YouTuberよりもドリフ! SNSでブレイクの『放課後ミッドナイターズ』監督が語る

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YouTuberよりもドリフ! SNSでブレイクの『放課後ミッドナイターズ』監督が語る
YouTuberよりもドリフ! SNSでブレイクの『放課後ミッドナイターズ』監督が語る
2012年に公開された劇場版アニメ『放課後ミッドナイターズ』が、2016年末から再ブレイク中だ。ブレイクのきっかけは、劇場版公開当時、宣伝用に作った90秒×12本のショートムービー。主人公の人体模型のキュンストレーキ(キュン様)と、骨格標本・ゴスのバカバカしい日常を描いたショートムービーのユルさが注目を集め、新たに多くのファンを獲得し、にわかにブームとなったのだとか。

この思わぬブレイクを受け、完全新作ショートムービーを制作するべく、本作の竹清仁監督はクラウドファンディングサイト「CAMPFIRE」で制作資金集めをスタート。そんな竹清監督に、『放課後ミッドナイターズ』の創作秘話から新作短編にかける意気込み、さらには劇場版の続編のストーリーまで──今後の展望を聞いた。 取材・文:高橋ダイスケ 写真:市村岬 編集:須賀原みち

意識したのは、YouTuberよりもドリフだった

──2016年末からフル3DCGアニメ『放課後ミッドナイターズ』がSNSを中心に再び注目を集めています。まず、その経緯についてお教えください。

竹清仁(以下、竹清) 決して僕らが仕込んだわけではなくですね(笑)。去年、こども・アニメ専門チャンネル「キッズステーション」での映画『放課後ミッドナイターズ』(2012年制作)放送に合わせて、同局が『放課後ミッドナイターズ』のショートムービーを数ヶ月にわたって流していただいたのがきっかけでした。

そのショートムービーを見た人がSNSなどに感想を流してくれて、そこから一気に広まりました。もともと劇場版の宣伝用に作ったんですけど、ここに来て、映画より人気が出ちゃって。 ──2012年の映画公開時と比べて、今のブームではその反響やファン層に違いはありますか?

竹清 劇場版公開当時はファミリー層からの反響が多かったのですが、今回、女性からの反響が多いです。どうやら、通勤・通学中に見てもらっているらしくて。

「1本90秒」「音を出さずに字幕で内容がわかる」「次々観られる」というスタイルが、たまたま時代にハマったのかなって思います。そこから劇場版を観てくれた人もたくさんいたようです。

──ショートムービーを観ていると、YouTuber動画のような雰囲気も感じます。制作当時、YouTuberを意識したりしましたか?

竹清 いえ、実は全然意識してなくて…。僕はドリフのようなコメディをやりたかったんです。人をイジって笑わせるんじゃなくて、体を張って笑わせる、健康な笑いというか…。老若男女誰でもわかるような笑いですね。

その結果、YouTuber動画のようにうまく時代にマッチングしたんじゃないかと思います。

──ショートムービーは本当にドリフ的で、何も考えずに観られますよね。

竹清 あいつら(キュン様とゴス)自体がバカじゃないですか(笑)。ショートムービーは「人間誰しも多かれ少なかれバカなんだから、それでいいんだよ」というスタンスで作ってるんですけど、SNSなどで「嫌なことがあったけど、これを観たら忘れた」「疲れてたけど癒された」という感想が多くて。みんな疲れているんだな~って。

そんな人たちを少しでも癒すことができて、スタッフも喜んでます。

──例えば、ショートムービーの「ケツ花火」では、キュン様とゴスが「ケツに花火を挿したら飛べるんじゃないか」と、本当にバカバカしいことを真剣にやっている。だから、面白いんですよね。

竹清 (笑)。まさにその通り。「ケツ花火」シリーズは自分が言うのもなんですが、ハズレなしの面白さです。新作も期待してください!
放課後ミッドナイターズショートシリーズ 「ケツ花火」

映像技術の進化と変わらぬ苦労

──現在、『放課後ミッドナイターズ』はショートムービー新作制作のため、CAMPFIREで資金を募っています。新作でも、キュン様とゴスの掛け合いという基本的なスタイルは変わりませんか?

