OSTER project × sasakure.UK対談 DTM進化論「もっと自由な音楽へ」

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変わったこと、変わらないこと

━━2010年代も下半期にさしかかろうという2015年末ですが、過去と今とで、何が変わったと感じますか?

ササクレ 2007年当時から考えると、音源も進化して、やりたいことにすごく近づけるようになったと思います。

それとは別に、自分の中では、音楽的な直感が養われました。最近は音を聴くだけで「この音色に使える」というのがわかるので、制作速度も速くなっています。歌詞に時間がかかるので歌物だったら1週間くらいほしいですが、インストだったら1日あればつくれますね。ミックスを入れて2日ですね。

OSTER すごい! 私は、変わったと言われて真っ先に思うのは、ソフト音源が主流になったなあって(笑)。「8850」(「ミュージ郎SC-8850(DTM-MR885A)」)とか誰も知らないですよね。

ササクレ 完全に昔話ですね…(遠い目)。

OSTER 私がちょうどボカロに触れ始めた頃に、ソフト音源の流れがきて。おかげで、書き出しが圧倒的に楽になりましたね。ボタン1つで各パートのトラックが、音源の時間に関係なくすぐに書き出せる快感! それまで、5分の曲でも、20パートつまり20種類の音源があれば、書き出すためにそれぞれ5分必要だったから、それだけで100分かかっていたわけです。その頃から比べたら、ずっと効率的になった。

あと、それまではソフトシンセでしかできなかった生演奏っぽいリアルさが、手軽に追求できるようになったので、ササクレさんの言う通り、自分の実力でできる範囲がどんどん広がっていったと感じます。

よく言われることですが、DTM自体の敷居が下がって、DTM人口も増えている気がします。

ササクレ それは思いますね。

━━いまDTMを始めた方にアドバイスなどありますか?

ササクレ 楽しんでつくること! それと、自分がいいなと思ったものを大切にすることが大事だと思います。意外と、メロディセンスは大人になっても子供の頃と変わらないんですよね。昔の曲を聴いても、自分もいいメロディを書くなあと思う瞬間がけっこうあるので。

OSTER わかります、それ。今回のアルバムに収録するにあたって、昔の楽曲をアレンジし直したんですが、そこにも、今の自分がみてもいいと思う要素があって、昔といっても自分なんだなと。昔好きだったものが、今につながっていると感じます。

音楽への好奇心はとめどなく

『不謌思戯モノユカシー』

━━OSTERさんに参加してもらった座談会で話に挙がりましたが、日本では馴染みの薄いインスト音楽でも、音楽ゲームがプラットフォームとして機能することで聴いてもらえる状況があると。同じように、より広く聴いてもらうために、次に活躍したい場所というものはありますか?

ササクレ そういう意味では、劇伴(劇中音楽のこと)をやってみたいですね。OSTERさんもじゃないですか?

OSTER できることなら、私はブロードウェイ系のミュージカルをやりたいですね。それと、ずっとやってみたいと思っているのはゴスペルなんです。あと、演歌とか!

でも、それに限らず、私の根底には「いろんなジャンルの音楽をつくれるようになりたい」という気持ちがあるので、それを突き詰めていけたらいいなと思っています。

━━今回のアルバムもジャンルとして多種多様な音楽が詰まっていて、懐の広さがわかる作品だと思います。

Recursive Call

OSTER 実は、一番好きなのはショー・ミュージックなんですよね。今年一番聴いたのは、舞台版『天使にラブ・ソングを…』の来日公演のCDです。音楽が、舞台音楽家のアラン・メンケンだったんですよ。『アラジン』とか『リトル・マーメイド』とか、ディズニーの音楽を手がけている。

最高すぎて、一ヶ月くらいそれしか聞いてなかったほどです。ブラックミュージックが好きだから、いろんなジャンルの音楽にブラックミュージックやソウルの要素をぶち込んで自分好みにしちゃおうというのが最近のトレンドです。

━━「ササクレフィクション」と題された物語音楽も、ある意味で、音楽を聴いてもらうための一つのプラットフォームですよね?

