日曜日の朝という放送時間から「ニチアサ」とも呼ばれる特撮ドラマ──スーパー戦隊と仮面ライダー。放送中の『仮面ライダーリバイス』はもちろん、3月からスタートしたスーパー戦隊シリーズ最新作『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』は、斬新な設定やビジュアルが発表当初から話題を呼ぶなど、近年ニチアサは大きな盛り上がりを見せている。
そんなニチアサを題材にした4コマ漫画『ニチアサ以外はやってます!』が、芳文社の『まんがタイムきららキャラット』で連載中だ。 かっこいいものに憧れる主人公・海城あかねは、ひょんなことから特撮研(特撮作品研究部)に入部。タイトルの通り、ニチアサを観る時間以外はディープな特撮トークを繰り広げる部員たちに感化され、あかねも特撮沼に落ちていく。
ヒーローに変身して悪と戦う「ニチアサ」と、女の子の等身大の日常を描く「きらら」。一見正反対のジャンルのように思えるが、作者の猫にゃんさんによると「ニチアサときららは本質的な部分で似ている」のだという。
その真意を確かめるべく、3月25日に単行本1巻が発売されたばかりの猫にゃんさんに話を聞いた(最後にはサイン本プレゼントも!)。
取材・文:ましろ 編集:恩田雄多
※「ニチアサ」にはプリキュアなども含まれますが、本記事ではスーパー戦隊および仮面ライダーの特撮作品を指しています。
猫にゃん よろしくお願いします。ただ、ウルトラマンやゴジラなどももちろん観ていますけど、特撮作品すべてを網羅しているわけではないので、今回は基本的にニチアサ特撮のみについて語ることにさせてください。私が「特撮」と言ったときは「ニチアサの特撮のことだな」と思っていただければ。どうかお手柔らかに。
──ひとくちに「特撮」といっても範囲が広いですからね。早速ですが、猫にゃんさんが最初に観たニチアサ作品は何でしたか?
猫にゃん 記憶にあるのは、3歳の頃に放送していた『仮面ライダー555』と『爆竜戦隊アバレンジャー』でしょうか。自分の意思で観はじめたのではなく、親に「これでも観てなさい」という感じで、そこから自然とニチアサを観るようになりました。
──自分も幼少期は『鳥人戦隊ジェットマン』を観ていた気がしますが、猫にゃんさんと違っていつの間にか戦隊ものから離れてしまいました。
猫にゃん 私もそうだったんですよ。『仮面ライダーディケイド』あたりまでは毎週観ていたんですが、小学校高学年にもなると何となく観るのが子どもっぽいと思うようになってしまって。まったく観ないか、観たり観なかったりという時期が数年続きました。
だけど中学に進学して、親戚の子どもの面倒をみるようになり、その子の付き添いでニチアサに触れる機会が増えたんです。それで中学2年生のとき放送していたのが、虚淵玄さんが脚本を担当した『仮面ライダー鎧武』なんですけど……。私も“中2”らしく、そういう作品が好きな時期がありまして。
──多くの人が一度は通る道だと思います。
猫にゃん 『魔法少女まどか☆マギカ』も大好きでしたし、中学2年という多感な時期に虚淵ワールドのライダーを正面から食らってしまい、またニチアサ沼に戻ってきました。
そのあとは、離れていた期間の作品を遡って観たり、「東映特撮ファンクラブ」に入会してからは自分が生まれる前の作品も観るようになりましたね。「東映特撮ファンクラブ」おすすめです!
──猫にゃんさんが考える「ニチアサ」の魅力は何だと思いますか?
