「スマブラ」プロゲーマー keptインタビュー 配信のためならプライドも捨てる

目の肥えた視聴者が増えてきている

──配信のためには様々な機材が必要になりますよね。活動当初はどのように機材を揃えたのでしょう?

kept 最初は最低限の機材を揃えなきゃいけないと思って、とはいえ「とりあえずあればいいや精神」で買うよりは、配信活動をしていたプレイヤーの機材水準を参考にしつつ、キャプチャーボード・照明・カメラ・マイクを買いました。

──特に重要だと思う機材はどれでしょうか?

kept やっぱり配信ではカメラとマイクの重要度が高いです。

昔ならWebカメラだけでも珍しかったし、マイクの音質もそこまで気になりませんでした。けど今って、人気の配信者はみんな機材もこだわっていますよね。

配信文化が根付いてきた今、配信を一度も見たことがない人ってほとんどいないと思うんです。それだけ目の肥えた視聴者が増えてきている。なので、マイクとカメラには惜しまず投資していい部分じゃないかなと。

カメラからの映像を全画面で映して雑談配信をすると、視聴者から機材の良さについてコメントされることも多いです。それだけ多くの配信を見て、目が肥えてきているんだと思います。

──現在の配信環境について悩んでいることはありますか?

kept ゆくゆくは配信部屋がある家に住めると、いろいろと都合がいいんだろうなとは思いますね。

今は生活空間にelgatoの「Green Screen」を立てて配信しているのですが、クロマキーによる背景透過がないと生活感がすごすぎて……(笑)。

Green Screen:keptさんは「Green Screen」を使うまで壁一面に緑の布を貼っていたが、部屋の景観を相当損ねてしまっていたという

kept けどこれだったら使わないときは簡単に持ち運べる。配信でカメラの位置を動かしたいときにも柔軟に対応できます。

あと、クロマキー背景布はシワがつくと光の当たり方が変わって画面に影響が出てしまいますが、丈夫な硬い素材なのでピンと張れる。そういうのはだいたいしまえないんですけど、これは収納までできるんですよ。

片手でスルスルと収納しはじめるkeptさん

配信中はワンボタンで操作が済むことが重要

──「Green Screen」のほかにも、今回は実際にelgato製品を使っていただいています。それぞれの使用感を教えてください。

kept 「Key Light」と「Stream Deck XL」も便利でインパクトが大きかったですね。

「Key Light」はスマホでON/OFF・光量・色温度が操作できるんです。物理スイッチもあるので、手を伸ばせば消せるんですけど、配信中でも離れたところから操作できるのは大きいです。

Key Light:「正直、完全に舐めていた」と話すkeptさん。その日の気分で照明を手軽に変えられる点も重宝しているそう

Wave Panels:ちなみに壁に取り付けられたこちらの吸音材もelgato製品。それぞれが六角形として独立するため自由に組み合わせられる

kept 配信する身としては、その日の天候に応じて、光の強さや色を1%単位で調整できるのがめちゃくちゃありがたいですね。クロマキー合成って光の加減がとても繊細で、緑の映り方が一定じゃないと人の姿だけを綺麗に抜いてくれないんですよ。

以前使っていた照明は単色で強弱だけしか調整できなかったので、配信時は必ずカーテンを閉めていました。でも今はいちいちカーテンの開き具合を気にする必要もなく、すごく助かっています。

──「Stream Deck XL」はいかがでしょうか?

Stream Deck XL:「正直僕はまだ全部を使いこなせてないですけど、個人的にもかなり可能性を感じてますね」と、今回のelgato製品の中でも随一のお気に入り

kept 言わされてるかのような宣伝じみたコメントになっちゃうんですけど、「Stream Deck XL」はもう本当にめちゃくちゃ便利で優れものです(笑)! 自分もまだかなり持て余しているんですけど。

これはボタンそれぞれにいろいろなショートカットキーを割り当てることができるんです。例えば、配信中に待機画面からオープニング映像へ切り替えるときは、視聴者が集まったタイミングを見計らってボタンひとつで実行できる。本来マウスでやっていた操作がかなりスマートになりました。

ほかにも配信中にBGMを変えたり、ゲーム画面を撮ってリプレイを流すこともできます。いいプレイや面白いプレイが出たとき、録画ボタンを押せば15秒さかのぼって録画してくれる。

「数秒後に○○を実行する」といったショートカットも設定可能で、ファイル生成の時間を考慮した操作も割り当てられる

kept 「Stream Deck XL」だけでかなりしゃべってますけど大丈夫です……?

──それだけ気に入っているということだと思いますので大丈夫です!

kept よかったです(笑)。簡単だから、操作に意識を集中させることなく、配信を視聴者と一緒に楽しめるんですよ。雑談中に話してる内容が変わった瞬間にパッとBGMを切り替えるとか、やるたびに視聴者からもリアクションがあるんですよ。

配信に必要な複数のソフトの立ち上げも、ショートカットを割り当てさえすれば一発で同時起動できるので、作業がかなり効率的になるし、煩わしさからも解消されるし、何より楽しいです。

──重要度の高い機材として挙げられていたマイクの印象も教えてください。

kept もともと同価格帯の別のマイクを持っていたんですけど、視聴者に聴き比べてもらったら、elgatoの「Wave 3」の方がクリアに聴こえるようでした。

Wave 3:すっきりとしたサイズ感と洗練された見た目も、無駄を省いたデザインが好印象

──elgatoは配信に必要な機材を一式揃えられるという特徴がありますが、デザインの統一性は配信者としても意識するものなのでしょうか?

