマーらしい躍動感のあるドラムプログラミング。またあっこゴリラがリスペクトするZAZEN BOYSの向井秀徳への想いを歌った「向井さん」は隠れた名曲としてライブを通して再評価されている。そしてエレクトリックリボンのericaをゲストに迎えた「脱ヲタ (feat. erica)」はライブの度にファンにあっこゴリラ自身を肩車をさせ、まるで騎馬戦の如く観客の頭上で歌う姿が話題を呼んだ。
勢いをつけたあっこゴリラは女性MCだけのMCバトル「CINDERELLA MCBATTLE」でFUZIKO(S7ICKCHICKs)やMC MIRI(ライムベリー)などの強敵を下し、見事に初代チャンピオンに輝いた。

同大会はAbemaTVでも生放送されていたことからその名を改めてシーンに知らしめることとなった。

『Back to the Jungle』/画像はAmazonより

そして前作EPの『Back to the Jungle』制作の一環で念願のアフリカに渡り、憧れのゴリラとの対面を果たす。こちらもアフリカのジャングル感溢れる作品で、収録された曲は全てライブ映えするアップナンバーだ。

あっこゴリラの新章『GREEN QUEEN』

そうやって1つ1つ足元を固めて行ったあっこゴリラが遂に「コラボ」をテーマに作品制作に乗り出した。言わばあっこゴリラの新章の始まりである。
コラボ第1弾に選んだ相手はあっこゴリラの盟友KMCのトラックメーカーでもあり、PUNPEEを客演に迎えた「夜を使い果たして」の大ヒットも記憶に新しいSTUTS。そんな彼と「黄熱病 -YELLOW FEVER- × STUTS」を共同制作した。

スムースなメロディにSTUTSらしい力強いスネアがマッチ。なんともご機嫌なダンスチューンに仕上がっており、アナログ盤7インチがリリースされるほどの人気を呼んだ。
続く第2弾コラボ「PETENSHI × ITSUKA (Charisma.com)」の相手はなんとCharisma.comのMCいつか。そしてトラック制作はなんとSIMI LABのOMSB。声質の全く異なるタイプのMCいつかと鋭さの光るあっこゴリラが絶妙にマッチする。

また、OMSBの制作したトラックもローリン・ヒル「Lost Ones」をサンプリングするなど、これまで以上にストリート感が溢れており、あっこゴリラの新しい魅力を引き出す1曲となった。
第3弾コラボ「ウルトラジェンダー × 永原真夏」 はあっこゴリラがリスペクトを贈る元SEBASTIAN Xの永原真夏とのコラボ。あっこゴリラの自主企画ライブ「ドンキーコング2.5」にもゲストとして出演するなど、親交を結ぶ永原真夏と晴れての共演となった。

そしてトラックを制作したのはあっこゴリラを「TOKYO BANANA」からサポートするヒラサワンダという間違いの無い組み合わせ。「ウルトラジェンダー」というタイトルからも読み取れる通り、性からの解放をテーマに歌っており、同世代の女性から支持を集めた。

また、MVでは性からの解放をあっこゴリラなりに表現。胸から靴下を取り出して投げ捨てるシーンでは男性からの性対象として見られることを拒否する姿勢が読み取れる。

他にも「女の子はラップすんなとかゆう男共fxxx youだ」と独自のフェニミズムを主張。男性同士のキスシーンなども印象的だ。まさに「性を超越する」という強いメッセージソングとなった。

この3曲だけでも名作揃いとわかるのだが、新たに収録された3曲も聞き逃せない。
今作からの先行シングルとしてリリースされた「GREEN QUEEN × PARKGOLF」はあっこゴリラの専属DJを務めながらも自身もソロ作を精力的に発表し続けるPARKGOLFとコラボ。

これまでアップナンバーが多かったあっこゴリラには珍しいチルソング。PARKGOLFが得意とする突き抜けていくようなEDM感は全くない。

しかし彼の跳ねるような鍵盤はそのままで、なんとも気持ちの良い曲に仕上がっている。この気持ち良さが病みつきになり、<君だけの恋、君だけ>とついついフックを口ずさんでしまう。
 こちらもPARKGOLFによるバウンシーなビートだが、新鋭シンガーの向井太一をゲストに迎えた。まだ25歳ながらも自ら作詞作曲を手掛ける多才さとスモーキーな声質で注目を集める向井太一

第59回グラミー賞で「最優秀リミックス・レコーディング部門」にノミネートされたstarRoの楽曲でコラボを果たして注目をあつめた。そして今回はあっこゴリラとコラボ。

「ゲリラ豪雨のように音楽が降り注ぐ」、そんな音楽を楽しむ気持ちを見事に表現した曲だ。鋭利で小刻みに跳ねるあっこゴリラのラプに対し、スモーキーで伸び伸びとした向井太一の歌声の対比も面白い。 音楽業界でもひときわ異彩を放つ食品まつり a.k.a foodmanとのコラボにも挑戦した。米国のHIPHOP界に新しい風をもたらしたと言っては過言ではないDiploのレーベルGood enuffよりリリースもしている食品まつり。あべともなりとのコラボ曲「産みの悦び」ではアブストラクトなトラックを制作して衝撃を呼んだ。

そして今回の新曲では日本伝統の楽器音を用いて独特の世界観を構築。どこか懐かしい音色が重なるが、根底にあるのはティンバーランドのような変則リズム。ノイジーながらもジャングル感すら感じさせる変態的なトラックであっこゴリラのラップが大暴れする。しかも歌っているテーマはあっこゴリラの大好きなバスケだ。中毒性が非常に強く、EP内でもひと際強いインパクトを残す。

「CINDERELLA MCBATTLE」での優勝から約1年。あっこゴリラは手探りながらも自分の音楽性をひたすら信じて突き進んできた。

そしてその結果、とんでもない成長を遂げてしまった。

その成長をぜひこのEPで実感してもらいたい。彼女は今後も更なる進化を遂げるだろう。今からそれが非常に楽しみである。

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