9月17日(土)、ついに『週刊少年ジャンプ』での最終回を迎え、40年連載された歴史に幕を降ろす秋本治さんの漫画『こちら葛飾区亀有公園前派出所』(こち亀)。
同誌における最長連載記録を保持し、長期連載漫画としてギネス世界記録に認定された「こち亀」は、最終回を迎える同日にコミックス200巻が刊行されます。
そんな国民的に愛されている本作とともに歩み続けてきた「こち亀」に関するあらゆるデータを集め続けているファンサイト「こち亀データベース」をご存知でしょうか? 各話のエピソードガイドはもちろん、単行本の表紙・背表紙キャラクターや、巻末コメントを執筆した著名人の一覧、はては『ジャンプ』本誌掲載時の巻末作者コメントまで、「こち亀」に関するありとあらゆる情報が詰まっているサイトです。
約15年にわたり、ほぼ毎週欠かさずサイトの更新を続けてきた管理人・まさひこさんは、最終回の発表にあたり、どういった心境なのでしょうか?
そこで、サイト運営の経緯から、「こち亀」ファンとしての現在の心情までメールインタビューでうかがいました!
さらには、ギャグから人情モノまで幅広い魅力に溢れた「こち亀」名エピソード10選をKAI-YOU編集部による独断と偏見でセレクト。そちらに、まさひこさんからのコメントもいただいています。
企画・藤木涼介 編集・コダック川口
まさひこ 元々おもちゃ好きでコレクターだった私が、1996年の増刊シリーズ「こち亀MAX」で出ていた「ホビー編」をコンビニで偶然立ち読みしたのがきっかけです。
それまでの「こち亀」は、なんとなく知っている程度の漫画でしたが、フィギュア玩具『G.I.ジョー』のマニアックな知識が解説されている内容に驚き、「これは資料になるな」と購入。その後、何回か読み返すうちに「こち亀っておもしろいな…」となっていき、次第にハマっていきました。
「こち亀」は扱っている題材が本当に幅広いので、どんな人でもどこかで引っかかる要素があるのではないかと思います。
──「こち亀データベース」をはじめられた経緯は? まさひこ 1997年頃、インターネット上の交流などで「こち亀」を話題にする機会が増え、当時すでに100巻以上が刊行されていたコミックスの内容を、その都度、一から見返すのが大変だったので「自分用備忘録」としてテキストにまとめはじめたのが原型となっています。
2001年に個人サイトを立ち上げる際、ネットでご交流いただいていた方たちから「こち亀のデータも入れてみたら?」との後押しもあり、改めてページにまとめ公開することになりました。
個人サイトのコンテンツは、その後ほとんどが閉鎖や移動をしましたが、「こち亀データベース」の形だけは、今も当時のままで更新や追加を続けています。
──「こち亀データベース」は、どれくらいの期間、運営されているのですか?
まさひこ 2001年5月21日に開設しました。「開設◯年」と、わかりやすいように、自分の30歳の誕生日にしたんです。なので、サイト開設からは15年。「こち亀」にハマってから2016年でちょうど20年になります。
──まさひこさんの周囲に「こち亀」ファンはいらっしゃいますか? また、その熱量は?
まさひこ リアル知人・友人では特におらず、みんな「こち亀? あぁ知ってる」という反応をする程度です。データベースを知っている友人は「よくやるな〜」といった反応をしています(笑)。
“誰でも知っているけど、マニアックにつきつめている人は少ない”「こち亀」は、“ビッグマイナー”に対する“リトルメジャー”なんだろうなと考えています。
ネット上では私以上に熱くより詳細に「こち亀」を語る方が多くいらっしゃり、あくまでマイペースでやっている老ファンとしては「かなわないなぁ」と思います。
まさひこ 終了の兆候や予想は2015年頃からあったので、覚悟しているつもりでしたが、いざ現実になると、思っていた以上のショックで、知った瞬間は思わず声が出ました。
「こち亀」は私にとって、当たり前にある日常の象徴のような存在で、終了をリアルに想像することができていなかった感じです。しかしその後、自分の思っていた以上に世間が大騒ぎになっているのを見て、「自分だけの衝撃じゃないんだな」と実感することでショックは和らぎました。
今は「秋本治先生自身のご意思で良い形の終わりを迎えられることを素直に喜ぼう」「『こち亀』に続く新作に期待しよう」と気分を切り替えつつ、多くの人が「こち亀」に注目し、温かく見送ろうとしている今の状況をしっかり憶えておこうと思っています。
──「ジャンプ」を毎週購入されているとのことですが、「こち亀」以外で好きな作品はありますか?