kept ひとつのブランドで統一されているとシンプルにかっこいいですよね。配信する側としても気分がいいしモチベーションも上がる。

それに、配信環境を映したときに、パッと見で「かっこいい」「憧れる」と感じてもらえるのは、配信者にとってすごく大事なことだと思います。

HD60S+:コンパクトなサイズ感ながら必要な機能をしっかり押さえている

kept ちなみに、ゲーム配信で必要なキャプチャーボードについても、elgatoの「HD60S+」は高性能だと感じました。

パススルー出力機能が付いていて、ゲーム画面を配信上に取り込みつつ、自分が見てプレイするモニターに出力できます。こういう機材って、たいていどちらかの画質が落ちたり、遅延が起きて対戦に支障をきたしたりするんですけど、そういうこともないですね。

実は「HD60S+」以外にも、オフラインでの対戦会用に「4K60S+」というキャプチャーボードを持ち込んでいます。

4K60S+:オフラインでの対戦会時に使用するというもう1つのキャプチャーボード

kept 自分のプレイを分析するときに、「あれ? 今のってなんで相手の技を食らってしまったんだろう?」と少し戻して確認したい場合が多いんです。

でも「スマブラ」のゲーム内で実装されているリプレイ機能では、一手間かけて動画にしないと巻き戻し・早送りができない。このキャプチャーボードがあると、PCがなくても簡単に録画して見返せるので重宝しています。
Elgato製品で最強の配信環境を作ってみた!
elgato製品については、keptさんのYouTubeチャンネルでも紹介。同社製品が10%オフになるクーポンも配布されているので、こちらもチェックしたい。

完成したからこそ、競技の見応えは進化していく

──機材の充実を経た今後のkeptさん自身のお話もうかがいたいです。先日、『スマブラSP』最後のダウンロードコンテンツ(DLC)としてソラが配信されました。一方で、プロプレイヤーや配信者にとっては、ゲームとしてのアップデートがなくなることに対する不安などもあるのではないでしょうか?

kept タイトルそのものの露出が少なるかもしれないということに対して、寂しさや不安がないと言えば嘘になります。

同時に、自分の番組でやってきたような、タイトルありきではなく「人」を見てもらうような活動が、より重要になってくるのかなとも感じます。 kept 一方で、アップデートされなくなるということは『スマブラSP』が完成したということでもあるので、競技者としてはここからが本番かなと。

これまでの競技シーンでは、強いキャラがアップデートで弱くなる可能性を考慮する必要があった。でも『スマブラSP』のバージョンが固定されることで、プレイヤーたちの対策や技術も、今まで以上に向上していくと思うんですよね。

ライト層からしたら新キャラや強化されたキャラが活躍するのが楽しいと思うんですけど、競技シーンにおいては技術的な練度が上がっていくので、それに伴って見応えは進化していく。そういう側面では、本当に面白くなると思ってるので、そこは楽しみにしてもらいたいです。

──今後『スマブラSP』を盛り上げていくために、プロプレイヤー/配信者として何が必要だと思いますか?

kept そこは配信者同士でもよく話すことではあるんですよね。特にシーンをより広げるという意味では、その外にいる人たちの興味・関心を引かなきゃいけない。僕ら配信者はもちろん、視聴者もその重要性を感じています。

「EVO」でアメリカに行ったとき、会場近くのスポーツバーに立ち寄ったんです。お店のモニターでバスケとアメフト、そして「EVO」が流れている。そのインパクトすごかったんですよね。「これだけ日常に溶け込んでいるんだ!」って。

もちろん日本でそうなるまでには時間がかかると思います。ただ最近だと、僕も学園祭や学生主催の大会に、ゲストとして出る機会が増えてきています。これは未来を見据えて種を蒔く意味合いが大きくて、「スマブラ」の魅力を伝えたり「競技者ってかっこいいな」って思ってもらったりすることを大事にしているんです。

「できるだけ長く配信活動をやっていきたい」

──未来という意味では、徐々にオフラインの競技シーンが復活していくと思います。今後の目標を教えてください。

kept そうですね、競技者としてはまずそこで結果を出したいです。

以前は、コロナ禍の影響で海外に行けるのも数年先なんじゃないかなっていう感触でした。でも、最近の情勢を見ていると、海外大会に参加しているプレイヤーもいますし、自分も数ヶ月後には行けるのかなという印象です。

世界的な海外大会でトップ8に残るという目標には、今後も変わらずに挑戦していきたいです。

──最後に、今後e-Sportsや配信文化の盛り上がりに伴い、そこで活躍する人たちのセカンドキャリアも注目されると思います。keptさんは自身の将来をどのように考えていますか?

kept セカンドキャリアの話は考えなくてはならないトピックスとしてありますよね。僕自身は、まだ明確な答えを持っていない、というのが正直なところです。ただ一方で、今後シーンが成熟されていくに従って、そういった部分においても新たな選択肢が出てくるのではないかとも思います。

個人的には、今みたいな活動をできるだけ長くやっていきたいですね。

最近ふと思ったんですけど、Nintendo Directで任天堂の新作ソフトの情報が告知される映像を視聴者と見て、「このゲームをやりたいね」と言い合っているのがもう本当に楽しいんですよ。

だから、まずは今シーンのためにできることや、僕自身が楽しいと感じる活動を頑張って、その中で10年・20年・30年先の自分を考えていきたいです。
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プロゲーマー/配信者

プロゲーミングチーム・Rush Gaming所属。2019年6月より独立し、個人で『スマブラSP』などのゲーム競技選手活動及びゲーム配信活動を行うゲーマー。2021年11月時点でTwitterフォロワー約4万人、YouTubeチャンネルは約6万人、最新版の『大乱闘スマッシュブラザーズ SPECIAL』では日本ランキング16位と活躍中。

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・Mildom

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