QuizKnockのメンバー・田村正資さんが、『問いが世界をつくりだす: メルロ=ポンティ 曖昧な世界の存在論』(青土社)を8月27日(火)に刊行する。
本書は、現象学およびメルロ=ポンティさん(※)と知覚の哲学を専門とする田村正資さん初となる単著。
田村正資さんは本書について、「メルロ=ポンティと一緒に、私たちの問いかけに応じてその都度新しい姿を見せる、この世界と私たちの不思議な関わりについて探究しました」とXで紹介している。
※モーリス・メルロ=ポンティ(1908〜1961):フランスの哲学者。エトムント・フッサール(1859〜1938)の現象学の影響を受け、その発展につとめたことなどで知られる
雑誌『ユリイカ』『群像』へ寄稿 哲学が専門のQuizKnockメンバー・田村正資
田村正資さんは、1992年東京生まれ。東京大学大学院・総合文化研究科博士課程修了。
「楽しいから始まる学び」をコンセプトに、WebメディアやYouTubeチャンネルを通じて、クイズをメインにしたコンテンツを発信するQuizKnockのメンバーとして活動している。
QuizKnockを率いる伊沢拓司さんとは、2010年に「第30回全国高等学校クイズ選手権」で優勝を経験した。
東京大学の特任研究員を続けながら、株式会社baton(QuizKnock)の業務にも参画。現在は専門の哲学を研究しながら、同社で新規事業開発を手がける。
また、哲学論文を執筆しており、2017年に修士論文「知覚の逆説」で一高記念賞を、2021年に論文「メルロ=ポンティのグールヴィッチ批判」でメルロ=ポンティ研究賞をそれぞれ受賞。雑誌『ユリイカ』『群像』に論考や批評を寄稿している。
田村正資の単著『問いが世界をつくりだす』目次
はじめに 世界は「問い」を待っている
序論 現象学においてなぜ曖昧な世界が問題になるのか
I 未規定性 ここからは見えないティーカップの裏側について
第一章 見ているものと見てはいないもの
第一節 ライプニッツの「実測図」に対するメルロ=ポンティの批判
第二節 ケリーによる「あらゆるところからの眺め」説の検討
第三節 「未規定性」の役割の再考
第二章 経験をつなぎ合わせる未規定性――グールヴィッチとの対比
第一節 グールヴィッチの参照理論
第二節 メルロ=ポンティによるグールヴィッチ批判
第三節 メルロ=ポンティにおける経験の未規定性
第三章 「私たちにとっての即自」という逆説
第一節 超越と内在
第二節 「何ものか」の超越
第三節 「私たち」という内在――バークリとの比較
II 動機付け うまく説明できなくても、うまく振る舞うことはできる
第四章 対面と共存――動機付けられる主体の空間性
第一節 世界との対面――『知覚の現象学』における奥行きの経験
第二節 世界との共存――『感性的世界と表現の世界』における運動の経験
第三節 時間性と空間性
第五章 規範を感じ取る――ウィトゲンシュタインとの対話
第一節 私たちの行為と言語化可能な規則の関係
第二節 規範に対する感覚――「方向付けられた不満足」と「状況付けられた規範性」
第三節 身体化された規範性の在り方――メルロ=ポンティの知覚‐行為論
第四節 規範の感性論から規範の存在論へ
第六章 可能性が配合された現実に取り組む――メルロ=ポンティの行為論の定式化
第一節 前史としてのサール=ドレイファス論争
第二節 ドレイファスのメルロ=ポンティ解釈――意図的行為から区別された没入的対処
第三節 ロムデン=ロムラックのドレイファス批判――全面的な没入的対処の批判と可能的なものへの拡張
第四節 現実的であるとはどのようなことか
第七章 動機付けられた主体は自由でありうるか?
第一節 知覚における「動機付け」――『知覚の現象学』を主な対象として
第二節 「動機付け」論の問題点および自由との関わり
第三節 動機付けと情念
III 試問的様態 問いかけとしての私に応えるように、この曖昧な世界は存在する
第八章 未規定的な世界を把握するとはどういうことか――概念主義論争とのクロスオーバー
第一節 知覚内容は概念的か非概念的か
第二節 学びつつある意識
第三節 「動機付け」と「未規定的なものの地平」
第九章 英雄と悲劇――メルロ=ポンティにおける歴史的偶然性
第一節 『知覚の現象学』における偶然性
第二節 英雄と悲劇
第三節 私と世界の奇妙な関係
第一〇章 「何ものか」は在る――知覚的信念について
第一節 問いかけと知覚的信念
第二節 知覚的信念
第三節 知覚の存在論的機能
第四節 世界にとって、実在するとはどういうことか
第一一章 試問的な様態で存在する世界
第一節 A・J・エイヤーの命題
第二節 問いかけの存在論――試問的様態で存在する世界
第三節 世界の創造としての表現
結論 志向性の探求の果て――未完成な作品としての世界
あとがき
参考文献/索引出典:青土社の紹介ページ
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