「こち亀は日常の一部」 15年更新のファンサイト管理人に心境をきいてみた

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KAI-YOU編集部が選んだ「こち亀」珠玉の10エピソード

『こちら葛飾区亀有公園前派出所』1巻

──KAI-YOU編集部が厳選した「こち亀」名エピソード10話を選出しました。各話の見どころをご解説いただけますでしょうか?

8巻「冬の旅…の巻」(「まごころ説教!?の巻」「アドリブ旅行…の巻」からの連作)

「まごころ説教!?の巻」
公園で酔っ払って騒ぎを起こし、派出所に連れて来られたチンピラ・加藤松吉。真面目に働く気のない彼に、何とか仕事を世話してやろうとする両さんだが…。
・ラスト近くで、何と松吉は交通事故で死亡。その突然の展開に、衝撃を受けた方も多いのでは。

「アドリブ旅行…の巻」
(前話より続き)死んだ松吉の両親に遺品を届けて彼の死を報告するため、岩手へ向かう両さん。秋田へ向かう大原部長も途中までついて来る事になったが、この二人が揃う所、常に騒動あり。

「冬の旅…の巻」
(前話より続き)寝過ごしかけたり、宮古までついてきた部長の説教を受けたりしながら、何とか松吉の実家まで辿り着いた両さん。息子の死を聞かされた両親は…。
・こち亀1000回記念号で発表されたエピソード人気投票で、単行本1ケタ巻数の中では1-1に次ぐ得票を得たエピソードです。途中の展開には、昔の日本映画のような、えもいわれぬ情感が漂っています。 「まごころ説教!?の巻」〜 「冬の旅…の巻」までのあらすじ/「こち亀データベース」より引用

当時、父親とケンカ別れ中だった両さんが、とある(哀しい)父子の絆を目の当たりにして実家へ電話をかけるシーンが(連載初期の劇画志向もうかがえつつ)グッとくるエピソードです。前話から引き続く国鉄(当時)駅や東北のリアルな描写、旅の空気感も素晴らしいですね。

24巻「バーバーの恐怖」

無頓着な両さんの髪は、だらしなく伸び放題。麗子や中川が刈ろうとするが、髪が固すぎてなかなかうまくいかない。結局 麗子から散髪代をもらって理髪店へ向かう両さんだが…。
・27-6・65-8などへ続く、名物(?)・散髪シリーズの第一弾。 「バーバーの恐怖」あらすじ/「こち亀データベース」より引用

「こち亀」のギャグエピソードの定番のひとつ・散髪トラブル話の元祖。爆笑の本筋だけでなく、「甲斐理髪店」(甲斐よしひろさんの実家ネタ)や「ザク」「ぐふっ!」(背後に飛ぶモビルスーツ)など自由すぎる細かなギャグまで、たっぷりと笑えます。

24巻「親心…」

大原部長の娘・ひろみの新居に遊びに行く事になった両さん。部長は「一緒に行きましょう」との言葉に渋っていたが、当日になって合流。全く落ち着かない様子で、娘の生活ぶりを懸命にチェックする。
・22-6で結婚した部長の娘・ひろみさんと夫・英男氏の新居が登場。サブタイトル通り、部長の親心が感じられる、なかなかにシブいエピソードです。 「親心…」あらすじ/「こち亀データベース」より引用

22巻で結婚した娘の新居を訪ねる大原部長の切ない心境と、無神経なようで大事なことはちゃんと理解している両さんの対比、豊かな温かさの描写が白眉。ラストは「こち亀」40年史の中でも屈指の人情味に溢れています。

57巻「両さん天国へ行く」

両さんが死んだ!?…実は、天国にある“命を司るロウソク”の炎が 手違いで消えてしまっていたのだ。再点火されるまでの間 魂だけの存在となった両さんは、部長の体に入り込んで好き放題のイタズラを始める。 「両さん天国へ行く」あらすじ/「こち亀データベース」より引用

「こち亀はどんな最終回を迎えるか?」の話題では「結婚」「昇進」「死ぬ」などがよく挙げられていましたが、どれも本編中ですでに経験済みの両さんです(笑)。死んだ身でありながら天国へ怒鳴りこみ抗議するメンタル、これぞ両津勘吉! というエピソードです。

59巻「お化け煙突が消えた日」

昭和39年…少年・勘吉の通う小学校に臨時でやって来た女性教師・佐伯羊子先生。優しい佐伯先生に ほのかな思慕の念を抱く勘吉だが、やがて別れの時が。勘吉と仲間達は、自分達の想いを伝えるため…。
・爽やかな読後感を残す、両さんの少年時代シリーズ。“おばけ煙突”(千住に実在した 火力発電所の巨大煙突)を絡め、ノスタルジックな情景が描かれています。秋本先生も、お気に入りのエピソードだとか。
・両さん(勘吉)と「トン・チン・カン」トリオとして活躍(?)する豚平・珍吉が初登場。大人になった今も親交は続いています(65-5・108-4他)。 「お化け煙突が消えた日」あらすじ/「こち亀データベース」より引用

