ヤチヨは初音ミクを意識した存在 ボカロP参加の意図
──絵の迫力はもとより、キャラクターたちの軽快な掛け合いも印象的でした。酒寄彩葉役の声優・永瀬アンナさんもコメントで「本当に楽しかった」と書かれていましたが、こだわった点はありますか?
山下清悟 掛け合いの部分は、それこそ『銀河特急 ミルキー☆サブウェイ』(2025年)のような作品を見ると、もっとできたのかなって思っちゃうところもありましたね。ただ、ああいう本当にリアルなやりとりは口語の魅力で、『超かぐや姫!』で展開する劇としてのやりとりとは性質の異なるものなのかなと思っています。
ストーリーの中の会話をつくる上では、その発言に潜ませているサブテクストや、もっとメタ的な意識外の意味を匂わせるような会話にするのが好きなんです。だから、ある程度テンポ感などで生っぽい感じにはできるものの過剰にはせず、むしろ真っ当にアニメっぽいものをつくろうという意識がありました。
終始ハイテンションなかぐや
そんなかぐやに振り回される彩葉
──これだけのボカロPが揃って参加しているのも特徴ですが、どのような狙いがあったのでしょうか?
山下清悟 初期から歌姫ものとして企画していたので、やはり誰かアーティストをフィーチャーした方がいいとは考えていました。ちょうどその時期に『ONE PIECE FILM RED』(2022年)が公開されていたんですが、音楽関連で錚々たるメンバーが集められていたのを見て、キッチリとコンセプトを持って様々なアーティストを呼べたら面白いんじゃないかと思ったんです。
加えて、僕自身もまったく意図せずデザイン原案を出したんですが、ヤチヨは髪型といい実体を持たない電脳空間の歌姫という設定といい、かなり初音ミクと類似点のある存在になってるんですよね。
これはもう僕やプロデューサー陣含め、スタッフがガッツリボカロ世代ということもあって、無意識にそうなってしまったんだと思います。でもだからこそ、「それならボカロとしっかり組み合わせた方がいいんじゃないか」という考えに至ったんです。そこで、いろんなボカロPの方々に頼んでみようということになりました。
月見ヤチヨは意図せず初音ミクのような存在に
依然として世界は暗い、だからこそ
──初の長編制作にあたって、これまで培われた技術や様々な文化への愛が込められているのと同等に、「これはやらない」という歴史からの反省が強く意識されているように感じられました。
山下清悟 アニメづくりに限らず、うまくいっていないことに対して「なんでなんだろう?」って原因を分析したり、うまくいくための構造を考えたりすることがすごく好きなんですよね。
オリジナル長編アニメに関しても、やはりうまくいかない原因というものがあって、それを一つずつ分解していくことでわかってきたことがたくさんありました。それらを丁寧に取り除くのは、やはり今回特にこだわった点です。
──その上で全体的に悲観的な雰囲気にはせず、クライマックスには「これはハッピーエンドなのか?」と問いかけがあるなど、単に明るいだけでもないバランス感も印象的でした。
山下清悟 僕は本来、悲惨な家庭をいかに描くかみたいな暗い話しか思いつかない人間なんですよ。ただそういう暗さは本来、明るさとも表裏一体のものでもあると思うんです。
かぐや、彩葉、ヤチヨ、それぞれ明るい部分を持ちますが、そのどれもがあっけらかんとしたものとは限りません。でもそれは「嘘」ではなくて、そうふるまう覚悟をした「やさしさ」だと思います。エンディングテーマの「ray 超かぐや姫!version」(※かぐやとヤチヨのカバー、原曲はBUMP OF CHICKEN)の歌詞にも「楽しい方がずっといいよ ごまかして笑っていくよ」とありますが、これが本当にこの作品の全てです。
依然として世界は暗い、だからこそ明るいものを描くことに意義があると思っています。
ヤチヨのぬいぐるみと山下清悟監督
©コロリド・ツインエンジンパートナーズ
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作品情報
超かぐや姫!