まさひこ 横田卓馬先生の『背すじをピン!と〜鹿高競技ダンス部へようこそ〜』が大好きでコミックスを買い揃えているほか、登場人物の誠実さがさわやかな山本亮平先生のラブコメ新連載『ラブラッシュ!』にも注目しています。
秋本治先生のお人柄がそこかしこから感じられる「こち亀」しかり、根底に実直さや善性が強く感じられる作品が好きなんだと思います。
──アニメ版、舞台版の「こち亀」も見られているそうですが、原作との違いや見所は?
まさひこ アニメ版の高松信司監督や舞台版で両さんを演じたラサール石井さんなど、原作を深く理解した方々による再構築作品として原作とは違う大きな魅力がそれぞれにあると思います。
アニメ版は特殊刑事などのスラップスティックコメディやアクション/スピード感を活かした見せ方が楽しく、アニメ開始以降は原作でもアクション志向が強まった印象があります。
アニメそのものを描いた「アニメで儲けろ!」や、実験的手法が連続する「俺が主役だ!星逃田」などのエピソードは特に斬新で、これが日曜の夜7時に放映していたことに驚かされます。テレビアニメ「こちら葛飾区亀有公園前派出所~THE FINAL 両津勘吉最後の日~」PV
まさひこ 今、「こち亀」というと、アニメ版の記憶が主という方も多いですが、それも納得できる楽しい番組でした。9月18日(日)に放送される新作スペシャルも楽しみです。
舞台版も、“生の空気感”というアドバンテージを存分に活かした素晴らしい内容でした。
ミュージカルからドリフ的なコント、アニメの手法まで用いたなんでもありな感じと、爆笑ドタバタから本気で泣ける人情までを見事に3時間にまとめあげた内容は、これぞ「こち亀」、これぞエンターテインメント、といえる素晴らしさ。 まさひこ 未見の方は、9月の(ラストになるかも知れない)公演をぜひ観に行っていただきたいなと思います。私は千秋楽へ行く予定です。
──まさひこさんの思う「こち亀」の魅力とは?
まさひこ 両さんのパワフルさやギャグの楽しさ、少年時代の話が感動的だったり最先端文化がわかりやすく描かれていたり、70年代から現代までそれぞれの時代の空気が感じられたり…と多々ありますが、何よりもそれらの基盤にある「1話完結で手軽に読めて『あぁ面白かった』で終われる間口の広さ・敷居の低さ」だと思います。
長期連載の漫画は連続性が高まったり、テーマ志向に変わっていったりする作品も多いですが、「どの巻・どの回だけを読んでも『難しいことを考えず楽しめる』漫画であること」を、40年1度も休まずに貫いてこられた秋本先生の偉業には感嘆するしかありません。
同誌における最長連載記録を保持し、長期連載漫画としてギネス世界記録に認定された「こち亀」は、最終回を迎える同日にコミックス200巻が刊行されます。
そんな国民的に愛されている本作とともに歩み続けてきた「こち亀」に関するあらゆるデータを集め続けているファンサイト「こち亀データベース」をご存知でしょうか? 各話のエピソードガイドはもちろん、単行本の表紙・背表紙キャラクターや、巻末コメントを執筆した著名人の一覧、はては『ジャンプ』本誌掲載時の巻末作者コメントまで、「こち亀」に関するありとあらゆる情報が詰まっているサイトです。
約15年にわたり、ほぼ毎週欠かさずサイトの更新を続けてきた管理人・まさひこさんは、最終回の発表にあたり、どういった心境なのでしょうか?
そこで、サイト運営の経緯から、「こち亀」ファンとしての現在の心情までメールインタビューでうかがいました!
さらには、ギャグから人情モノまで幅広い魅力に溢れた「こち亀」名エピソード10選をKAI-YOU編集部による独断と偏見でセレクト。そちらに、まさひこさんからのコメントもいただいています。
企画・藤木涼介 編集・コダック川口
「こち亀データベース」はこうして生まれた!
──まさひこさんが「こち亀」にハマったきっかけは?まさひこ 元々おもちゃ好きでコレクターだった私が、1996年の増刊シリーズ「こち亀MAX」で出ていた「ホビー編」をコンビニで偶然立ち読みしたのがきっかけです。
それまでの「こち亀」は、なんとなく知っている程度の漫画でしたが、フィギュア玩具『G.I.ジョー』のマニアックな知識が解説されている内容に驚き、「これは資料になるな」と購入。その後、何回か読み返すうちに「こち亀っておもしろいな…」となっていき、次第にハマっていきました。
「こち亀」は扱っている題材が本当に幅広いので、どんな人でもどこかで引っかかる要素があるのではないかと思います。
──「こち亀データベース」をはじめられた経緯は? まさひこ 1997年頃、インターネット上の交流などで「こち亀」を話題にする機会が増え、当時すでに100巻以上が刊行されていたコミックスの内容を、その都度、一から見返すのが大変だったので「自分用備忘録」としてテキストにまとめはじめたのが原型となっています。
2001年に個人サイトを立ち上げる際、ネットでご交流いただいていた方たちから「こち亀のデータも入れてみたら?」との後押しもあり、改めてページにまとめ公開することになりました。
個人サイトのコンテンツは、その後ほとんどが閉鎖や移動をしましたが、「こち亀データベース」の形だけは、今も当時のままで更新や追加を続けています。
──「こち亀データベース」は、どれくらいの期間、運営されているのですか?