ササクレ そうかもしれませんね。僕には、物語と一緒に音楽を届けたいという目標があります。ストーリーがあると世界観が広がりやすく、バラバラなジャンルの音楽でもひとつにまとめやすい。

もう一つ意識していることがあって。今、逆にいろんな音楽が溢れすぎてしまって、個性が消されてしまっているような気がします。「この曲でしかありえない唯一無二のものなんだ」と思わせられる、それが個性だと思います。今回のアルバムは、これまで以上に個性を大切にしてつくることを意識した作品でもあります。

ボーカロイドの登場が2007年当時は新しかったように、新しいことができるかもという可能性を感じる瞬間は定期的に必ず訪れるので、それを逃さずにいたいです。

OSTER 私は、「自分の好きなことを好きなようにしたい」。これに尽きます。頭の中につくりたいものがあったらつくってみたいし、好きなものを見つけたら似たようなこともしてみたい。新しく買った音源があったら新しいことを試してみたい。そういう純粋な音楽への好奇心は、本当にとめどなくて、やっぱり私は音楽が好きなんだなって思います。

関連商品

Recursive Call

OSTER project
発売 : 2015年12月16日
価格 : 2,376円(税込み)
販売元 : Subcul-rise Record

関連商品

不謌思戯モノユカシー(初回生産限定盤)(DVD付)

sasakure.UK
発売 : 2015年12月2日
価格 : 3,996円(税込み)
販売元 : U/M/A/A Inc.

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OSTER

トラックメイカー

作詞、作曲、アレンジからサウンドプロデュース、さらに映像制作までをもこなす、マルチクリエイター。
2007年からニコニコ動画にオリジナル楽曲を投稿。「恋スルVOC@LOID」(190 万再生) をはじめ、多数の" 伝説入り楽曲"(100 万再生以上) を発表し続けている。
ボーカロイドブームのパイオニアとして現在でも不動の人気を誇る彼女だが、beatmania IIDXなど数々の音楽ゲームへの楽曲提供、TVアニメ主題歌のプロデュースなど、その活躍は多岐に渡る。
近年では、aikoのシングル表題曲のアレンジャーとして連続で抜擢されるなど、その音楽センスに対する評価はさらに急上昇中である。

sasakure.UK

サウンド・プロデューサー

2月11日、福島生まれ。作詞・作曲・編曲の全てをこなすサウンド・プロデューサー。幼少の頃、《ゲームは一日一時間まで!》という非常に過酷な条件の中で、8ビットや16ビットゲーム機の奏でる音楽に多大な影響を受けて育つ。学生時代には男声合唱を学びながら、木下牧子、三善晃といった作曲家や、草野心平、新美南吉などの詩人・文学作家の作品に触れるようになり、この頃から独学で創作活動を開始。
インターネット上で自身のサイトを拠点に、オリジナルのインスト楽曲を発表する活動の後、"初音ミク"などの音声合成ソフトVOCALOIDにインスピレーションを受け、作詞にも挑戦。これらの楽曲を動画サイトに公開するようになると、その作品性の高さから一躍注目を集めるようになる。時代を越えて継承されてゆく寓話のように、物語の中に織り込められた豊かなメッセージ性を持つ歌詞と、緻密で高度な技術で構成されたポップでありながら深く温かみのあるサウンド、それらを融合させることで唯一無二の音楽性を確立。
また、楽曲のコンセプトや世界観をもとに自らイラストや映像の制作も手掛けるほか、音楽表現を拡張するため結成されたバンド「有形ランペイジ」のプロデュース、自身の楽曲をモチーフにしたゲームの監修など、そのマルチな才能も非常に評価が高く、近年では様々なジャンルのクリエイターとのコラボレーションも企画・監修している。

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