メカデザイナー 大久保淳二インタビュー 架空企業が描く未来都市の構想

ファンサイトを運営するほど傾倒した『スター・ウォーズ』

──デザイナーとしての原点とも言える『スター・ウォーズ』と出会ったのはいつ頃なんでしょうか?

大久保 たまたま映画版『伝説巨神イデオン』と併映されていた『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』を見て、その時のイメージがものすごく残っていたんです。世界観から何から、全部に惹かれて。

スター・ウォーズ エピソード4 新たなる希望/画像はAmazon.co.jpより

大久保 当時は子どもだったので、単純に「赤いし、カッコいい!」ってことで『イデオン』を見に行ったはずだけど、多分寝ちゃっててまったく記憶にない(笑)。

──その後『スター・ウォーズ』のファンサイトも運営されていたとか。

大久保 1997年に『スター・ウォーズ特別篇』が公開された頃のことですね。1999年の『スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス』以降、コンセプトデザイナーが変わるんです。その中心となるダグ・チャンのデザインを見たのですが、片っ端からひどくて、当時本当に許せなくて……。

俺がやったほうがもっと良いメカができる!」と思って、『STAR WARS: The Essential Guide to Vehicles and Vessels』というイラスト本に描かれていたメカを勝手にリメイクしてサイトで公開してました。モデリングの技術はそこで習得しましたね(笑)。 ──ハリウッドの技術に個人で対抗していたわけですね(笑)。では、日本のアニメは海外にも多く輸出されていますが、TVアニメのメカニックデザインをどう捉えていますか?

大久保 昔はアニメの分野でもハリウッド映画から影響を受けている作品はかなり多かったと思います。だけど、日本のメカニックデザインはいつからか近親交配的に変化していって。だからガラパゴスというか、独特ですよね。

アニメでハマったメカデザインは、人型ロボットでいうと『巨神ゴーグ』と『聖戦士ダンバイン』、『機甲界ガリアン』かな。人型じゃなかったら『ダーティペア』ですね。僕はやっぱりSFが好きだから、TVアニメの場合でも人間ドラマが主体で、コンセプチュアルな作品に惹かれますね。

代表作『ガンダム』『鉄騎』のデザイン論

──1999年には『フォー・ザ・バレル』のメカニックデザインを担当されます。富野由悠季監督の小説版『機動戦士ガンダム』を再構築するという野心的な作品でしたが、ガンダム作品としては黒歴史ともっぱらの噂ですよね(笑)。

大久保 当時は漫画家・藤原カムイさんのところでアシスタントをやりながら、イラストレーターもやっていて。当時のガンダム専門雑誌『G2O』にイラストを提供した流れで、メカニックデザインを担当することになったんです。

ガンダムは……メカとしては嫌いかな……」とかばかり言ってたから、面白がって採用されたんだと思います。

『フォー・ザ・バレル』も、「既存のガンダム像を潰してやろう」と思ってやってました(笑)。

──人型ロボットに対する拒否感もありながら、2002年のゲーム『鉄騎』※2では、二足歩行ロボット兵器・VT(バーティカルタンク)のデザインを手がけられていますよね。

大久保 出雲重機のサイトを見た『鉄騎』のディレクター・河野一二三さんから直接メールをいただいたんです。本当に珍しい話ですね。

『フォー・ザ・バレル』もそうでしたけど、こんなことは一生に一度だと思って、やりたいことを徹底的にやりました。日本のロボアニメ的な指向は捨てて、自分なりにゲームの世界観に合ったものをハリウッドのSF映画のスタンスでデザインして死のうと。当時は若かったんで(笑)。

『鉄騎』/画像はAmazon.co.jpより

大久保 こだわったのは、とにかく兵器的であること。そして、あくまでも乗り物であるということです。例えば、設定画で魅せるような決めのアングルでは、ロボアニメ的にヒーローっぽく見えるようにしているんですけど、実は関節の位置が人間とは全然違っていて、動かすと途端に異質な機械になる。

「直立戦車」という設定だったんで、基本的には戦車をリサーチしたり。ただ20m近い高さの兵器として戦場に出るうえで、戦車がモデルだと前面の被弾面積が大きすぎる。そこで戦闘ヘリを参考にしつつ、デザインを改良していきました。

──ミリタリーなど、実際のメカニックに関する知識はもともとお持ちだったんですか?

大久保 『鉄騎』の仕事で兵器のことは色々と勉強しましたけど、それまでは全然知らなかったです。現実のロボットにも、そんなに興味はない。

「このパーツ、よくわかんないけど格好良いな」という目線で見ています。重機にしても、コラージュするために画像をストックしてますけど、デザインするための素材として見てるだけですね。

※2『鉄騎』……兵器・VTを操作するシミュレーション・アクション。最大の特徴は2本のスティックと1本のシフトレバーや40個以上のボタン。加えて3つのフットペダルからなる専用のコントローラー。乗りこなすだけでも練習が必要な上に、自機がやられたときは緊急避難ボタンを押さなければセーブデータが消去されてしまうなど、複雑な仕様が山積していた。だが、執拗なまでにリアリティを探求するコンセプトから一部のマニアの間では熱狂的な支持を集めている。

1
2
3

SHARE

この記事をシェアする

Post
Share
Bookmark
LINE

1件のコメント

※非ログインユーザーのコメントは編集部の承認を経て掲載されます。

※コメントの投稿前には利用規約の確認をお願いします。

CKS

CKS

出雲クラスタのみなさま

コメントを削除します。
よろしいですか?

コメントを受け付けました

コメントは現在承認待ちです。

コメントは、編集部の承認を経て掲載されます。

※掲載可否の基準につきましては利用規約の確認をお願いします。

POP UP !

もっと見る

もっと見る

よく読まれている記事

KAI-YOU Premium

もっと見る

もっと見る

情報化社会の週間ランキング

最新のPOPをお届け!

もっと見る

もっと見る

このページは、株式会社カイユウに所属するKAI-YOU編集部が、独自に定めたコンテンツポリシーに基づき制作・配信しています。 KAI-YOU.netでは、文芸、アニメや漫画、YouTuberやVTuber、音楽や映像、イラストやアート、ゲーム、ヒップホップ、テクノロジーなどに関する最新ニュースを毎日更新しています。様々なジャンルを横断するポップカルチャーに関するインタビューやコラム、レポートといったコンテンツをお届けします。

ページトップへ