近年のボカロ曲は「二次創作しやすいようにつくっている」
──天籠りのんさんは、1st シングル「虚無虚無です。」リリースの際、別媒体のインタビュー(外部リンク)で、「アニソンやボカロが好きで、歌枠配信でもそういった楽曲を中心に歌っています」とおっしゃられていました。VOCALOID(ボーカロイド)文化との出会いを教えてください。
天籠りのん 実は、特定のある曲との衝撃的な出会いがあって、ボカロ文化そのものを知った、って感じでは全然ないんですよね。
私にとってボカロ曲は、聴きにいかないと聴けないものではなくて、自然に周りにあったというか。
ちょっと強烈なエピソードじゃなくて申し訳ないんですけど……もう周りにいる人がみんな、自然にボカロ文化が好きって感じだったんです。
──いわゆる「ボカロネイティブ(=物心がついた時にはボカロ文化があった世代)」ということですね。特に好きな曲やボカロPはいますか?
天籠りのん それこそ、tepeさんとも縁が深い、DECO*27さんの曲は好きですね。格好いい曲が好みなので、「ゴーストルール」とか「ヒバナ」とか。
──なるほど。「歌ってみた」動画を投稿されている「メルト」然り「炉心融解」然り、天籠りのんさんは人間が歌うには高すぎる、高難易度なボカロ曲をよくチョイスされている印象があります。
天籠りのん それは、ちょっと私の性格に影響されているかもしれません。結構負けず嫌いなところがあるので、「この曲はちょっと人間が歌うのは難しいよね」って言われると、逆に歌いたくなっちゃうっていう(笑)。
難易度が高い曲の方が、自分だけの唯一無二の表現になりやすいっていうのもありますね。
あとは、挑戦すること自体が楽しいっていうのもあります。簡単な曲を歌っているだけでは習得できないものが、そういったボカロ曲を歌うためには必要なことがすごく多いんですよ。だから歌い込むにつれて、だんだん歌のテクニックの引き出しが増えていくんですよね。
──そういった身体性のないトップライン(=歌の主旋律)は、かつてボカロ曲の特徴として挙げられがちでした。しかし近年のボカロシーンを見渡すと、そういった楽曲が減ってきているようにも感じています。
tepe その理由のひとつには、クリエイター側がとにかく二次創作しやすいようにつくっているのがあると思います。人間が歌えるようなキー(=音階)を設定したり、リズムやテンポを調整したり……。
もちろん今でも、ボカロ曲は歌うには難しい楽曲が多いとは思うんですが、現代の音楽は二次創作をきっかけに広まるケースがほとんどだと思うので。そこを意識した時代の流れがあるのかな、と。
──tepeさんは、二次創作のしやすさという点で、楽曲制作の際に意識されていることはありますか?
tepe そうですね。楽曲提供のオーダーをいただくときも「TikTokで流れてくるような中毒性のある曲が欲しいです」とご依頼していただくことが多いんですが、そこは僕のオリジナル曲でも意識していますね。
──それこそ、tepeさんが編曲を担当したDECO*27さんの楽曲「ラビットホール」は、二次創作がブームになったことをきっかけに、世界的ヒットに繋がりました。tepeさんは、本楽曲のどういった点がその要因になったと思いますか?
tepe 曲の強度によるところが大きいのはもちろんなんですけど、サムネイルやMVの内容も、世界で聴かれるには重要な要素だと思うんですよね。やっぱり二次創作は「歌ってみた」だけじゃなく、ファンアートだったり「踊ってみた」だったりもあると思うので。
そういったポイントをすべて押さえているのが、「ラビットホール」がここまで愛される楽曲になった理由のひとつだと思います。
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楽曲情報
天籠りのん 2ndデジタルシングル「メメメのメ」
- 作詞・作曲・編曲
- tepe(OTOIRO)
関連リンク
天籠りのん
バーチャルシンガー
Sony MusicによるVTuberプロジェクト「VEE」所属のバーチャルタレント。
VSinger志望のエセ不良少女。その実態は、可愛いもの好きで、ちょっとものぐさなただの引き籠り。
他人に舐められやすいのを気にして不良に擬態してみたものの、あまり上手くいっていない。
2023年8月12日にデビュー。歌を中心に活動を行い、その圧倒的な歌唱力で人気を集める。さらに麻雀や雑談など、様々なジャンルの配信を行なっている。
自身のYouTubeチャンネル登録者数は8万人を突破(※2025年1月現在)。
2024年7月31日(水)に初のオリジナル楽曲「虚無虚無です。」を、ソニー・ミュージックエンタテインメントよりデジタル配信リリース。
イラスト:小原トメ太
tepe
サウンドプロデューサー/ギタリスト
テクニカルかつ繊細なギターを操り、ドープなトラップチューンからポップサウンドまで、一聴してtepeとわかる思いっ切りの良い演出・ボイシングを得意とするサウンドクリエイター。
繊細で優しいニュアンスの中で生まれる、共感性のある『青い』歌詞から、毒を含みながら心に爪痕を残すライミングも高く評価されており、ティーンを中心に人気が上昇中。
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