秋本治先生が度々「お気に入りの話」として挙げられていたりと、根強い人気の名編。悪ガキ・トンチンカン(豚平・珍吉・勘吉)トリオに芽生える美人先生への思慕の念、そこから爆発するパワフルな行動は、おばけ煙突のリアルな描写も手伝って胸にしみるさわやかな感動を呼びます。

68巻「恐怖の箱男(ハコオトコ)!」

極寒の中のパトロールを嫌がった両さんは、こっそり派出所へ戻って来る。しかし部長に見つかりそうになり、慌ててロッカーの中へ。出るに出られなくなった両さんが入ったまま、廃棄処分となるロッカーはゴミ処理場へ運ばれ…。
・なし崩し的に状況が悪化して行く展開が、こち亀ギャグの真骨頂(59-7等もそうですね)。 「恐怖の箱男(ハコオトコ)!」あらすじ/「こち亀データベース」より引用

59巻「北国よいとこの巻」と同様、日常のちょっとしたことから事件がはじまりどんどん状況が悪化していく展開に笑いつつ、目が離せません。無敵の丈夫さを誇る両さんだからこその安定爆笑ですね。

69巻「両さんメモリアル」

浅草で産声をあげて三十数年、常に破天荒に生きて来た男・両津勘吉=両さん。今 彼は、何かを胸に秘めて新たな一歩を踏み出そうとしていた。中川・麗子・大原部長・戸塚・寺井・本田・星…仲間たち一人一人にプレゼントを手渡し、感謝の言葉を述べる両さん。そして彼の口から出た言葉は…「お世話になりました! 私は今日限り やめさせてもらいます」…。
・「長い間ご愛読ありがとうございました。 両津勘吉巡査は派出所を去り、旅立ちました。13年間の長期にわたり読み続けてくださった読者の方々にお礼を申し上げます。 また会う日まで さようなら」…このエピソードのラストページに書かれた文章です。 「両さんメモリアル」あらすじ/「こち亀データベース」より引用

前々話の麗子・前話の中川に続くメインキャラ総括話…ですが、まさかの展開、そしてまさかのオチ! 2016年の連載終了発表でも「そういえば26年前…」と引き合いに出す人が続出した、漫画史に残る伝説の大ネタエピソードです。3週をかけて“予感”を盛り上げていく周到さがすごいです。

73巻「突撃!クレーンゲーム」

クレーンゲームの達人・両さん。宝石店のイベントでも、高級品を根こそぎクレーンで持って行き 大儲け。更に 中川の紹介でテレビのバラエティー番組に出場した両さんは、物欲と体力を発揮し“人間クレーン”となって大活躍する。
・連載1000回記念の人気投票ベスト10(「別注こち亀」として単行本化)で、人情話系が並ぶ中 第五位にランクインしたエピソード。両さんの物欲が そのまま具現化したようなラストの姿が笑えます。 「突撃!クレーンゲーム」あらすじ/「こち亀データベース」より引用

歯でポルシェをゲットする両さん、“物欲”がそのまま具現化したかのような姿に爆笑を禁じえません。そのあと、うれしそうに笑顔で回っている姿も最高。先日放送された「ワイドナショー」では東野幸治さんがお気に入りエピソードとして話し、松本人志さんも爆笑していました。

76巻「ゴキブリ大行進!」

中川の会社で実験用のゴキブリを買い取っていると聞いた両さんは、害虫駆除で儲けて 更にゴキブリを転売するという商売を思い付く。が、なかなか数が集まらないのに郷を煮やし、“養殖”に手をつけるが…。
・「今回の作品は、気の弱い方、虫の嫌いな方、食事中の方は見るのを御遠慮下さい」と冒頭に書かれている通り…とにかくゴキブリ三昧の話です。
・パニックを引き起こした、ニコニコ寮のゴキブリ養殖部屋・303号室。その後も根本的改善はされなかったようで、115-6で再登場しています(^^;)。 「ゴキブリ大行進!」あらすじ/「こち亀データベース」より引用

1ページ目の「閲覧注意」警告が恐怖を煽る、虫の苦手な人は絶対読めない話。過程の描写も絵も大変リアルなため、ラストのインパクトは筆舌に尽くしがたいものがあります…。

76巻「巨大フード運動会!?の巻」

東京湾岸のイベントホールで開催される、食品メーカー主催の運動会を訪れた両さん。豪華賞品にひかれ、巨大サイズに作られた食べ物の中を走り抜ける 破天荒なレースに参加する。 「巨大フード運動会!?の巻」あらすじ

「こち亀」の定番シチュエーション「巨大」+「選手権」の合体エピソード。“現実にはありえないけどやってみたくなる”“両さんの無敵っぷりを存分に堪能できる”安定のおもしろさです。
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