英語版ウィキペディア(Wikipedia)は3月20日、ChatGPTなどの文章生成AIに記事を書かせることを禁止する新たなガイドラインをリリースした(外部リンク)。
ガイドラインでは、「記事コンテンツの生成または書き換えにLLMを使用することは禁止」と明文化。
例外として、自分で書いた文章の校正、他言語版の記事の翻訳については、条件のもと使用可能であることも今回の決定でより明確になった。
また条件として、校正については、大規模言語モデル(LLM)が新たに学習した情報を校正時に加えないこと、翻訳においては別途定められたガイドライン(AIの使用者が翻訳が正確であることを確認できるスキルを持つことなど)に従わなければならない(外部リンク)。
賛成44票、反対2票 AI執筆の議論は異例の早期終了
インターネット百科事典であるウィキペディアは、基本的にボランティアが執筆しており、ルールなども基本的にボランティアが議論で決めている。
さらに、議論の原則は多数決ではないため、基本的にはコミュニティの意見がまとまることでようやく決まる。しかし、時に多数の賛成意見が寄せられて、議論が尽くされたと判断された場合は、議論を打ち切って内容が決定されることがある。
今回のガイドラインの決定に対する議論では、賛成44票に対して反対2票と、圧倒的に賛成意見が多かったことで、従来の公募期間よりも早く終幕する異例の機会になった(外部リンク)。
賛成意見の多くは、過去にAIを使用した投稿に問題があった点を指摘。一方の反対意見では全面禁止という厳しい決定に対して反発していた。
言語で異なる生成AIへの対応 日本語版の方針は?
実は、ウィキペディアでのルールは言語ごとに異なっており、そのためAIに対する運用も言語によって大きく違う。繰り返しになるが、今回のガイドラインは英語版での決定となる。
日本語版では、「大規模言語モデル等により生成された文章に特徴的な記述を含む記事」については、削除される方針が2025年6月に決定(外部リンク)。しかし、2026年3月現在、削除する以外の正式な運用ルールが定められていない。
日本語版でのAI執筆に対する方針/画像は日本語版ウィキペディアより
一方、スペイン語版では英語版や日本語版よりもさらに厳しい、一切の生成AIの使用ができないガイドラインが2026年1月に採択された(外部リンク)。
原文は英語版の英文を参考にしているものの、例外規定を設けておらず、削除に関する方針では生成AIで書かれた記事は即時削除されることになっており、徹底されている(外部リンク)。
スペイン語版ではより厳しく対応/画像はスペイン語版ウィキペディアより
ロシア語版では、生成AIの文章をそのまま公開することは禁止(削除対象)しているものの、使用に関しては利用者本人が責任を負うことを前提に、英語版やスペイン語版よりもAIの使用を容認している(外部リンク)。
このように、言語ごとで許容する範囲や削除に対する考え方も異なっており、どのサイトもまだまだ議論が追い付いていないのが現状だろう。
AI執筆を巡って揺れるウィキペディア “汚染”で閉鎖された言語も
ウィキペディアのコミュニティが、これほどまでにAIに過敏になっているには理由がある。
生成AIが当たり前になったことで、生成AIで書かれた根拠が明確に示されていない低質な内容と、様々な著作物を使って文書を出力することで発生する著作権の問題に、頭を悩ませているのだ。
アメリカ・プリンストン大学に所属する研究者らが発表した論文「The Rise of AI-Generated Content in Wikipedia」では、ウィキペディアの4つの言語版に2024年8月に新規作成された記事のうち、約5%がAI生成である可能性を示している(外部リンク)。
現実的な問題として、グリーンランド語版は、機械翻訳による低品質記事の蔓延を理由に閉鎖されたことが、MITにより報告されている(外部リンク)。
グリーンランド語のように、機械翻訳の質が劣る言語を移植する際は、AIによる「劣悪な汚染」が特に問題になる。グリーンランド語はこれに耐えられる状況でないほどに汚染され、閉鎖を余儀なくされてしまった。
ウィキペディアの価値を揺るがしかねないAI投稿
ウィキペディアでは、こうした崩壊を免れるためにも、日々コミュニティによる記事の削除や執拗にAI投稿を繰り返す利用者の投稿禁止(ブロック)などの処置が行われている。
しかし、1日に1万回以上編集される言語もあり、生成AIを使った投稿を人間の手で把握することは到底難しいのが現状だ。
プリンストン大学に所属する研究者らは前出の論文で「AI生成記事の品質の低さが、Wikipedia全体の信頼性を損なうリスクがある」と指摘。生成AIへの今後の対応が、ウィキペディアそのものの価値を左右すると言っても過言ではないだろう。
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