『けものフレンズ』は海外で流行る?1998年からの仕掛けとは? 世界オタク旅の筆者が考察!

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『けものフレンズ』は海外で流行る?1998年からの仕掛けとは? 世界オタク旅の筆者が考察!
『けものフレンズ』は海外で流行る?1998年からの仕掛けとは? 世界オタク旅の筆者が考察!

TVアニメ『けものフレンズ』PV 第一弾」より

現在、毎週火曜日1時35分より好評放送中のアニメ作品『けものフレンズ』。

テンプレートのように「好評放送中」とはよく言ったものだが、『けものフレンズ』を“好評”という言葉だけで表現するには、あまりに短絡的なように思える。

本稿では、今なお爆発的に伝染病(パンデミック)のごとく拡散を続ける、さながら「けもフレパンデミック」とも呼べるこの事象を、順を追って考察していきたい。

筆者は海外でのオタクコンテンツを含む日本カルチャーの広がり方を肌で感じるべく、単身で世界一周の旅に出て、現地コミュニティと接触をしてきた経験がある。その知見が及ぶ範囲として、『けものフレンズ』の海外からの反応も探っていく

※以下、『けものフレンズ』のネタバレを一部含みます。

文:臼井照人 編集:長谷川賢人

ツイート数に見る、パンデミックの規模とタイミング

主題歌がiTunesランキングの上位を騒がせたり、ヤフーニュースに掲載されたりと、話題にこと欠かない『けものフレンズ』。 まずは、その話題の規模を定量的に観測していこう。

2017年冬クールのアニメが放送されはじめ、およそ1ヶ月半が経過したが、アニメ好きの方々は今期の「覇権(※)」は何になると予測したか、今一度思い出してみてほしい。

(※ご存知ない方のために、「覇権アニメ」とはBlu-rayやDVDの売上、原作の販売など、何らかにおいて著しい成果を挙げたアニメを指す言葉だ。ここでは、単に「人気作品」として捉えてもらって構わない)

参考までに、筆者が予測していた今期の覇権アニメ候補群を挙げるなら、安定のギャグテンポで圧倒的な安心感を誇る2期もの作品『この素晴らしい世界に祝福を!2』、異色の幼女×ミリタリー作品『幼女戦記』、5分アニメ枠原作では定評のクール教信者先生による満を持しての30分枠『小林さん家のメイドラゴン』あたりだった。アニメ好きの方々なら、おおよそ異論のないラインナップではないだろうか。

では、覇権アニメ候補作品が2017年1月以降、ソーシャルネット(今回はTwitterを指標にする)でどのように盛り上がっていったのかを見ていきたい。測定には「Yahoo!リアルタイム検索」を使った。 これらは作品タイトルがツイッター上でどのくらい言及されているのかを表したグラフだ。例えば、2月10日に『メイドラゴン』を含むツイートが11745件投稿されている。

ここではツイート数を、作品に集まる「熱量」として見比べていきたい。

当然のことではあるが、放送日の前後には各作品の熱量が瞬発的に高まっていることがわかる。そして、どの作品も放送に連動し、1万件以上の言及がされていることが、ここで挙げた覇権アニメ候補作品の共通点だ。

では、3作品が超えている「1万ツイート」を基準としたとき、本題である『けものフレンズ』は、いったいどれくらいの熱量が生まれているのだろうか。

今でこそ大ブームと呼べる状況ではあるが、第1話放送時点での熱量は決して高いとはいえなかった。言及されたツイート数は3000前後。作品について触れられた内容も、「幼児向けアニメ」「30分が異様に長く感じる」といったネガティブなものが比較的目立っていた。 ところが、2話、3話と進行するにつれて、その熱量は次第に高くなっていく。それと共に、作品を考察する人々、いわゆる「考察班」の存在も強まっていった。 そして、4話放送終了後には、『けものフレンズ』に言及したツイート数は7500を超え、その後あらゆる二次創作活動、インターネットスラングネタがコンテンツとして自走し、パンデミック現象となっていった。

4話放送後、1週間と経たず、『けものフレンズ』のツイート数は10万超えの事態に。 ちなみに、ひとつのアニメ作品についてのツイートが突発的に10万件を超えるのが、いかに祭り状態なのか、アニメにあまり親しみの方たちにも感じとってもらうべく、あるキーワードを参照する。

ここ最近、「肉」が瞬発的に10万ツイートを超えた。それは肉の日にあたる2月9日が一種のお祭りとなったことに起因している。

考察班を駆り立てる、巧妙に配された『けもフレ』の穴

この世界のどこかにつくられた
超巨大総合動物園「ジャパリパーク」。
そこでは神秘の物質「サンドスター」の力で、
動物たちが次々とヒトの姿をした
「アニマルガール」へと変身――!
訪れた人々と賑やかに楽しむようになりました。

しかし、時は流れ……。

ある日、パークに困った様子の迷子の姿が。
帰路を目指すための旅路が始まるかと思いきや、
アニマルガールたちも加わって、
大冒険になっちゃった!?