竹清 そうですね。やはり通勤・通学中に気軽に楽しんでもらいたいですね。ほかにも、映画館の幕間でもいいし、電車のモニターにもいいかなって、いろいろ考えています。

あとは、イベントなどと絡めて、いろんな場所で上映会ができたらいいですね。例えば、僕が小さい頃には、団地の壁に映画を投影する上映会なんかもありました。夜店も出たりして、そういう雰囲気も楽しいだろうなって。

──ショートムービーであれば、いろいろな展開が考えられますね。

竹清 これはまだテスト段階なんですが、VR技術を使って、「『放課後ミッドナイターズ』に出てくる夜の学校を探検する」といった映像を作って内々で遊んだりもしています。

このVR体験はイベントなどでもできるし、大人も子供も楽しめるアトラクションなので『VR放課後ミッドナイターズ』だけでもクラウドファンディングやりたいくらいですよ。

──それ、絶対に楽しいですね! ちなみに、ショートムービーのアイデアはどうやって生まれるのでしょうか? 真剣に企画会議をしてるんですか?

竹清 まずはスタッフみんなで会議してネタを出します。最終的には、僕がプロットとしてまとめ、役者さんと一緒に稽古で練り上げていきます。小劇場でやるコメディと同じような作り方で、ある程度プロットは作りますけど、役者さんに演技をしてもらいながら「こうしたほうが面白い」「この動きはいまいちだな」って変えていきます。

結果、もともとのプロットから、内容は半分くらい変わっちゃいますよ。 ──モーションキャプチャの役者さんが、キュン様やゴスの動きを演じているんですよね。

竹清 モーションキャプチャでは顔と手と足先以外を撮影して、表情はアニメーターが、役者さんの感情を大きく誇張して描いているんです。生身の人間の動きと、アニメーションによる誇張の良いとこどり。ハイブリッドな作り方ですね。

──劇場版公開から約5年経っているわけですが、モーションキャプチャやCGアニメーションの制作環境もだいぶ変わったのでは?

竹清 エフェクトやレンダリングなどは毎年進化しています。ただ、結局、手描きもCGも大事なのは画作りなので、苦労するところは一緒ですよ。

──画作りの苦労というのは?

竹清 観ている人がキャラクターに感情移入できるかどうかが大事なんです。感情移入してもらうためには役者さんやアニメーターの作る演技を、いかにドラマチックにできるか。そういう画作りをしないといけない。

──そうなると、モーションキャプチャで役者さんの動きが取り込めるのは強みですね。

竹清 まさに、そうですね。やっていることはくだらないんですけど(笑)。

それに、モーションキャプチャの撮影だと役者を360度で撮影するので、カメラワークを意識しなくていいのもポイントです。監督からしても、自由度が高い。「役者の演技は良かったけど、カメラワークが良くなかった」ということがないですから。

モーションキャプチャならではの面白み

──今回のクラウドファンディングでは、出資者がモーションキャプチャを付けて役者になれる「アクター出演権」という特典もありますよね。募集コメントには「ショートムービーの撮影、めちゃくちゃ楽しいんです!」と書かれていますが、モーション撮影はどのような雰囲気で行われているんですか?

竹清 スタッフみんなで好き勝手にゲラゲラ笑いながら撮影しています。役者さんもスタッフの反応を見ながら芝居をするので、ライブ感とグルーブ感がすごいんです!今回は東京・赤坂のスタジオで撮影しますが、劇場版のときは「どうせなら楽しいところで撮影するか!」って沖縄で撮りました。

──モーション撮影に、ロケーションは関係ないですよね(笑)。

竹清 2週間も沖縄にいたのに、スタジオにこもりっきりだからみんな真っ白なまま。「帰りに日サロでも寄って行くか!」って(笑)。

──(笑)。

竹清 モーションキャプチャの撮影で面白いのは、実は演技以外のところなんですよ。演技を始める前の緊張してそわそわしている動きや、カットをかけた後のホッとしてリラックスした動きも、リアルタイムでキャラクターに反映されるので、すごく自然な絵が撮れるんです。

実は、この発見がモーションキャプチャでコメディを作ろうと思ったきっかけなんですよ。

──モーションキャプチャならではの動きの面白さに注目した、と。

竹清 キャラクターを魅力的に描くために大切な‶無駄な動き″も表現できますからね。これは作為的に表現しようとしても、なかなか難しいんです。モーションキャプチャならでは。だから、撮影するたびに芝居が違ってもOKなんです。

──『放課後ミッドナイターズ』はいわゆるアニメ的な制作手法とはまったく違うわけですね。

竹清 僕も、半分以上は実写のつもりで作ってます。キュン様とゴスは、中村卓二と中島荘太っていう2人の役者にずっと演じてもらっているんですけど、最初はちょっと演技が固かったんですよ。

そこで、彼らはキュン様とゴスと同じように先輩後輩の関係だったので、演技のときも「卓二」「荘太」って名前で呼び合って演技してもらったんです。モーションキャプチャでは声は録らないし。そしたら、急に良い感じになったんです。これもモーションキャプチャならではの利点だなって。

グッとくる良い話!? 劇場版の構想とは…?

