カルチャー化の鍵はキッズ。タイ・バンコク
バンコクは前回訪れた際に、すでにカードショップに足を運んでいたので、着いた初日に早速そのお店へ突撃してみることに。 平日昼過ぎにも関わらず、そこにはたくさんのカードゲーマーたちがいました。 そして何より、キッズのカードゲーマーが多い。子供の多くは、親にカードを買い与えてもらうことでしかカードゲームに触れる機会がないため、「子供がカードゲームで遊んでいる国」というのは、親世代からも理解のある文化であることがわかるのと同時に、カルチャーとしての土俵がすでにある国だと言えます。 早速『ヴァンガード』と『バディファイト』でファイトしてきました。
異国の地で、それも大人が子供たちと同じ目線で遊ぶ。なかなか体験できることではありません。
そして翌日は、この『ヴァンガード』と『バディファイト』を手がけるTCGカンパニー、ブシロードが催すカードゲームイベント「ブシロード BIG FEST」に参加してきました。 タイの首都バンコクで、『ヴァンガード』『バディファイト』『ヴァイスシュヴァルツ』プレイヤーが一同に集うイベントで、総来場者は約2500人。
物販エリアに、 大会スペース、 初心者ティーチングエリアに、 簡単な屋台エリアまであり、盛りだくさんのイベントとなっていました。 ここでも目を引くのが、キッズカードゲーマーの多さ。
会場には親子で参加している方たちも多く、カードゲームはタイにおいて、ある種の市民権を得るまでに成長したカルチャーだということを、目の当たりにした瞬間でもありました。
ちなみに、タイには『ヴァンガード』『バディファイト』それぞれ日本語版とタイ語版の両方が存在し、大会ではそれらの言語を混ぜて使用することが禁止されており、日本語版大会とタイ語版大会と完全に分けられています。 なぜ混ぜることができないのか。その理由はタイ語版を現地の可処分所得に合わせて非常にリーズナブルに作ってあるからです。日本語版のトライアルデッキが1100円のところ、タイ語版のトライアルデッキは400円弱で売っています。
単純にテキストを翻訳して日本と同じ価格で売ったとしても、カルチャーとしてカードゲームが育ってもいない国において、さらに日本よりも収入が低い人たちに手に取ってもらえるはずがありません。
つまり、現地の人たちが手に取りやすい価格設計のタイ語版は、カードゲームというカルチャーを広く普及させる役割を担っているのです。
そして、タイ語版からカードゲームを始めた人たちが、日本語版へとステップアップできるようにするのも、ローカライズされたカードゲームの役割でもあります。
ざっくりその役割を表すと、使えるカードの種類がどんどん多くなっていくというイメージです。『Magic』プレイヤーの方ならマジックリーグで遊んで、スタンダードで遊ぶようになり、後にモダンにも手を出した、という経験があるのではないでしょうか。
同じように、カードゲームがカルチャーとして成熟したとき、コアユーザーはタイ語版というレギュレーションから、日本語版というより多くのカードが使用できるレギュレーションへとステップアップして行くのです。
日本語版で遊ぶカードゲーマーのために翻訳アプリなどもあり、日本語版を始めやすい環境が整っています。
マルチカルチャー国家におけるカードゲーム。マレーシア・クアラルンプール
タイを南下し、マレーシアの首都、クアラルンプールへとやってきました。クアラルンプール市内で最初に訪れた場所は「Vanguardカフェ」。
ここはブシロードの公認店にもなっており、公式大会もよく行われているそうです。 内装は『ヴァンガード』一色で、メニューもキャラクターのテーマドリンクやフードが数多く用意されています。 平日の夜はちょっと人が少なめでしたが、店内にいるファイターたちと早速ファイト。店の奥には立ちながらファイトができる、ヴァンガード専用の卓が。 昨年話題になった『ヴァンガードG』のCM、ミラ・ジョヴォヴィッチ&オカダ・カズチカでも使用されていた卓に似た作りになっています。 そしてさらに盤面裏からのライトアップ機能も!この光る卓、めっちゃ欲しい……!マレーシアのイオンの中にあるヴァンガードカフェに来ました。 pic.twitter.com/KElRourao3