猫にゃん これは東映の白倉伸一郎さん(「仮面ライダー」「スーパー戦隊」のプロデューサー)がおっしゃっていたことでもあるのですが、1年で必ずシリーズが入れ替わるので、時代ごとのトレンドがリアルタイムで反映されているところではないでしょうか。人気が出れば同じ世界観で何年でも連載を続けられる漫画とは、そこが大きく違う部分ですね。
例えば、『ハリー・ポッター』の映画がヒットしていた時期に『魔法戦隊マジレンジャー』が生まれたり、人工知能が身近な存在になってきたら『仮面ライダーゼロワン』が放送されたり。今このテーマを扱う必然性みたいなものがどの作品からも感じられますし、それがリアルタイムでニチアサを追い続ける理由にもなっていると思います。
──放送中の『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』も、史上初めて男性がピンク戦士だったり、変身後の身長にも大きく差があったりと、今の時代に合わせて「多様性」を意識している印象があります。
猫にゃん 男の子やアンドロイドもプリキュアになる時代ですし、特撮も負けてられないぞって思ったのかもしれませんね。
猫にゃん 一応アイデアはあったんですけど、きららで特撮オタクネタの漫画は絶対描けないだろうと思っていたので、心の奥底に封印していました。だから、担当さんから「特撮ものを描きませんか?」とお話をいただいたときは本当にびっくりしましたね。
──担当さんの発案だったんですか! 猫にゃんさんの特撮好きは読者の間でも有名なので、てっきりご本人から言い出されたのかと……。
担当編集 今のきららは、アニメ化などメディアミックスを視野に入れた作品づくりをしているので、映像映えする題材として「特撮」はずっと候補の中にありました。猫にゃん先生ほどではないですけど、私も特撮が好きですし。
それから、猫にゃん先生には本作の前に『キャットアンドチョコレート』という読み切りを描いてもらったのですが、いい意味でキャラが濃くてコテコテのギャグ漫画だったんですよ。特撮もこだわりの強いファンがいる濃いコンテンツなので、きっと良い作品を生み出してくれるだろうと期待を込めてオファーしました。
猫にゃん 私はむしろ、特撮ときららって本質の部分では似ているとすら思っています。この場合の「特撮」はもちろん「ニチアサ特撮」のことですけど、ニチアサときらら両方好きという方も多いですし、ファン層も近いんじゃないかなと。
──具体的にどういったところが似ているんでしょう?
猫にゃん 端的にいうと「パブリックイメージが固定されていること」「そのイメージを受け入れつつも常に新しい挑戦を続けていること」ではないでしょうか。
きららといえば女子高生4〜5人の学園ものという印象が強いですけど、実際はシリアスなストーリーの作品もあるし、ギャグに特化した作品もありますよね。そしてニチアサも、「ヒーローに変身して悪と戦う」という部分は同じでも、そこに至るまでの過程は作品ごとに全然違う。
──一見、どれも同じようですが、知れば知るほど作品ごとの特色がわかってきて、それゆえに中毒性があるわけですね。
猫にゃん だけど、既存のイメージを壊すだけじゃなくて、どの作品も「きらららしさ」「ライダー・戦隊らしさ」はちゃんと残している。連綿と受け継がれてきたブランドは大事にしつつ、その上で過去の作品にない革新的な要素を取り入れるという難しい挑戦を続けているところが、きららとニチアサに共通するマインドだと感じています。
──『ニチ以』の作中にはライダー作品のセリフがよく出てきますが、これは意識的に入れているんでしょうか?
