1997年の初回開催から20年。アート、エンターテインメント、アニメーション、マンガの4部門において優れた作品を顕彰するとともに、受賞作品の鑑賞機会を提供してきたメディア芸術の祭典「文化庁メディア芸術祭」。
その20年の歩みをふりかえる企画展「文化庁メディア芸術祭20周年企画展」が、2016年10月15日(土)から11月6日(日)まで、東京・千代田区のアーツ千代田 3331を中心に開催されます。
対して今回の企画展では、テーマを「変える力」とし、20年分の受賞作品を縦の時間軸でつなげることで、これまでに起きた変化や流れをみることのできる場となっています。
7月14日に行われた記者発表会では、審査委員を務められた4人の部門監修者より、そのみどころもご紹介いただきました。第16回 アート部門 大賞「Pendulum Choir」
第16回アート部門大賞を受賞した「Pendulum Choir」はロボティクスとオペラが融合した作品。関口さんは「ロボティクスやAIがどのような新しい表現を生むかが注目されている昨今、人間の身体空間と古典的な芸術表現とが結合した、極めて重要な作品」と解説。
展示に関しては「ゲームを実際にプレイしてもらって懐かしんでもらうという展示ではなく、20年前には家庭用ゲーム機で家に閉じこもってやっていたことが外に出るようになった、という変化自体を展示していくことになると思います」と解説。
展示される作品の選定については「時代を代表する、以前・以後で『どこが変わったか』ということを語ることができる作品をチョイスするように努力しています」と話しました。
第15回アニメーション部門優秀賞を受賞した『マイブリッジの糸』の隣に商業アニメや学生制作のアニメが並ぶなど、「アートアニメと商業アニメが並ぶ、ユニークなカオス」とも紹介。企画展でも、多種多様な作品展示が期待されます。第15回 アニメーション部門 優秀賞「マイブリッジの糸」
一方、データを見てみると、2003年を境に女性受賞者の増加が見られます。「60年代以降の女性作家の活躍と、女性の読者市場を基盤としたジャンルの確立に、賞の方が少し遅れてついていったという見方もできるかもしれません」と、20年での変化について話しました。
第17回マンガ部門大賞を受賞した、震災以降の宮城県の架空の街・杜王町を舞台にした『ジョジョリオン ―ジョジョの奇妙な冒険Part8―』。伊藤さんは、「津波という大きな災害に対して、荒唐無稽の上に荒唐無稽を重ねたかのような想像力であたっていく、物語的な想像力でしか到達できない、一見アンリアルなものでしか到達できないリアルというものがあるのではないかと予見させてくれます」と評しました。
Inctroduction of exiii's prosthetic hand (JAPANESE)
受賞後は「HACKberry」という、ユーザーの声を多く取り入れた実用モデルをリリースし、さらにソースコードをオープンソース化。アメリカでは義手をつくって13歳の女の子にプレゼントするプロジェクトが実施され、ドイツではユーザー自ら筋電センサーを開発しアップデートするなど、世界中で改良・作成が日々行われているそう。
大きな紙を前に「10分間で今までのメディア芸術祭受賞作品のイラストをできるだけ描いてみようと思います」と言い、「スタート!」と自ら掛け声をかけてライブペインティングがはじまりました。 「魔法少女まどか☆マギカ」「時をかける少女」「Ingress」「日々の音色」「つみきのいえ」「スペースバルーンプロジェクト」「サマー・ウォーズ」「ジョジョリオン」など、歴代の受賞作をどんどん描いていくしりあがり寿さん。 最後には「仕上げ」として、画面中央に朱色で大きな丸を書いていき、「メディア芸術祭」のシンボルが完成。 と思いきや、突如完成した紙を剥がしてぐちゃぐちゃに丸めていき、何やら青いテープを貼っていきます。 「できた! ジャーン!」と手を掲げると、なんと20周年企画展のシンボルマークが完成し、会場からは笑いと驚きの声。「劣化3Dシンボルマークのできあがりでーす! ありがとうございました!」と満面の笑みでイベントの締めくくりとなりました。