— 木谷高明 (@kidanit) 2016年5月28日
翌日は、クアラルンプール市内にあるカードゲームショップを3店舗ほど訪問してきました。
そのうちの1店舗、「little AKIBA」では週1回の日本語版『ヴァンガード』の公認大会が行われる日だったので、流れるようにそのまま参加。 参加者はなんと28名! 毎週平均、30人前後のヴァンガードファイターたちが集まるんだとか。
日本での公認大会の参加賞と同じく、「光る!スタンド&ドローパック」まで貰えます。ここまでくると、もう完全に日本と変わりありません。 しかし、今回マレーシアでは、タイのように子供がカードで遊んでいる光景をほとんど目にしませんでした。それなのに、なぜ日本と差異がないまでにカードゲームというカルチャーが浸透しているのでしょうか。
その答えを想像すると、「カルチャー」と「インフラ」の両面が関係しているように思えます。
まず、カルチャーは、マレー系、華人系、インド系と多様な人種が居住する多民族国家であること。
例えば、日本で老若男女に親しまれるアナログゲームの代表格でもある将棋は、古代インドの「チャトランガ」というゲームが発祥だという説があります。また、将棋と同じように親しまれてきた囲碁は、中国の「占星術」が変化して生まれたものと言われています。
そう考えると、カードゲームを含むアナログゲームという文化は、この国で暮らす多彩な人々の遺伝子レベルにまで組み込まれた、親しみやすいカルチャーなのかもしれません。
事実、カードゲーム以外のアナログゲーム店も、クアラルンプール市内にはいくつか存在しています。 そして根本的なインフラの問題として、子供がカードゲームで遊ぶには、友達と集まって遊ぶための手段として、交通が整備されることも必要不可欠です。
マレーシアは車社会といわれ、公共の交通機関が弱いのです。日本人学校へ通うのにもバス路線がなかったり、そもそもバスの時間が守られなかったりするのも珍しくなく、鉄道の利用率もなかなか上がっていないようです(参考リンク)。
交通インフラが整ったとき、カードゲームはどのようなさらなる発展を見せてくれるのか。そんなことを考えながらバスに揺られ、この旅最後の国、シンガポールへと向かいました。
この記事どう思う?
あっき
カードゲーマー
海外でのオタクコンテンツを含む日本カルチャーの広がり方を肌で感じるべく、単身世界一周(2015年4月~2015年12月)。アジア、欧州、米国等で、現地のコミュニティとのライン形成にもつとめる。
現在はコンテンツをユーザーに届けるとある企業で働くオタク。
2件のコメント
にいみなお
>匿名ハッコウくん(ID:6468)さん
編集担当の新見と申します。
お問い合わせありがとうございます!
すみませんお返事遅くなりまして…、著者のあっきさんに確認したところ、
ハノイはあっきさんも訪問したことがないそうです。
ただ「ポケカはカードショップだったらわりとどこでも扱いはあるのではないかと思います」とのことでした。
また「Googleマップで『Trading card game』みたいなアバウトに検索してもベトナムの『GG Coffee』みたいなところがひっかるので、こういう店に足を運んでみるのが早そうです」とのことでした。
ご参考になれば幸いです。どうぞよろしくお願いいたします。
匿名ハッコウくん(ID:6468)
すみません、23年の1月末からハノイとジャカルタに行くのですが、ポケモンカードは見かけませんでしたでしょうか?
ジャカルタの方はいくつかショップのオーナーの方と連絡先交換したので伺えるのですが、ベトナムは見当もつかずで。
可能でしたら、情報頂ければとても嬉しいです。
私が行った際には情報のupdateも可能です。