我が輩は独身オタク女子である。結婚の予定はまだない。
ちっちゃな頃からクソオタク、15で腐女子と呼ばれたクチだ。
ギザギザハートどころか、ジャキジャキにこじれたハートの持ち主である。
趣味に生きることへ精を出しすぎ、気が付いたらアラサーになっていた。
いや、アラサーなどというマイルドな言い方はよそう。
気が付いたら、行き遅れの三十路になっていた。
何度か婚活もしたけど、結婚はしたいようなしたくないような、一周回って「愛とはなんだ」と考え始めたいような、複雑なお年頃である。
『北斗の拳』のサウザーなみに「こんなに苦しいのなら…悲しいのなら…愛などいらぬ!!」と叫びたい時もあるわけだ。とくに深夜。
そんな私がひょーんなことからとあるイベントのレポートを書くことになった。
天下の街コンジャパンが開催したその名も『「君の名は。」✕街コン in 東京 ~大ヒットアニメ映画「君の名は。」ファン交流イベント~』である。 取材・文:木村バンデラス 編集:新見直
いやね、私も『君の名は。』鑑賞直後はとても感動したんだけどね、ふと冷静になったら彼氏すらいない寂しさで死にそうになったよね。
運命を感じて名前を聞く相手なんて現実にはいない。二次元にはごまんといるのに。私を愛してくれるイケメンが、ごまんといるのに。
ちょっと髪の毛の色が原色だったりするけど。あと、顎が細い。きっとおせんべいは噛み砕けないと思う。でもいいの、イケメンだから。
深夜ってダメね、余計なこと考えちゃうよね。孤独死とか。慌てて最近ハマってる某アイドルソーシャルゲームをひたすらプレイしましたよね。
深夜ってダメね、人の感覚を狂わせるね。課金しちゃったよね。
まあ、とにもかくにもである。
……ずっと趣味の合う話題を、共通の話題で盛り上がる誰かを、探していたような気がする。
そんな諸君らにはぴったりのイベントだ。
私も普段生息している腐海の森を出て、おっかなびっくり取材させていただいたのである。
そのかわり、飲み放題食べ放題だ。各種ドリンク類は充実しているし、料理も美味しそうである。 ただ3時間立ちっぱなしなので、もしこの手の街コンへ参加を検討している人がいるのなら、ぜひ歩きやすい靴で来てほしい。
また時間内に席替えはあるものの、普通の街コンのように店から店へ移動する必要もないため、店舗内にあらかじめ用意されたお楽しみ企画や演出が凝っている。
まず、テーブルからして『君の名は。』ファンにはたまらない。各テーブルには映画の登場人物のイラストがかかげてあるのだ。お気に入りのキャラクターのテーブルに当たればちょっと嬉しくなるだろう。 プロジェクターには映画のPVが流れているし、それを見ながら話すきっかけも生まれやすい。
面白いと思ったのは、ネームプレートである。参加者たちはそれぞれ、名前と映画を見た回数、お気に入りのキャラクターと好きなシーンを書いて首にぶらさげるのだ。 つまり、この世界での共通言語は本当に『君の名は。』なのである。
合コンやこの手の婚活系イベントにありがちな年収や年齢などの情報を、いっさい呈示しなくて良いのがなかなか小粋だ。
クイズの内容は「テッシー(登場人物のひとり)のフルネームは?」など、映画に関するものだった。
男性は青い紐、女性は赤い紐を手首に結ぶなんて演出も『君の名は。』コンならでは。
これはそれぞれが手に結んだ紐をチームでひとつの輪になるように結ぶと言うゲームで使われたアイテムなのだが、三葉ちゃんと瀧くん気分がちょっと味わえる。 同じ映画のワンシーンを切り取ったカードを持った異性を探す「カタワレ探しゲーム」もかなり盛況で、みな表情がいきいきとしていた。 単に同じテーブルになった人と歓談するだけの街コンが苦手な人も、交流を後押ししてくれる時間があるイベントなら参加しやすいのではないだろうか。
はじめの内はぎこちない雰囲気だったテーブルも、クイズ大会を挟んだ後はとても気さくなムードに変わっていた。
新海誠作品はすべて網羅した人から『君の名は。』だけを見て参加した人まで、けっこうバラバラである。1回だけ鑑賞した人もいたし、12回も鑑賞してあまつさえ飛騨高山まで聖地巡礼した強者までいた。
コアファンからは『君の名は。』は「毒気が抜け、一般向けになった」という意見が、ライトファンからは「音楽や映像が良かった。とにかくストーリーが感動的」との意見が見受けられた。
私も鑑賞して感じたのだが、この作品はいろいろな層に刺さるのだろうと思う。ただの青春純愛ストーリーだけではない、SFだったりファンタジーだったりの要素もあるので、それこそ男女ともに支持されたのではないだろうか。 今回は街コン自体、初参加の人が圧倒的であった。女性は友人同士と、男性はひとり参加が多い印象だ。
「なぜわざわざ街コンに?」と尋ねたら、『君の名は。』をとにかく語りたいとの意見がほとんどであった。
とある男性参加者は「むしろ同性の方が話していて面白い」とまでおっしゃる。婚活の場において女性参加者は「男性より女性と仲良くなって友達になってしまった」なんてケースがあるけれど、男性からこのような意見が出るとは驚きであった。