──『けものフレンズ』公式サイトより

次に作品の内容から、10万ツイートの熱量を産んだに至る要因を考えてみたい。

物語の第1話は、サバンナを一人で歩くかばんを背負った女の子、「かばんちゃん」が、サーバルキャットの「サーバル」と出会うところから始まる。自身が何の動物(フレンズ)なのかわからないかばんちゃんは、その答えがあるとされる「図書館」を目指して二人で出発したのであった。

上述した通り、第1話の放送終了時点での評判は、良いものではなかった。

しかし、言語能力がないとされていた案内役ロボット「ラッキービースト」がかばんちゃんの前でしゃべったこと、さらにはそのラッキービーストのキャストクレジットが「???」になっていたことなど、何かを臭わす「穴」のようなものは、このときからすでに仕込まれていたと筆者は思っている。

第1話『さばんなちほー』 dアニメストア配信分より(©けものフレンズプロジェクトA)

その穴の奥に何があるのかは、この時点では全くもって漠然としていたが……。

続く第2話。近年のアニメでは、第1話に限り「本来のOPテーマをEDテーマに当てる」という手法が多く見受けられるが、『けものフレンズ』も同様だった。

第2話がEDテーマをお披露目する場となったわけだが、キャッチーなバンド調の楽曲とともに、そこに映ったものは世界中に実在する廃墟の写真たち。

第2話『じゃんぐるちほー』 dアニメストア配信分より(©けものフレンズプロジェクトA)

第2話『じゃんぐるちほー』 dアニメストア配信分より(©けものフレンズプロジェクトA)

これによって「穴の奥に潜む何か」を感じ取った考察班が立ち上がり、起爆剤となる熱量は等比級数的に増加していった。

第3話『こうざん』 dアニメストア配信分より(©けものフレンズプロジェクトA)

第3話で登場した歌うことが大好きなトキからは、「でも、フレンズの姿だとちょっと勝手が違うみたい。この体ならではの歌い方があるんじゃないかしら」と、かつては違う姿だったことをうかがわせる意味深な発言が飛び出す。

そして物語はパンデミックを決定づける第4話へ。奇々怪々な穴は確かに存在していた。

第4話があらゆる可能性を肯定した瞬間

ここまでに至る道のりで、サバンナやジャングルといった自然のフィールドを冒険してきた彼女たちは、第4話の冒頭でも砂漠を進んでいた。

しかし、放送が10分経過したころで、物語は急展開を見せる。

砂漠から一転、地下道を発見した彼女たちに案内役のラッキービーストはこう告げる。「これはバイパスだね。ここからでも図書館に行けるよ」と。

第4話『さばくちほー』 dアニメストア配信分より(©けものフレンズプロジェクトA)

バイパス……?

これまでバスの存在など、ある程度文明の力が加わっていることは明白であったが、これほど強烈にバックに潜む文明の存在を再認識した瞬間は、後にも先にもこの時だけになるのではないだろうか。

完全に人の手によって舗装されたことがうかがえるバイパスを進むと、彼女たちは地下空間の広大な脱出アトラクションゲームに辿り着く。

「ようこそ地下迷宮へ。君は無事に出口までたどり着…っる…な…ふふふッ──」

そして、不気味な放送とともに姿を見せたフレンズは、現代においては未確認生物(UMA)とされる「つちのこ」だった。

第4話『さばくちほー』 dアニメストア配信分より(©けものフレンズプロジェクトA)

つちのこ……?

さらには溶岩によって塞がれた出口や、いわゆる「非常口マーク」の存在が確認されるなど、第4話に仕込まれた情報量は圧倒的で、異質であった。

一体、この第4話の役割とは何だったのだろうか。

考察班が残した熱量の塊を借りれば、ある者は「人間向けに作られた巨大な廃墟説」や「文明が死に絶えた後の世界説」を、また別の者は「サービスを終了したソーシャルゲームのその後の世界説」を唱え、議論を巻き起こしている。

第4話は、それらすべてを肯定させる可能性を提示した。彼らに、火炎瓶と呼んで差し支えないほどの火種をぶち込むことに成功したのがこの回だったと言える。

第2話で登場したバスや、エンディングの廃墟など、「文明」というキーワードは作品と非常に密接だと感じていた筆者としても、心臓が早くなるのを抑えられずにはいられなかった。

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1件のコメント

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hasex

長谷川賢人

けもフレ人気は海外でも火がつくかも…というのも興味深いけど、その火の付き方にインターネットとSNSがバッチリ絡んでいるのですね。日本人向けに作ったものを海外でどう広めるか、その一端を見た気持ちです。

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