Vシンガー天籠りのん×tepe対談 失われゆく“キャラソン”文化はVTuberに息づく

なぜVTuberの音楽はキャラクターソングっぽい? 天籠りのんが考える理由

──今回の新曲「メメメのメ」以外にも、VTuber/Vシンガーのオリジナル楽曲の制作をボカロPやインターネット発の音楽クリエイターに依頼するケースが多い印象があります。どういう背景があるのでしょうか?

天籠りのん 何でですかね(笑)。やっぱり、お互いインターネットが主戦場というところでシナジーがある……のかなあ……?

tepe 僕もそう思ってましたね。活動場所が共通しているという点が親和性を生んでいるんだと思います。

──tepeさんは、Midnight Grand Orchestraにギタリストとして参加しているのをはじめ、VTuber/Vシンガーの楽曲に数多くに携わっています。tepeさんから見て、VTuber/Vシンガーの楽曲に特有の傾向や特徴などはありますか?

tepe VTuberさんやVシンガーさん本人のキャラクター性を反映している楽曲が多いところだと思いますね。一昔前のアニメのキャラクターソングのように、歌手本人に焦点を当てた曲がすごく増えている印象があって。

なので、今回の「メメメのメ」も、そういう天籠さんのパーソナルな部分を曲にしたいと思ったんです。

──なるほど。近年、日本アニメの海外人気もあり、メジャーレーベルのアーティストがアニメの主題歌を担当するケースが当たり前になっています。その影響からか、いわゆるアニソンらしいアニソンやキャラクターソングが減っているのではないか、という言説も上がっています。

tepe そうですね。キャラクターソングが、アニメ文化のものからVTuber文化のものに移り変わってきた感覚はありますね。

天籠りのん 私も、そういったキャラクターソング的なアプローチは、VTuberの音楽の特徴のひとつとしてあるな、とは思いますね。さっきも話題に上がりましたが、「二次創作で広まってほしい」みたいな狙いを持っている人も多いので。

やっぱり、キャラクターソングにしか、そのVTuber/Vシンガーが歌う意義を持たせづらいというか。VTuber/Vシンガーの強みは、そのVTuberのキャラクター性や活動の中で紡いできたストーリーやナラティブにあって、音楽もそれを構成するパーツのひとつとして捉えられるというか。

天籠りのんさんのオリジナル曲「虚無虚無です。」

天籠りのん アニメを観ているとキャラクターの背景や文脈がわかるから、キャラクターソングがより楽しめるように、VTuber/Vシンガーの音楽でも同じ現象が起きているんじゃないかと思ってます。

──VTuber/Vシンガーの配信や活動を普段から追っていると、背景や文脈が理解できるので、そのキャラクターソング的なVTuberの音楽により深みや奥行きが感じられる、ということですね。

天籠りのん そうですね。逆にキャラクターソングっぽくない、インターネット発カルチャーっぽくもない、よりメジャーシーンに寄せた楽曲を発表するパターンもあるのかなと。当事者としては、両方あると思ってます。

天籠りのんのキャラソンとしての新曲「メメメのメ」

──「メメメのメ」は天籠りのんさんのキャラクターソングを意識して制作されたとのことですが、麻雀以外で何か意識したポイントはありますか?



tepeりのんさんの“不良少女”感も歌詞に埋め込めていけたらいいな」と思って、その辺は意識しましたね。暴走族の四字熟語感(笑)。

天籠りのん (笑)。<上等>とか<もう本気無理>とか、私が普段から使っているフレーズを随所に散りばめてもらっている感じですよね(笑)。すごく自然に混ぜていただきました。

tepe 作曲/編曲面だと、りのんさんの特徴である“可愛さと格好よさの融合”をすごく意識しましたね。

あと最近、まるでジェットコースターのようにあっちに行ったりこっちに行ったり、展開が目まぐるしく変わる曲調が、VTuber/Vシンガーさんの音楽のトレンドのひとつだと思っていて。それも取り入れています。

逆に、2番の<ねぇねぇ/ダメって言ってんじゃん>のところとか、めっちゃ難しいギターを弾いているんで僕の味が出ています(笑)。

──(笑)。歌ってみて、一番印象的なフレーズはどこでしたか?

天籠りのん 1番かあ。どこかな……えーでもやっぱり、2番のラップパートはめちゃくちゃ好きですね。リズムとか語感の感じとか。ぜひみなさんにも歌ってみてもらいたいです(笑)。

tepe 僕が仮歌を歌ったんですが、そこからりのんさんのボーカル素材に変えたとき、「あっハマった」って感覚があって。もうバッチリでした。

──本日はありがとうございました! 改めまして最後に、今回の新曲「メメメのメ」の聴きどころをお二人からうかがえればと思います。

天籠りのんさんの2ndシングル「メメメのメ」ジャケット写真

tepe  曲の中でグルグルと変わっていく展開と、りのんさんのパーソナルな部分をいい塩梅で描けたなと思っています。そこを楽しんでもらえたらすごい嬉しいです。

天籠りのん 本当に、聴いて歌っても踊っても楽しい楽曲に仕上がったかなと思ってます。ぜひたくさんの方に聴いていただきたいなと思ってます。

MVのダンスもとても可愛く、それこそ踊りやすいような振り付けにしていただいたので、そちらもぜひ楽しんでいただきたいです。夜露死苦!

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楽曲情報

天籠りのん 2ndデジタルシングル「メメメのメ」

作詞・作曲・編曲
tepe(OTOIRO)

関連キーフレーズ

天籠りのん

バーチャルシンガー

Sony MusicによるVTuberプロジェクト「VEE」所属のバーチャルタレント。

VSinger志望のエセ不良少女。その実態は、可愛いもの好きで、ちょっとものぐさなただの引き籠り。

他人に舐められやすいのを気にして不良に擬態してみたものの、あまり上手くいっていない。

2023年8月12日にデビュー。歌を中心に活動を行い、その圧倒的な歌唱力で人気を集める。さらに麻雀や雑談など、様々なジャンルの配信を行なっている。

自身のYouTubeチャンネル登録者数は8万人を突破(※2025年1月現在)。

2024年7月31日(水)に初のオリジナル楽曲「虚無虚無です。」を、ソニー・ミュージックエンタテインメントよりデジタル配信リリース。

イラスト:小原トメ太

tepe

サウンドプロデューサー/ギタリスト

テクニカルかつ繊細なギターを操り、ドープなトラップチューンからポップサウンドまで、一聴してtepeとわかる思いっ切りの良い演出・ボイシングを得意とするサウンドクリエイター。

繊細で優しいニュアンスの中で生まれる、共感性のある『青い』歌詞から、毒を含みながら心に爪痕を残すライミングも高く評価されており、ティーンを中心に人気が上昇中。

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