理由をいろいろと考えてみたが、たぶん先ほども書いたように共通言語が『君の名は。』しかないからではないかと思う。普通の街コンなら、まず会話の糸口として趣味や仕事の話をするだろう。
おのれのパーソナルな部分をさらすことでしか、コミュニケーションが生まれないのがこういう場だ。
自分のステータスをまずは値踏みされてしまうって、けっこう嫌なものである。
しかし、今回の街コンはそういったことをすべて脇に置くことができるのだ。『君の名は。』が好き、ただ語りたい。そんな思い一つあればオールオッケーなのである。話題につまることはほぼないだろう。好きなものを共有しに来ているのだから雰囲気も良くなるはずだ。
イベント中、早速「君の名は。グループLINE」なるものをつくっているテーブルや、集合写真を撮りそれを共有するテーブルもあった。なんだか、学生のサークルのようで微笑ましい。
街コンってなんだか敷居が高い、何を話して良いかわからない。そんな人にこそおすすめできるイベントだ。興味があるものがテーマの街コンならば、トゥーシャイシャイな諸君も楽しめると思うぞ。
かく言う私も、普通に楽しく参加することができた。私たちはただ一つのことを尋ねて話せば良いのだ。
「きみの、名前は……?」(BGM:RADWIMPS『前前前世』) あとは『君の名は。』がどれだけ好きなのか、お気に入りの登場人物やシーンについて心ゆくまで話せば大丈夫。いつの間にか友達が増えて、もしかしたらあわよくば恋人が見つかるかもしれない。
え、私ですか?
取材をすることに夢中になってそれどころじゃなかったわ。
ままならんな、諸君よ!
以上!!
ちっちゃな頃からクソオタク、15で腐女子と呼ばれたクチだ。
ギザギザハートどころか、ジャキジャキにこじれたハートの持ち主である。
趣味に生きることへ精を出しすぎ、気が付いたらアラサーになっていた。
いや、アラサーなどというマイルドな言い方はよそう。
気が付いたら、行き遅れの三十路になっていた。
何度か婚活もしたけど、結婚はしたいようなしたくないような、一周回って「愛とはなんだ」と考え始めたいような、複雑なお年頃である。
『北斗の拳』のサウザーなみに「こんなに苦しいのなら…悲しいのなら…愛などいらぬ!!」と叫びたい時もあるわけだ。とくに深夜。
そんな私がひょーんなことからとあるイベントのレポートを書くことになった。
天下の街コンジャパンが開催したその名も『「君の名は。」✕街コン in 東京 ~大ヒットアニメ映画「君の名は。」ファン交流イベント~』である。 取材・文:木村バンデラス 編集:新見直
『君の名は。』を観て爆発した腐女子が街コンに参加してみた話
参加者は全員、巷で話題の「単身者が観たら寂しさと悲しさと心細さで爆発して死ぬ」と言われている大ヒットアニメ映画『君の名は。』が好きという条件の下で参加する、いわゆる「テーマ型街コン」である。いやね、私も『君の名は。』鑑賞直後はとても感動したんだけどね、ふと冷静になったら彼氏すらいない寂しさで死にそうになったよね。
運命を感じて名前を聞く相手なんて現実にはいない。二次元にはごまんといるのに。私を愛してくれるイケメンが、ごまんといるのに。
ちょっと髪の毛の色が原色だったりするけど。あと、顎が細い。きっとおせんべいは噛み砕けないと思う。でもいいの、イケメンだから。
深夜ってダメね、余計なこと考えちゃうよね。孤独死とか。慌てて最近ハマってる某アイドルソーシャルゲームをひたすらプレイしましたよね。
深夜ってダメね、人の感覚を狂わせるね。課金しちゃったよね。
まあ、とにもかくにもである。
……ずっと趣味の合う話題を、共通の話題で盛り上がる誰かを、探していたような気がする。
そんな諸君らにはぴったりのイベントだ。
私も普段生息している腐海の森を出て、おっかなびっくり取材させていただいたのである。
『君の名は。』ファンにはたまらない演出の数々
場所は新宿にある京王フレンテ内「GOHAN」にて行われた。 今回は街コンと銘打っているものの、一店舗のみで行われた。そのかわり、飲み放題食べ放題だ。各種ドリンク類は充実しているし、料理も美味しそうである。 ただ3時間立ちっぱなしなので、もしこの手の街コンへ参加を検討している人がいるのなら、ぜひ歩きやすい靴で来てほしい。
また時間内に席替えはあるものの、普通の街コンのように店から店へ移動する必要もないため、店舗内にあらかじめ用意されたお楽しみ企画や演出が凝っている。
まず、テーブルからして『君の名は。』ファンにはたまらない。各テーブルには映画の登場人物のイラストがかかげてあるのだ。お気に入りのキャラクターのテーブルに当たればちょっと嬉しくなるだろう。 プロジェクターには映画のPVが流れているし、それを見ながら話すきっかけも生まれやすい。
面白いと思ったのは、ネームプレートである。参加者たちはそれぞれ、名前と映画を見た回数、お気に入りのキャラクターと好きなシーンを書いて首にぶらさげるのだ。 つまり、この世界での共通言語は本当に『君の名は。』なのである。