- キャスト
- かぐや:夏吉ゆうこ
- 酒寄彩葉:永瀬アンナ
- 月見ヤチヨ:早見沙織
- 帝アキラ:入野自由
- 駒沢雷:内田雄馬
- 駒沢乃依:松岡禎丞
- 綾紬芦花:青山吉能
- 諌山真実:小原好美
- FUSHI:釘宮理恵
- 忠犬オタ公:ファイルーズあい
- 乙事照琴:花江夏樹
- 監督
- 山下清悟
- 脚本
- 夏生さえり/山下清悟
- ツクヨミキャラクターデザイン
- へちま
- 現実キャラクターデザイン
- 永江彰浩
- ライブ演出
- 中山直哉
- 美術監督
- 宍戸太一
- 色彩設計
- 広瀬いづみ
- ツクヨミコンセプトデザイン
- 東みずたまり/フジモトゴールド(ゴキンジョ)
- 現実コンセプトデザイン
- 刈谷仁美
- CG監督
- 町田政彌(スティミュラスイメージ)
- CG背景
- 草間徹也(キューンプラント)
- 編集
- 木南涼太
- 撮影監督
- 千葉大輔(Folium)
- 音楽
- コーニッシュ
- 音響監督
- 三好慶一郎
- 企画・プロデュース
- 山本幸治
- 製作
- コロリド・ツインエンジンパートナーズ
- アニメーション制作
- スタジオコロリド/スタジオクロマト
- メインテーマ
- 「Ex-Otogibanashi」月見ヤチヨ(cv.早見沙織)
- 劇中歌楽曲提供
- ryo (supercell)/yuigot/Aqu3ra/HoneyWorks/40mP/kz(livetune)
■あらすじ
夢と希望の集まる仮想空間<ツクヨミ>。
少女たちの出会い、そして別れのためのステージが、幕を開ける――
今より少しだけ先の未来。
都内の進学校に通う17歳の女子高生・酒寄彩葉は、バイトと学業の両立に励む超絶多忙な日々を送っていた。
日々の癒やしは、インターネット上の仮想空間<ツクヨミ>の管理人兼大人気ライバー(配信者)・月見ヤチヨの配信を見ること。
自分の分身を作り誰もが自由に創作活動を行う<ツクヨミ>で、彩葉はヤチヨの推し活をしつつ、バトルゲームで細々とお小遣い稼ぎをしていた。
そんなある日の帰り道、彩葉は七色に光り輝くゲーミング電柱を見つける。
中から出てきたのは、なんとも可愛らしい赤ちゃん。
放っておけず連れ帰ると、赤ちゃんはみるみるうちに大きくなり、彩葉と同い年ぐらいの女の子に。
「あなた、もしやかぐや姫なの?」
大きくなったかぐや姫はわがまま放題。
かぐやのお願い(わがまま)で彩葉は、ツクヨミでのライバー活動を手伝うことに。
彩葉がプロデューサーとして音楽を作り、かぐやがライバーとして歌うことで、二人は少しずつ打ち解けていく。
かぐやを月へと連れ戻す不吉な影が、すぐそこまで迫っているとも知らずに――
これは、まだ誰も見たことがない「かぐや姫」の物語。
関連リンク
山下清悟
アニメーター/アニメーション監督
1987年生まれ。アニメーター、監督、撮影。「NARUTO -ナルト- 疾風伝」や「呪術廻戦」のオープニング映像の活躍にて一躍有名となった。演出、作画、3D、撮影など様々なセクションを横断することによる総合的なシーン作りを特徴とし、視聴者の感情に訴えかけるキャラクターとストーリーの見せ方を目指す。2020年公開『ポケットモンスター ソード・シールド』のオリジナルアニメ「薄明の翼」で監督を務める。
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