まさひこ 2001年5月21日に開設しました。「開設◯年」と、わかりやすいように、自分の30歳の誕生日にしたんです。なので、サイト開設からは15年。「こち亀」にハマってから2016年でちょうど20年になります。
──まさひこさんの周囲に「こち亀」ファンはいらっしゃいますか? また、その熱量は?
まさひこ リアル知人・友人では特におらず、みんな「こち亀? あぁ知ってる」という反応をする程度です。データベースを知っている友人は「よくやるな〜」といった反応をしています(笑)。
“誰でも知っているけど、マニアックにつきつめている人は少ない”「こち亀」は、“ビッグマイナー”に対する“リトルメジャー”なんだろうなと考えています。
ネット上では私以上に熱くより詳細に「こち亀」を語る方が多くいらっしゃり、あくまでマイペースでやっている老ファンとしては「かなわないなぁ」と思います。
日常の象徴のような「こち亀」の終了が告げられた、その時!
──「こち亀」連載終了の告知に対し、率直にどう思われましたか?まさひこ 終了の兆候や予想は2015年頃からあったので、覚悟しているつもりでしたが、いざ現実になると、思っていた以上のショックで、知った瞬間は思わず声が出ました。
「こち亀」は私にとって、当たり前にある日常の象徴のような存在で、終了をリアルに想像することができていなかった感じです。しかしその後、自分の思っていた以上に世間が大騒ぎになっているのを見て、「自分だけの衝撃じゃないんだな」と実感することでショックは和らぎました。
今は「秋本治先生自身のご意思で良い形の終わりを迎えられることを素直に喜ぼう」「『こち亀』に続く新作に期待しよう」と気分を切り替えつつ、多くの人が「こち亀」に注目し、温かく見送ろうとしている今の状況をしっかり憶えておこうと思っています。
──「ジャンプ」を毎週購入されているとのことですが、「こち亀」以外で好きな作品はありますか?
まさひこ 横田卓馬先生の『背すじをピン!と〜鹿高競技ダンス部へようこそ〜』が大好きでコミックスを買い揃えているほか、登場人物の誠実さがさわやかな山本亮平先生のラブコメ新連載『ラブラッシュ!』にも注目しています。
秋本治先生のお人柄がそこかしこから感じられる「こち亀」しかり、根底に実直さや善性が強く感じられる作品が好きなんだと思います。
──アニメ版、舞台版の「こち亀」も見られているそうですが、原作との違いや見所は?
まさひこ アニメ版の高松信司監督や舞台版で両さんを演じたラサール石井さんなど、原作を深く理解した方々による再構築作品として原作とは違う大きな魅力がそれぞれにあると思います。
アニメ版は特殊刑事などのスラップスティックコメディやアクション/スピード感を活かした見せ方が楽しく、アニメ開始以降は原作でもアクション志向が強まった印象があります。
アニメそのものを描いた「アニメで儲けろ!」や、実験的手法が連続する「俺が主役だ!星逃田」などのエピソードは特に斬新で、これが日曜の夜7時に放映していたことに驚かされます。
舞台版も、“生の空気感”というアドバンテージを存分に活かした素晴らしい内容でした。
ミュージカルからドリフ的なコント、アニメの手法まで用いたなんでもありな感じと、爆笑ドタバタから本気で泣ける人情までを見事に3時間にまとめあげた内容は、これぞ「こち亀」、これぞエンターテインメント、といえる素晴らしさ。 まさひこ 未見の方は、9月の(ラストになるかも知れない)公演をぜひ観に行っていただきたいなと思います。私は千秋楽へ行く予定です。
──まさひこさんの思う「こち亀」の魅力とは?
まさひこ 両さんのパワフルさやギャグの楽しさ、少年時代の話が感動的だったり最先端文化がわかりやすく描かれていたり、70年代から現代までそれぞれの時代の空気が感じられたり…と多々ありますが、何よりもそれらの基盤にある「1話完結で手軽に読めて『あぁ面白かった』で終われる間口の広さ・敷居の低さ」だと思います。
長期連載の漫画は連続性が高まったり、テーマ志向に変わっていったりする作品も多いですが、「どの巻・どの回だけを読んでも『難しいことを考えず楽しめる』漫画であること」を、40年1度も休まずに貫いてこられた秋本先生の偉業には感嘆するしかありません。
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