今回の企画展では、歴代受賞作品等が一挙に展示されるほか、歴代の受賞・審査委員会推薦作品から厳選したアニメーションや実写等の多様な映像作品の上映や、これまでのマンガ部門受賞作品の全巻を自由に閲覧できるというマンガライブラリーも設置されます。
歴代受賞者等が出演するトークイベント、パフォーマンス、ワークショップ等の多彩なプログラムが開催される予定なので、ぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。
※記事初出時に一部表記に誤りがございましたのでお詫びして訂正いたします
※7/15 記事初出時、加藤敬さんが登壇したと記載しておりましたが、記者発表会には出席されておりませんでした。読者の皆様および関係各位にお詫び申し上げると共に、慎んで訂正いたします
その20年の歩みをふりかえる企画展「文化庁メディア芸術祭20周年企画展」が、2016年10月15日(土)から11月6日(日)まで、東京・千代田区のアーツ千代田 3331を中心に開催されます。
時代を映してきた作品群が一堂に会する大祭典
毎年開催される受賞作品展は、アート、エンターテインメント、アニメーション、マンガの4部門の同時代の表現に一挙に触れることが出来る、いわば1年ごとに区切った時代の断面を展示する場。対して今回の企画展では、テーマを「変える力」とし、20年分の受賞作品を縦の時間軸でつなげることで、これまでに起きた変化や流れをみることのできる場となっています。
7月14日に行われた記者発表会では、審査委員を務められた4人の部門監修者より、そのみどころもご紹介いただきました。
アート部門のみどころ
アート部門監修者の関口敦仁さんは、「20年というのはちょうどいい区切りだと感じました。文化庁メディア芸術祭の第1回が始まる前はネットワーク通信がやっと一般的になった頃でしたが、この20年間はVRやAR、ロボディクスなどの新しい技術が発表され盛り上がっていきました。20年経った今、VRは“道具”として利用できるようになり、どう社会に組み込まれていったかというところも展示できれば」と語ります。エンターテインメント部門のみどころ
エンターテインメント部門監修者の伊藤ガビンさんは、ゲーム作品に焦点を当て「この部門ではゲーム作品が多数受賞しています。当初は家庭用ゲーム機の作品がたくさん賞をとっていますが、だんだん携帯ゲーム機の作品になり、近年はスマートフォンのゲームに取って代わっています」と20年を振り返ります。展示に関しては「ゲームを実際にプレイしてもらって懐かしんでもらうという展示ではなく、20年前には家庭用ゲーム機で家に閉じこもってやっていたことが外に出るようになった、という変化自体を展示していくことになると思います」と解説。
アニメーション部門のみどころ
アニメーション部門監修者の氷川竜介さんは、「メディア芸術祭が始まった1997年はアニメーションにとって変革のあった年。『もののけ姫』が史上最高の興行収入を獲得し、アニメーション映画がステップアップした年であり、『新世紀エヴァンゲリオン』が劇場公開され完結した年でもあった」と当時の印象を振り返ります。展示される作品の選定については「時代を代表する、以前・以後で『どこが変わったか』ということを語ることができる作品をチョイスするように努力しています」と話しました。
第15回アニメーション部門優秀賞を受賞した『マイブリッジの糸』の隣に商業アニメや学生制作のアニメが並ぶなど、「アートアニメと商業アニメが並ぶ、ユニークなカオス」とも紹介。企画展でも、多種多様な作品展示が期待されます。
マンガ部門のみどころ
マンガ部門監修者の伊藤剛さんは、「マンガ部門は、他の部門ほどはっきりとした20年の変化というものがありません。メディアやデバイスの変化が乏しく、おそらく電子デバイスや電子書籍によってマンガ表現が変化していくのはこの先でしょう」とこれまでを振り返り、これから先のマンガ表現について語りました。一方、データを見てみると、2003年を境に女性受賞者の増加が見られます。「60年代以降の女性作家の活躍と、女性の読者市場を基盤としたジャンルの確立に、賞の方が少し遅れてついていったという見方もできるかもしれません」と、20年での変化について話しました。
ジョジョリオン ―ジョジョの奇妙な冒険Part8―
展作家によるパフォーマンスの披露も!