合コンやこの手の婚活系イベントにありがちな年収や年齢などの情報を、いっさい呈示しなくて良いのがなかなか小粋だ。
『君の名は。』クイズ大会や「カタワレ探しゲーム」で心をほぐす
歓談の間に挟まれる映画に関するクイズ大会や、紐を使ったゲームなど参加者の温度を上げる要素もあるので、あまりおしゃべりが得意でない人も気軽に参加できるだろう。クイズの内容は「テッシー(登場人物のひとり)のフルネームは?」など、映画に関するものだった。
男性は青い紐、女性は赤い紐を手首に結ぶなんて演出も『君の名は。』コンならでは。
これはそれぞれが手に結んだ紐をチームでひとつの輪になるように結ぶと言うゲームで使われたアイテムなのだが、三葉ちゃんと瀧くん気分がちょっと味わえる。 同じ映画のワンシーンを切り取ったカードを持った異性を探す「カタワレ探しゲーム」もかなり盛況で、みな表情がいきいきとしていた。 単に同じテーブルになった人と歓談するだけの街コンが苦手な人も、交流を後押ししてくれる時間があるイベントなら参加しやすいのではないだろうか。
はじめの内はぎこちない雰囲気だったテーブルも、クイズ大会を挟んだ後はとても気さくなムードに変わっていた。
『君の名は。』街コン参加者「とにかく語りあいたかった」
参加者も終始なごやかで、街コンと言うよりは『君の名は。』を愛する人々のオフ会のようだ。新海誠作品はすべて網羅した人から『君の名は。』だけを見て参加した人まで、けっこうバラバラである。1回だけ鑑賞した人もいたし、12回も鑑賞してあまつさえ飛騨高山まで聖地巡礼した強者までいた。
コアファンからは『君の名は。』は「毒気が抜け、一般向けになった」という意見が、ライトファンからは「音楽や映像が良かった。とにかくストーリーが感動的」との意見が見受けられた。
私も鑑賞して感じたのだが、この作品はいろいろな層に刺さるのだろうと思う。ただの青春純愛ストーリーだけではない、SFだったりファンタジーだったりの要素もあるので、それこそ男女ともに支持されたのではないだろうか。 今回は街コン自体、初参加の人が圧倒的であった。女性は友人同士と、男性はひとり参加が多い印象だ。
「なぜわざわざ街コンに?」と尋ねたら、『君の名は。』をとにかく語りたいとの意見がほとんどであった。
とある男性参加者は「むしろ同性の方が話していて面白い」とまでおっしゃる。婚活の場において女性参加者は「男性より女性と仲良くなって友達になってしまった」なんてケースがあるけれど、男性からこのような意見が出るとは驚きであった。
理由をいろいろと考えてみたが、たぶん先ほども書いたように共通言語が『君の名は。』しかないからではないかと思う。普通の街コンなら、まず会話の糸口として趣味や仕事の話をするだろう。
おのれのパーソナルな部分をさらすことでしか、コミュニケーションが生まれないのがこういう場だ。
自分のステータスをまずは値踏みされてしまうって、けっこう嫌なものである。
しかし、今回の街コンはそういったことをすべて脇に置くことができるのだ。『君の名は。』が好き、ただ語りたい。そんな思い一つあればオールオッケーなのである。話題につまることはほぼないだろう。好きなものを共有しに来ているのだから雰囲気も良くなるはずだ。
イベント中、早速「君の名は。グループLINE」なるものをつくっているテーブルや、集合写真を撮りそれを共有するテーブルもあった。なんだか、学生のサークルのようで微笑ましい。
街コンってなんだか敷居が高い、何を話して良いかわからない。そんな人にこそおすすめできるイベントだ。興味があるものがテーマの街コンならば、トゥーシャイシャイな諸君も楽しめると思うぞ。
かく言う私も、普通に楽しく参加することができた。私たちはただ一つのことを尋ねて話せば良いのだ。
「きみの、名前は……?」(BGM:RADWIMPS『前前前世』) あとは『君の名は。』がどれだけ好きなのか、お気に入りの登場人物やシーンについて心ゆくまで話せば大丈夫。いつの間にか友達が増えて、もしかしたらあわよくば恋人が見つかるかもしれない。
え、私ですか?
取材をすることに夢中になってそれどころじゃなかったわ。
ままならんな、諸君よ!
以上!!
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イベント情報
「君の名は。」×街コン(東京は開催終了)
- 開催日時
- 東京 2016年11月5日(土)12時00分~15時00分
- 大阪 2016年11月12日(土)12時00分~15時00分
- 参加資格
- 20歳以上の独身の方、「君の名は。」を鑑賞した方
- 参加費
- 男性5,900円(税込) 女性3,900円(税込)
- 主催
- 株式会社リンクバル
- 協力
- 東宝株式会社
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