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あの日の白いモビルスーツ 1977年からのオタク回想録その4

1980年 アニメからの脱出

季刊・宇宙船

受験真っ只中。1月には「マンガ少年別冊 『すばらしき特撮映像の世界』」の延長ともいうべき雑誌『宇宙船』が創刊されました。読者参加の造形物を紹介する3Dギャラリーは、模型が趣味だった自分にとって手が届く新たな可能性でしたし、当時の8mm映画ブームをうけての、自主制作映画の紹介に至っては、メディアを通して情報を得るしかなかったアニメ(当時はそう思い込んでいた)とは違って、そこには「ファンが作品をつくり上げる」という発展性も感じました。さらには、「ああ、東京では面白いことが起こってるんだな」と、アニメ誌以上にファンサイドの臨場感を感じたのです。

そして1月26日、大好きだった「機動戦士ガンダム」が最終回を迎えました。明らかに、受験で大変な時期だったと思うんですが、妹と二人で正座してテレビの前に座っていたことを明確に覚えてますから不思議なもんです。

とにかく、感動しちゃったんです。ロボットを脱ぎ捨てて、みんなのいる「居場所」へ帰る主人公。アムロは、終始いらつく奴だったけど、それでも「幸せはここにあるんだよな」と思ったんです。そして、妹と二人で声をそろえて「これはすごい!」って言ったことも忘れられないですね。

月刊アウト 機動戦士ガンダムのすべて1

受験中にもかかわらずに、まんがだの、アニメだのにうつつを抜かしていましたが、なんとか志望校への進学が決まりました。なんなんでしょうね、受験勉強って。そんなわけで開放感いっぱいの時期、『月刊OUT』も『アニメック』も、最終話を迎えたガンダムの特集に力を入れます。伝説となったピンナップ「うるわしのアルテイシア」も、この年の3月号の特集でした。この二冊は、本当にぼろぼろになるまで読みました。懐かしい。

脱出・・・

で! ここで、一旦燃え尽きたんです。中学生も終わりましたから。新しい世界が待っているんですよ。これまで、恋愛なんてものにはほとんど興味もなかったから、そのあたりもちゃんとやりましょう! と。それから、ちょっと真面目にやったら、わりあいお勉強も出来るようになったので、それもちゃんとやりましょう! と。

とにかく、まったく具体的ではないけれど、ここから「脱出」するんだ、と。アニメファンとして「知的」であるためには、とんでもない時間と労力と、「宇宙戦艦ヤマト 新たなる旅立ち」(ガンダム体験後に観たそれは、あまりに古臭く感じて期待はずれに思えた)くらいではびくともせずに愛する情熱が必要なのは、この頃には確信していました。

あの日見た白いモビルスーツは、アムロ同様、ぼくにとっても「脱出」するための鎧でした。鎧、だったはずなのです・・・

そして、高校へ…。アニメ雑誌の購読こそ辞めましたが「脱出」は、そうたやすいことではなかったんです。なぜなら、あれから30年以上経って、ぼくは毎シーズン、アニメの新作を楽しみに見ているし、マンガも読んでいる。「オタク大賞」なるイベントの構成までしているおかげで、アニメ業界、特撮業界の方々と、鼻の穴を膨らませながらオタク談義を楽しんでもいます。

アニメ、特撮に、人生を左右するタイトルは山ほどありますが、あの日、ガンダムを観たことは、今の自分を形成する重要なキーポイントだったのだと思いました。むしろ、白いモビルスーツは、ぬくぬくとしたオタクを育てる「毛布」のようなものとして機能してしまったのかもしれませんね。
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