ハン・ガンを生んだ韓国文学の系譜を辿る──翻訳家 斎藤真理子が選ぶ傑作選が刊行

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Yugaming

「斎藤真理子=個人編訳 韓国文学クラシックス」刊行に寄せて

初めて原語で読んだ韓国文学は、朴婉緒(パク・ ワン ソ)の短編「盗まれた貧しさ」でした。まるで歯が立たなかったにもかかわらず、その吸引力は凄まじく、ここに何かとてつもないものがあると予感したものです。
そして四十年以上経った今、その存在感はいよいよ鮮明です。湧き上がる生命力、凄絶な悲しみと怒り、不条理に向き合う強靭な倫理、そして人の情。これは朴婉緒一人のものではありません。「韓国文学クラシックス」はそのような、韓国文学の土壌をとことん鍛えた巨匠作家たちの短編アンソロジーです。
植民地時代に生まれ、分断と朝鮮戦争を経験し、軍事独裁政権下で検閲と戦いながら書きつづけ、民主化を見届けた先達らの結実を凝縮させました。
ハン・ガンは一夜にして生まれたわけではなく、この土壌から生まれて花開いたのです。今、世界に読者を持つに至った韓国文学の根に触れ、生きることのすべてが詰まった韓国文学のエッセンスを浴びてください。

――斎藤真理子

「斎藤真理子=個人編訳 韓国文学クラシックス」刊行ラインナップ

1.『親切な福姫(ポッキ)さん』パク・ワンソ

毛細血管のすみずみまで喜怒哀楽が行き渡り、旺盛な活力と深い悲しみをたたえたパク・ワンソの小説。その湯気が上がるほどの人間臭さに魅了されました。(斎藤)

パク・ワンソ(朴婉緒)さん

1931-2011年。5人の子を産み育て、39歳「裸木」でデビュー。李箱文学賞をはじめ韓国の主な文学賞を多数受賞。著書『あんなにあった酸葉をだれがみんな食べたのか/あの山は本当にそこにあったのか』他。

2.『虫の話』イ・チョンジュン

哲人の面影があるイ・チョンジュン。『カラマーゾフの兄弟』のように、ミステリー小説としての性格を色濃く備えた語りの魔術は実に鮮やかで、くらくらするほどです。(斎藤)

イ・チョンジュン(李清俊)さん

1939-2008年。多様な技法で多くの作品を残し、李箱文学賞をはじめ韓国の主な文学賞を多数受賞。1993年の大ヒット映画『風の丘を越えて/西便制』など映画化作品も多い。著書『あなたたちの天国』『うわさの壁』他。

3.『副市長は馬山(マサン)に赴任しない』イ・ホチョル

血だらけの、あるいは生乾きの歴史と自分の「今」とを接続させるために想像力を鍛え、言葉と向き合ってきた作家。頼もしくて悲しくて、忘れがたい作家です。(斎藤)

イ・ホチョル(李浩哲)さん

1932-2016年。1950年に北朝鮮軍に入隊、捕虜として韓国へ渡る。1955年「脱郷」で作家デビュー。現代文学賞、東仁文学賞等を受賞するほか、民主化運動にも尽力。著書『板門店』他。2017年には李浩哲統一路文学賞が創設。

4.『銅鏡』オ・ジョンヒ

女性の生き方を問いつづけ、激しい時代の変化を身体で受け止めたオ・ジョンヒ。しんと静かなその世界に足を踏み入れると、脳の中に風が吹いてきます。(斎藤)

オ・ジョンヒ(呉貞姫)さん

1947年生まれ。1968年にデビュー。李箱文学賞をはじめ韓国の主な文学賞を多数受賞するほか、韓国人として初の海外文学賞となる独リベラトゥール賞を受賞。著書『夜のゲーム』『鳥』『幼年の庭』他。

5.『九足の靴で居残った男』ユン・フンギル ほか

中産階級の自己懐疑を描く「九足の靴で居残った男」をはじめ、いずれも一人で十分に一冊を編めるきら星のような作家たちの欲張りな一冊です。(斎藤)

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