猫にゃん そうですね。私自身もTwitterでよくネットスラングを使いますし、特撮研の彼女たちもオタクなので、たぶん日常会話の中で特撮ネタを自然と使っているんじゃないかなと。 ──元ネタを知っている読者は「あの作品のセリフだ」とわかって嬉しいですし、逆にニチアサに詳しくない読者が元ネタを調べるために、作品を観るきっかけにもなりそうです。
猫にゃん 内輪向けの漫画にはあまりしたくなくて、どちらかといえば、ニチアサを知らない読者にその面白さを伝えるために描いているところがあります。
だからパロディだと気づかずに読んでも楽しめるようにと心がけていますし、『ニチ以』を読んで実際にニチアサも観てみようと思う方が増えてくれたら嬉しいですね。
そんなニチアサを題材にした4コマ漫画『ニチアサ以外はやってます!』が、芳文社の『まんがタイムきららキャラット』で連載中だ。 かっこいいものに憧れる主人公・海城あかねは、ひょんなことから特撮研(特撮作品研究部)に入部。タイトルの通り、ニチアサを観る時間以外はディープな特撮トークを繰り広げる部員たちに感化され、あかねも特撮沼に落ちていく。
ヒーローに変身して悪と戦う「ニチアサ」と、女の子の等身大の日常を描く「きらら」。一見正反対のジャンルのように思えるが、作者の猫にゃんさんによると「ニチアサときららは本質的な部分で似ている」のだという。
その真意を確かめるべく、3月25日に単行本1巻が発売されたばかりの猫にゃんさんに話を聞いた(最後にはサイン本プレゼントも!)。
取材・文:ましろ 編集:恩田雄多
※「ニチアサ」にはプリキュアなども含まれますが、本記事ではスーパー戦隊および仮面ライダーの特撮作品を指しています。
目次
一度は離れたニチアサ “中2”と『鎧武』で再び沼に
──『ニチアサ以外はやってます!』(以下『ニチ以』)は特撮をテーマにしているということで、作品についてはもちろん、特撮全般の話もうかがえればと思います。猫にゃん よろしくお願いします。ただ、ウルトラマンやゴジラなどももちろん観ていますけど、特撮作品すべてを網羅しているわけではないので、今回は基本的にニチアサ特撮のみについて語ることにさせてください。私が「特撮」と言ったときは「ニチアサの特撮のことだな」と思っていただければ。どうかお手柔らかに。
──ひとくちに「特撮」といっても範囲が広いですからね。早速ですが、猫にゃんさんが最初に観たニチアサ作品は何でしたか?
猫にゃん 記憶にあるのは、3歳の頃に放送していた『仮面ライダー555』と『爆竜戦隊アバレンジャー』でしょうか。自分の意思で観はじめたのではなく、親に「これでも観てなさい」という感じで、そこから自然とニチアサを観るようになりました。
──自分も幼少期は『鳥人戦隊ジェットマン』を観ていた気がしますが、猫にゃんさんと違っていつの間にか戦隊ものから離れてしまいました。
猫にゃん 私もそうだったんですよ。『仮面ライダーディケイド』あたりまでは毎週観ていたんですが、小学校高学年にもなると何となく観るのが子どもっぽいと思うようになってしまって。まったく観ないか、観たり観なかったりという時期が数年続きました。
だけど中学に進学して、親戚の子どもの面倒をみるようになり、その子の付き添いでニチアサに触れる機会が増えたんです。それで中学2年生のとき放送していたのが、虚淵玄さんが脚本を担当した『仮面ライダー鎧武』なんですけど……。私も“中2”らしく、そういう作品が好きな時期がありまして。
──多くの人が一度は通る道だと思います。
猫にゃん 『魔法少女まどか☆マギカ』も大好きでしたし、中学2年という多感な時期に虚淵ワールドのライダーを正面から食らってしまい、またニチアサ沼に戻ってきました。
そのあとは、離れていた期間の作品を遡って観たり、「東映特撮ファンクラブ」に入会してからは自分が生まれる前の作品も観るようになりましたね。「東映特撮ファンクラブ」おすすめです!
──猫にゃんさんが考える「ニチアサ」の魅力は何だと思いますか?
