ロックバンド・ヨルシカが4月24日、新曲「あぶく」のMVをYouTubeで公開した。
そのコンセプチュアルな作風や、アーティストの素顔やプロフィールを明かさない作品至上主義などにより、今や音楽好きの注目を一身に集める存在となったヨルシカ。
小説と音源が一体となる5thアルバム『二人称』の熱も冷めやらぬ中、新たに発表された本楽曲のMVは、すでに500万回再生(記事執筆時点)を突破している。
そこで今回は、MVを中心に、ヨルシカのコンポーザー・n-bunaさんが紡ぐ独自の世界観、加えてタイアップ先であるTVアニメ『LIAR GAME』とリンクした数々の描写も紐解きながら、本楽曲の持つ魅力に迫っていきたい。
文:キタガワ
目次
ループから抜け出せない! エンタメに振ったヨルシカ「あぶく」MV前半部
「あぶく」MVのディレクターをつとめたのは、アニメ作家・イラストレーターのしまぐち ニケさん、映像作家のBiviさんによる映像制作ユニット・擬態するメタ。
MVは眼鏡を掛けたスーツ姿の男性が、密室で目覚めるシーンから幕を開ける。
すると間を置かずに扉から突如、銃を持った黒服の人物が侵入。何の脈絡もなく男性を撃ち抜くショッキングな映像と、ヨルシカのボーカル・suisさんのはっと驚く声……。
「あぶく」のMVはそんな衝撃的な展開をもって、一気に聴き手の心を動かしていく。
次に男性が再び目を覚ますと、いるのはまた同じ密室。数秒後に黒服が乱入して男を撃ち抜く。次も。その次も。
同じ展開が僅かな間に繰り返されるMVを観ながら、ここで我々は「この世界はループしているんだ」ということをはっきりと理解する。
ここでドゥーンと鳴らされるベースのグリッサンドも、漠然と「嫌なことがまだ起こりそう」という今後の不穏な空気を察するのに、一枚噛んでいる印象だ。
抜け出せないバッドエンドで終わるループ
これではまずいと思った男性は、様々な方法で現状の打開を試みる。布団に隠れてみたり、命乞いをしてみたり……。果ては、待ち伏せて撃退を試みようともしてみるが、全て無駄骨。
最後にバッドエンドで終わるループを抜け出せないまま、いたずらに死の回数だけが増えていく。<水面浮かんで浮かんでは消えるあぶく>と歌われる歌詞も言い得て妙で、息をしているようでしていないような、ネガティブな光景が繰り返されていく。
黒服の人物に為す術なく殺される男性/画像はYouTubeのスクリーンショット
翻って、『LIAR GAME』においても、主人公・神崎直が「あぶく」MVの男性と同様に絶望的状況に直面する場面が多い。
物語上、彼女が「必勝法がある」と前向きになった際、たいていそれは必勝法でも何でもない。それどころか何度も負債を積み上げる結果になってしまう。
神崎直「必勝法がある」/画像はTVアニメ『LIAR GAME -ライアーゲーム-』公式Xより
「あぶく」MV後半部──光明が差す2番と、新ルートを探すCメロ
先の見えない状況が続くMV。しかし楽曲が2番に差し掛かった頃、ここに来て事態は好転する。男が天井の照明を破壊し、真っ暗になった状況下でのワンシーン。
何も見えない中での対峙は互いに不利なものではあったものの、黒服を押し倒すことに成功するなど、負け続けだった男はここではじめて善戦に至る。
しかしながら、銃を持った黒服に男が勝てるかというのはまた別問題。気付けば何十回もトライ&エラーを繰り返した果てに男は完全に気力を無くし、自暴自棄の状態なってしまう。
そして男は何の気なしに履いていた靴を前に投げつけ、画面に大きなヒビが。
第四の壁の存在に気づく男性/画像はYouTubeのスクリーンショット
その先にいたのは第三者──つまりは鑑賞者である我々自身だった。この行動が契機となり、物語は予想もしていなかった展開へと突入することとなる。
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