『けもフレ』のパンデミックは1998年から仕掛けられていた?
この『けものフレンズ』というアニメ作品は、筆者が感じ取った設定上の穴以外にも、さまざまな意味で穴だらけであったように感じる。アニメ放送直前にサービスを終了したソーシャルゲーム『けものフレンズ』、第1話ではお世辞にもよく動いているとは言い難かったCG、アニメーション作品の演技としてはマッチしきっていないようにも感じるサーバルの声……。
しかし、それらは決してネガティブな意味ではなく、一見すると欠陥部分として捉えられる恐れのある穴でさえ、『けもフレ』ではコンテンツとして昇華され、全てがポジティブに作用している。
その結果、視聴者はその穴を自らが埋めるように、考察やネットスラング文化を創造した。その事象全てが共鳴し合い、コンテンツが自走し始めたことで、今回のパンデミックとも言える爆発的ブームが起こったのではないだろうか。
また、この作品のコンセプトデザインを手がけている、漫画家の吉崎観音先生の存在も大きいと筆者は考える。彼は1998年の『別冊ニュータイプ』で読み切り作品『ケロロぐんそー』を掲載している。コミックス『ケロロ軍曹』26巻のなかで、彼はこの作品を以下のように語る。 第1話の放送時点では、「子供向けアニメ」と言われた『けものフレンズ』が、今これほどまでに大人を熱狂させているという事実は、この彼の言葉で何も驚くようなことではなかったと思ってしまった。
海外で『けもフレ』は受け入れられる? 人気作との共通点
最後に、筆者の知見が及ぶ範囲として、海外での『けものフレンズ』の受け入れられ方を考察してみたい。日本のアニメが海外で伝播するルートとして、感度の高いファンが日本人のツイッターコミュニティから情報を拾い、それをFacebookのアニメグループに投げることで、話題となって火がつくことがある。
近作でいえば、前クールに放送していた『競女!!!!!!!!』には、そういった広まりが見られた。 ただ、筆者が執筆している『けもフレ』4話放送後の現状では、タイ、マレーシア、メキシコ在住のオタクたちにヒアリングをしたところ、残念ながら考察に値するほど、まだ海外には届いていないように感じた。
しかし、筆者の意見として、今後『けものフレンズ』が海外でも人気を獲得することができるのかと言えば、可能性は十分にあると思っている。
理由として、コスプレのしやすさとバリエーションの多さがあげられる。「しやすさ」とは気軽さ、衣装映えすること、「バリエーション」とはキャラクターの豊富さ、二人以上でコスプレをするときの合わせやすさを指す。
オンライン上で完結しがちな海外のアニメファンにとって、その熱量をオフラインにまで落とし込みやすい作品というのは、コンテンツの人気を最大化、またそのライフサイクルを伸ばすという意味でも、非常に大きな役割があるからだ。
前例として『ラブライブ!』は、劇場版が世界10ヵ国以上で上映されるほどに海外でも人気を博した。Cosplayed Nozomi the other week with bab Alwayss Cos as Kotori <3 Thank you other bab @MONOCHROMSKY for taking photos! #cosplay #lovelive pic.twitter.com/ZmelS7V6Md
— Little Luna (@littlelunacos) 2017年1月27日
その背景には、ソーシャルゲーム『ラブライブ!スクールアイドルフェスティバル』によって生まれた、豊富な衣装によるコスプレの「しやすさ」と、メインキャラクターが9人という「バリエーション」が海外でも愛されるコンテンツになった要因だと考えられる。
最後に、『けものフレンズ』の海外動向を探るべく、英語圏の「2ちゃんねる」に当たる「4chan」に潜伏してみたところ、少なからずIQの下がったフレンズたちを見かけることはできた。
放送もそろそろ折り返し地点を迎える『けものフレンズ』。今後、どの説が正しかったと立証されるのか、はたまた誰も予想していなかった結末を迎えるのか。
たーのしみー!
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臼井照人
フリーライター / 海外ポップカルチャーイベントの斡旋等 / 何でも屋
海外でのオタクコンテンツを含む日本カルチャーの広がり方を肌で感じるべく、単身世界一周(2015年4月~2015年12月)。アジア、欧州、米国等で、現地のコミュニティとのライン形成にもつとめる。
アニメとかマンガとかカードゲームとか銭湯とかが好き。
1件のコメント
長谷川賢人
けもフレ人気は海外でも火がつくかも…というのも興味深いけど、その火の付き方にインターネットとSNSがバッチリ絡んでいるのですね。日本人向けに作ったものを海外でどう広めるか、その一端を見た気持ちです。