猫にゃん これは東映の白倉伸一郎さん(「仮面ライダー」「スーパー戦隊」のプロデューサー)がおっしゃっていたことでもあるのですが、1年で必ずシリーズが入れ替わるので、時代ごとのトレンドがリアルタイムで反映されているところではないでしょうか。人気が出れば同じ世界観で何年でも連載を続けられる漫画とは、そこが大きく違う部分ですね。
例えば、『ハリー・ポッター』の映画がヒットしていた時期に『魔法戦隊マジレンジャー』が生まれたり、人工知能が身近な存在になってきたら『仮面ライダーゼロワン』が放送されたり。今このテーマを扱う必然性みたいなものがどの作品からも感じられますし、それがリアルタイムでニチアサを追い続ける理由にもなっていると思います。
──放送中の『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』も、史上初めて男性がピンク戦士だったり、変身後の身長にも大きく差があったりと、今の時代に合わせて「多様性」を意識している印象があります。
猫にゃん 男の子やアンドロイドもプリキュアになる時代ですし、特撮も負けてられないぞって思ったのかもしれませんね。
イメージを更新してきた、ニチアサときらら
──特撮マンガを描きたいという気持ちは昔からあったんですか?猫にゃん 一応アイデアはあったんですけど、きららで特撮オタクネタの漫画は絶対描けないだろうと思っていたので、心の奥底に封印していました。だから、担当さんから「特撮ものを描きませんか?」とお話をいただいたときは本当にびっくりしましたね。
──担当さんの発案だったんですか! 猫にゃんさんの特撮好きは読者の間でも有名なので、てっきりご本人から言い出されたのかと……。
担当編集 今のきららは、アニメ化などメディアミックスを視野に入れた作品づくりをしているので、映像映えする題材として「特撮」はずっと候補の中にありました。猫にゃん先生ほどではないですけど、私も特撮が好きですし。
それから、猫にゃん先生には本作の前に『キャットアンドチョコレート』という読み切りを描いてもらったのですが、いい意味でキャラが濃くてコテコテのギャグ漫画だったんですよ。特撮もこだわりの強いファンがいる濃いコンテンツなので、きっと良い作品を生み出してくれるだろうと期待を込めてオファーしました。
──「特撮」と「きらら」。一見ミスマッチのような気がしますが、きららで特撮漫画を描くことに対して不安はありませんでしたか?【きららキャラット10月号】初登場ゲスト! 猫にゃん先生「キャットアンドチョコレート」は、堕落した女子高生・千夜子と、飼い猫から化け猫へと進化したにゃー子による、「学校に行くか、行かないか」の壮絶(?)バトル! 冒頭からこの下衆さ、筋金入りなのです! pic.twitter.com/msKKkuJ5UI
— まんがタイムきらら編集部 (@mangatimekirara) August 27, 2020
猫にゃん 私はむしろ、特撮ときららって本質の部分では似ているとすら思っています。この場合の「特撮」はもちろん「ニチアサ特撮」のことですけど、ニチアサときらら両方好きという方も多いですし、ファン層も近いんじゃないかなと。
──具体的にどういったところが似ているんでしょう?
猫にゃん 端的にいうと「パブリックイメージが固定されていること」「そのイメージを受け入れつつも常に新しい挑戦を続けていること」ではないでしょうか。
きららといえば女子高生4〜5人の学園ものという印象が強いですけど、実際はシリアスなストーリーの作品もあるし、ギャグに特化した作品もありますよね。そしてニチアサも、「ヒーローに変身して悪と戦う」という部分は同じでも、そこに至るまでの過程は作品ごとに全然違う。
──一見、どれも同じようですが、知れば知るほど作品ごとの特色がわかってきて、それゆえに中毒性があるわけですね。
猫にゃん だけど、既存のイメージを壊すだけじゃなくて、どの作品も「きらららしさ」「ライダー・戦隊らしさ」はちゃんと残している。連綿と受け継がれてきたブランドは大事にしつつ、その上で過去の作品にない革新的な要素を取り入れるという難しい挑戦を続けているところが、きららとニチアサに共通するマインドだと感じています。
──『ニチ以』の作中にはライダー作品のセリフがよく出てきますが、これは意識的に入れているんでしょうか?
猫にゃん そうですね。私自身もTwitterでよくネットスラングを使いますし、特撮研の彼女たちもオタクなので、たぶん日常会話の中で特撮ネタを自然と使っているんじゃないかなと。 ──元ネタを知っている読者は「あの作品のセリフだ」とわかって嬉しいですし、逆にニチアサに詳しくない読者が元ネタを調べるために、作品を観るきっかけにもなりそうです。
猫にゃん 内輪向けの漫画にはあまりしたくなくて、どちらかといえば、ニチアサを知らない読者にその面白さを伝えるために描いているところがあります。
だからパロディだと気づかずに読んでも楽しめるようにと心がけていますし、『ニチ以』を読んで実際にニチアサも観てみようと思う方が増えてくれたら嬉しいですね。
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