Mika Pikazoが個展「REVENGE POP」に込めた対抗心 苦悩から辿り着いた表現

Mika Pikazoが個展「REVENGE POP」に込めた対抗心 苦悩から辿り着いた表現
Mika Pikazoが個展「REVENGE POP」に込めた対抗心 苦悩から辿り着いた表現

Mika Pikazoさんの個展「REVENGE POP」で撮影

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イラストレーター/キャラクターデザイナー・Mika Pikazoさんの個展「REVENGE POP」が、渋谷のイベントスペース「Hz」で2022年12月10日から12月29日まで開催されていた。

期間中の来場者数は約19,000人を突破。土日には入場制限がかかり、一部の限定商品は初土日に完売となるなど、大盛況の結果となった。

今年1月20日(金)に任天堂から発売される新作ゲーム『ファイアーエムブレム エンゲージ』をはじめ、人気タイトルでのキャラクターデザインなどを手がけるMika Pikazoさんの描き下ろしイラスト、初挑戦のアニメーション作品が展示されていた。 また、展示されている作品の複製原画や限定グッズの販売も行われており、YouTubeでの生配信も実施。

この記事では、作品がずらりと展示されている会場の写真と、Mika Pikazoさんへのインタビューを掲載。約3年ぶり2度目となる個展の様子をお届けする。

【画像51枚】「REVENGE POP」写真レポート

個展のタイトル「REVENGE POP」の意味と苦悩

──まずは「REVENGE POP」という個展のタイトルについてお聞かせください。“REVENGE”とは、何に対してのリベンジを指しているのでしょうか?

Mika Pikazo 自分自身が苦悩していたこと、悔しかったことに対して思いを吐くことを表現してこなかったことへのリベンジという意味合いです。一度、自分の過去や自分の感情、思っていることをちゃんと形にしたいなと思ってました。

──どういう経緯でそう思うようになったのでしょうか?

Mika Pikazo 自分が生業としているキャラクターデザインやイラストなどの仕事は、誰かに喜んでもらいたいし、誰かにとって元気になれるものになってほしいと描いてるんです。どうすればこのイラストで楽しんでもらえるかな、といつも考えています。

その上で、自分の好きなことも表現できたら良いと思ってますし、そういったものは今までも描いてきましたが、自分自身が思っているネガティブな感情は自分の中で塞ぎ込んでいました。

ただ、商業画集を出したあたりから、クリエイターとしてやっていくことに対していろいろ思う部分が出てきて。

私が絵を描く意味とか──絵を描く時って楽しんでないといけない、自分自身が誰かのための自分って考えてたんですけど、その反面、「あれ? 自分っていま、楽しくないんじゃないか?」って。気づいたときは怖かったです。ちょうどその頃、いろいろと考えなきゃいけないことや悲しいことが続いてしまって、絵を描くのが楽しくなくなってしまった時期がありました。

というより、絵を描くとその辛い出来事や感情が反芻してしまって、涙がとまらなくなって絵を描けなくなっちゃうぐらいまでになっちゃって……。 ──商業画集『MikaPikaZo』を出版したのは2019年9月ですから、割と長い間そうしたことで悩まれていたんですね。

Mika Pikazo はい。それで出た結論が、「もう一度、オリジナルの作品を、つくり上げていこう」でした。そこで自分の気持ちをストレートに吐露することでした。自分自身がブラジルから帰ってきたときと同じ気持ちで立ち上がろう、と。

自分のいろんな感情やネガティブな気持ちから逃げないで表現することが、個展のタイトルに表れていると思います。だから他者や社会へ向けたリベンジではなく、自分の不甲斐なさや悔しさへの対抗心といえます。

その先に「POP」があると信じてる。抽象的な話になってしまいますが、そう信じてやってみようと思いました。

初挑戦のアニメーション、背中を押した師匠・はなぶしの存在

──抱えていた悩みが解けていくきっかけはあったりしたのでしょうか。

Mika Pikazo 一時期、もう「創作に向き合うの、やーめた!」っていってめっちゃゲームしてたんですよ。ほかにも絵とは関係のないことをやってみて。

もちろん、その間もずっと絵も描いてたんですけど、徐々に「ああ、もう一回いけるかも」という気持ちになっていきました。

──息抜きができたのかもしれませんね。その心機一転のあとに生まれたのが、今回の個展で発表されたアニメーションでしょうか。以前のインタビューでアニメーターのはなぶしさんの影響もあったと伺いましたが。 Mika Pikazo はなぶしさんの影響は大きいと思います。これはいろんな場面で話してしまうことですが、はなぶしさんとお話しする機会があったときにアニメをつくってるところを見せてもらったんですけど、そのときにはなぶしさんから「簡単だよ」なんて言ってもらえて、じゃあやってみようかなって(笑)。

3Dをつくられる方もアニメーションをつくられる方も、私とは別のプロフェッショナルなクリエイターだと思っていたから、自分がつくれるものではないと思ってたんですけどね。

──個展のクレジットにも「アニメ師匠:はなぶし」とありましたし、背中を押してもらったんですね。

Mika Pikazo はい。もともとアニメーションというか映像が好きで。MVやファッションブランドのコレクション、たくさんの人が関わったライブパフォーマンス映像を見るのが好きなんです。私が一番好きな表現は総合芸術ですから、そういったものに対する憧れと尊敬がありました。

でも私がやってきたことはデザインで、アニメーションは諦めてたんです。私自身は動き出す前のキャラクターを生み出す人だという意識が強かった。 ──実際にアニメーションをつくってみて、手応えはありましたか?

Mika Pikazo アニメーションは初挑戦なので、「私はアニメ初心者だから好きにやっていこう」って。最後の最後で言い訳できるんです。自分は初心者で勉強をしてる。これってすごく大事なことだと思っています。イラストはやっぱりプロとしてやってる意識はありますので、完成度はこだわってしまうし、人にどう見られるの、それだけでなくこの形で残していいのか、気になります。

それだけ根を詰めてイラストを描いてきた分、今回アニメーションつくるのは気楽で。ちゃんとしたアニメーションをつくらないといけないとか思ってなくて、初めてイラストを公開した頃に近い気持ちです

アニメーションは自分にとって息抜きにもなり、研究対象としてすごくのめり込んでますね。アニメーションをつくってイラストに持って還れる、そしてイラストからまたアニメーションに……って。

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