記者発表会では、出展作家によるパフォーマンスも披露されました。handiii
第18回エンターテインメント部門優秀賞受賞の「handiii」は、3Dプリンターで出力したパーツとスマートフォンを利用し、コストの削減と、個性を表現できるデザインを兼ね備えた筋電義手。筋電義手とは、手を失われた方が残された腕の筋肉の電気信号を介し直感的に操作できる義手のことです。しりあがり寿ライブペインティング
さらに、『あの日からのマンガ』で第15回マンガ部門優秀賞を受賞した、しりあがり寿さんによるライブペインティングも。大きな紙を前に「10分間で今までのメディア芸術祭受賞作品のイラストをできるだけ描いてみようと思います」と言い、「スタート!」と自ら掛け声をかけてライブペインティングがはじまりました。 「魔法少女まどか☆マギカ」「時をかける少女」「Ingress」「日々の音色」「つみきのいえ」「スペースバルーンプロジェクト」「サマー・ウォーズ」「ジョジョリオン」など、歴代の受賞作をどんどん描いていくしりあがり寿さん。 最後には「仕上げ」として、画面中央に朱色で大きな丸を書いていき、「メディア芸術祭」のシンボルが完成。 と思いきや、突如完成した紙を剥がしてぐちゃぐちゃに丸めていき、何やら青いテープを貼っていきます。 「できた! ジャーン!」と手を掲げると、なんと20周年企画展のシンボルマークが完成し、会場からは笑いと驚きの声。「劣化3Dシンボルマークのできあがりでーす! ありがとうございました!」と満面の笑みでイベントの締めくくりとなりました。
文化庁メディア芸術祭20周年企画展は10月15日(土)から
記者発表会には、文化庁メディア芸術祭20周年企画展実行委員を務める阿部芳久さん、田中秀幸さん、和田敏克さん、しりあがり寿さん、原島博さん、古川タクさん、里中満智子さん、富野由悠季さん、河口洋一郎さんらも登壇。今回の企画展では、歴代受賞作品等が一挙に展示されるほか、歴代の受賞・審査委員会推薦作品から厳選したアニメーションや実写等の多様な映像作品の上映や、これまでのマンガ部門受賞作品の全巻を自由に閲覧できるというマンガライブラリーも設置されます。
歴代受賞者等が出演するトークイベント、パフォーマンス、ワークショップ等の多彩なプログラムが開催される予定なので、ぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。
※記事初出時に一部表記に誤りがございましたのでお詫びして訂正いたします
※7/15 記事初出時、加藤敬さんが登壇したと記載しておりましたが、記者発表会には出席されておりませんでした。読者の皆様および関係各位にお詫び申し上げると共に、慎んで訂正いたします
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イベント情報
文化庁メディア芸術祭20周年企画展―変える力
- 会期
- 2016年10月15日(土)~11月6日(日)
- メイン会場
- アーツ千代田 3331(東京都千代田区外神田6丁目11-14)
- 開場時間
- 11:00~19:00 ※入場は閉場の30分前まで
- 会期中無休
- サテライト会場
- NTTインターコミュニケーション・センター[ICC]、UDX THEATER、国立新美術館 他
- ※開館時間、休館日は会場によって異なります。
- 入場料
- 無料 ※一部のイベントは有料
- 主催
- 文化庁メディア芸術祭20周年企画展実行委員会
- 協力
- アーツ千代田 3331
- ウェブサイト
- http://20anniv.j-mediaarts.jp/
- ※出展・イベント情報の詳細は上記ウェブサイトにて順次発表する予定です。
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