「パチンコ店が日本の財産犯罪に及ぼす影響」についての論文発表が話題を呼んでいる。
この発表は、5月28日から31日(金)まで静岡で開催されている2024年度の「人工知能学会全国大会」にて行われたもの。パチンコ店との距離に応じて財産犯罪率(※)が上昇すること、パチンコ店の開店・閉店期間中に財産犯罪率が上昇することを検証している。
一日の財産犯罪発生率は、パチンコ店から0.5~1 kmの半径内の地域において、0.5km半径内や5~10 km半径内の地域よりも有意に高かったと説明した。
(※)財産犯罪とは、財産権を侵害する犯罪の総称。詐欺や窃盗、強盗、横領などがこれにあたる。
「パチンコ店の距離と財産犯罪の発生率は山型カーブになる」
論文発表を行ったのは、徳島大学の横谷謙次さん、京都大学の阿部修士さん、藤田医科大学の高村真広さん、徳島大学の山本哲也さん、大阪大学の高橋英之さんの5名。
研究では「パチンコ店の距離と財産犯罪の発生率は山型カーブになる」「パチンコ屋の開店中や閉店後は開店前よりも財産犯罪が増える」という2つの仮説を検証。
これらの仮説と、賭博施設と物理的に近い場所に住む人々は賭博障害(ギャンブル依存症)を発症する可能性が高くなるという「地域暴露理論」や、賭博障害と財産犯罪についての先行研究に基づき、パチンコ店が近隣住民に及ぼす影響について調査している。
研究では、6.5年にわたる犯罪記録と、パチンコ店の開閉日のデータを使用。日本全国にあるパチンコと近隣のコンビニと、住宅地の住所をサンプリングした。
また、ボーリング場や交通犯罪と比較することで、パチンコ店と財産犯罪の関係に、固有の現象が起こり得るのか検証を行っている。
パチンコ店の開店期間および閉店後に「財産犯罪発生率が有意に高い」結果に
検証により、一日の財産犯罪発生率はパチンコ店の開店前期間よりも、開店期間中および、閉店後期間中の方が有意に高い結果が明らかに。
財産犯罪発生率はパチンコ店から0.5~1kmの半径内で最も高く、パチンコ店の開店によって上昇し、閉店後も上昇し続けることが確認された。
パチンコ店の存在は、若者の詐欺犯罪への加担や、近隣の高齢者の詐欺被害などを助長し、社会的被害を広げている可能性があると考察している。
一方で、研究で使用した犯罪データはごく一部にすぎないことを検証の限界として説明。
発表ではパチンコ店が近隣に与える影響について、地域住民に情報開示したうえで、彼らの意見を生かすことが大事であると提言している。
ポップカルチャーと切っても切れない関係にある「パチンコ」──犯罪との関係は?
アニメやゲームなど、様々なIPコンテンツとのコラボやタイアップも盛んに行われているパチンコ/パチスロ産業。
有名IPとのコラボ機種は人気が高く、アニメやゲーム業界にとっても重要な資金源となっている。
2004年にリリースされた遊技機『CR新世紀エヴァンゲリオン』が大ヒット。『エヴァ』の版権管理を手がけるラウンドワークス社の代表取締役・神村靖宏さんは「パチンコのおかげで、普段アニメを見ない方々にまで認知が広まりました」として、近年の『エヴァ』のヒットにおける大きな要因として挙げている(外部リンク)。
また、大手パチンコメーカーのSANKYOは、遊技機『Pフィーバー機動戦士ガンダムSEED』で50,000台の販売実績を発表。2023年において、最大となる試遊機のヒットとなった。
今や、パチンコ/パチスロは、ポップカルチャーやエンターテイメント産業にとって欠かせないものとなっている。
この記事どう思う?
関連リンク
0件のコメント