──ショートムービーはすでに制作も進んでいるようですが、劇場版の続編という話はあったりしないんですか?

竹清 実は、1作目の公開直後に続編を作ることが決まっていたんですよ。それがいろいろあって延びちゃってて…。だから、話自体はほぼ出来上がってます。

──そうなんですね! 可能な範囲で、続編についてお教えください。

竹清 続編は、劇場版一作目の直後から始まります。

一作目は理科室のキュン様たちが不用品となるのをなんとか回避しようとする物語。

続編では、キュン様の学校が隣町の学校と合併することになります。そっちのミッドナイターズには、すごくデキる人体模型がいて、キュン様は自分の地位を脅かされてしまう。

隣町の人体模型の影響で、合併した小学校がギスギスとした楽しくないものになってしまう。さあ、どうするキュン様&ゴス?というお話。

最終的にはミッドナイターズが存在する理由も明かされるんですが、「どんな人だって、誰かに必要な存在だ」という思いを込めたいなって。そんな映画を作りたいと思っています。あくまでコメディですけど、ラストはグッとくる良い話です。

──なかなかメッセージ性のある内容になりそうですね。

竹清 そもそも『放課後ミッドナイターズ』を観てもらった人から、「癒された」とか「嫌なことが忘れられた」っていう反応があるなんて、正直思ってもみなかったんです。疲れてる人が多い中で、『放課後ミッドナイターズ』も少しは役に立っているのかな。今、みんな、そういう映画を観たがっているじゃないかなって。

コメディ映画のいいところは、人間のダメな部分も含めて「それでいいじゃん」と世界をまるごと肯定する気分にさせてくれるところなんですよ。人間なんてそんなもの。いい加減で、おバカで、愛すべき存在じゃん──というところなんですよね。

──立川談志が「落語は人間の業の肯定である」と言っていましたが、まさに同じ感覚なのではないかと思います。

竹清 そうなんですよ。そんな世界ではおおらかにもなるし、人の気持ちがわかるようにもなるはずなんです。劇場版やショートムービーもそういうところを芯にしたいですね。

地元・福岡で映像制作をするメリット

──また、『放課後ミッドナイターズ』は、竹清さんが代表を務める映像スタジオ「モンブラン・ピクチャーズ」で制作されています。同社は福岡に拠点を置いていますが、東京ではなく福岡で映像制作をするメリットをお教えください。

竹清 僕は福岡出身で、上京して東映に勤めていました。でも、田舎っぺの自分にとっては東京に住んでいると情報がどんどん入ってきちゃってキャパオーバーしがちだったんです。その点、福岡にいると心の余裕ができて、個人的には自分のペースで制作できるというのが一番ですね。生活も大事にしながら、やりたい仕事もできる。

──なぜお聞きしたかというと、数年前から地方の映像プロダクションが活性化しているという話がありました。モンブラン・ピクチャーズは2012年設立ですが、それから5年が経ち、環境や考え方に何か変化はあったかな、と。

竹清 福岡の人口って、毎年1万人以上増えているんですよ。「東京は人が多いから」って言ってたわりには、福岡の人口も増えてますね(笑)。ただ、福岡市は起業・スタートアップの都市として、市を挙げてベンチャーのバックアップをしているのは大きいですね。

──福岡には、映像プロダクションやゲーム制作スタジオもたくさんあります。クリエイティブなベンチャーを支援する土壌があるのですね。

竹清 前作で撮影協力してもらっている、(福岡に拠点をおくゲーム会社)レベルファイブのキャプチャスタジオ担当者が大学の後輩だったり。あちこちにつながりのある仲間がいて、会社の垣根を越えて連絡を取ったりしています。

──横のつながりもあるということですね。それでは最後に、『放課後ミッドナイターズ』ファンのみなさんへメッセージをお願いします。

竹清 自分でも言うのもなんですけど、今回の新作ショートムービーはハズレなしの面白さ!! 満足していただけるものができるとお約束します。

今、ネット上で観られるショートムービー12本にも、みなさん、そろそろ飽きはじめている頃かと思います。僕も早く新作を観ていただきたいですし、制作するエピソード数が増えるも減るも皆さんのご支援次第です! ぜひ、福岡の弱小スタジオを応援していただければ、と思います。 ©AFTER SCHOOL MIDNIGHTERS PARTNERSHIP.
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