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「スマブラ」プロゲーマー keptインタビュー 配信のためならプライドも捨てる

「スマブラ」プロゲーマー keptインタビュー 配信のためならプライドも捨てる

keptさんインタビュー

POPなポイントを3行で

  • プロゲーマー/配信者・keptインタビュー
  • 『スマブラSP』全一むらびと使い
  • 競技者と配信者のバランス感覚
YouTubeやTwitchなどを使った配信が、個人や企業、大会・イベントを問わず、日常的に数多く行われ、文化としても急速な勢いで成長している。

プロゲーミングチーム・Rush Gamingに所属するkept(ケプト)さんもそんな配信を生業にする一人。

大乱闘スマッシュブラザーズ SPECIAL』(通称・スマブラSP)のプロゲーマーとして大会に出場するだけでなく、個人でも多くの視聴者を集める人気配信者だ。

2019年6月に会社員から独立し専業(※)「スマブラ」プレイヤーとなった彼は、生活のためにプレイする配信者であると同時に、強くなるためにプレイする競技者という2つの側面を併せ持つ。

勝たなければならないプロと、勝敗を超えてエンターテインメントを提供する配信者。両者のスタンスの隔たりの狭間で、keptさんが語る競技者・エンターテイナーのプロとしての振る舞い、セカンドキャリア、使用機材へのこだわりとは。

取材・文:ゆがみん 編集:都築陵佑 写真:宇佐美亮
※プロ契約の有無に関わらず、配信活動で生計を立てているプレイヤーを指す

目次

海外大会の熱気と帰路のわだかまり

──改めてにはなりますが、2019年6月に会社員を辞め、兼業から専業「スマブラ」プレイヤーになった経緯からうかがえればと思います。

kept 専業を目指すきっかけは、前作『大乱闘スマッシュブラザーズ for Wii U』で世界最大級の格闘ゲーム大会「EVO」に参加するために、初めて海外に行ったことです。

Nintendo Switchで「スマブラ」の次回作が出ると発表があり、『スマブラ for Wii U』の最後の大会に向けて頑張っていた頃でした。

それまで自分の中で、海外大会は国内のトップオブトップのプレイヤーが参加する大会という位置付けだったんです。

だから「もう少し強くなってからかな」とのんきに構えていたんですけど、一度自分の集大成としてどれほど通用するのか試したくなって「EVO」に参加しました。 ──「EVO」への参加が自身にとって大きな転機になったと。

kept そこまでたいした成果はあげられなかったんですけど、ステージ上の配信台で試合する機会をもらえたんです。トーナメント上位ではない、注目度も高くない自分の試合でも、会場の熱気や国内の「スマブラ」ファンからの応援がものすごくて。

何より最終日、メインステージでのトップ8の試合を見て、ここで活躍するのが競技活動の目標になるぐらい衝撃を受けました

けれど帰りの飛行機の中で、隣に座っていた専業プレイヤーが次の海外大会の予定を立てているのに対し、サラリーマンの自分は有給や交通費の工面を踏まえて「次の大会への参加は厳しいかな」と考えていた。その状況にすごくモヤモヤしたんです。

メインステージのトップ8を目標にするなら今の働き方じゃ駄目だと思い、あばだんごさんのような専業プレイヤーの先駆者を参考にしながら、「スマブラ」で何とか生活費を稼ぎつつ海外遠征を実現できないかと配信をはじめました。

──反響が大きかった退職エントリでも、海外大会に自由に参加するため配信をはじめたと、経緯を説明されていましたね。 kept そもそも自己評価として、スマブラプレイヤーの中でも配信に向いている方かなという自負がありました。

ゲーム実況ではプレイが上手いのはもちろん、しゃべりのスキルも重要だと思いますが、自分は話をするのが好きだし、目標のためには何でもする覚悟があったんです。

──「何でもする覚悟」とは具体的にどういうものでしょうか?

kept 配信のためなら競技者としてのプライドを捨てることですね。例えば「むらびと全一プレイヤー」(※)として名乗ること。

実は、前作『スマブラ for Wii U』で一番強いむらびと使いが『スマブラSP』で開発協力に回ったことで、自分がそのキャラで世界最強のプレイヤーと呼ばれるようになったんですよ。
世界最強むらびと使いkeptの撃墜集【スマブラSP】
kept けどそれって、競技者のプライドとしては「俺が最強だ!」って言いづらいところなんですよね。トップがいなくなって繰り上がっただけなので。

けど逆に、配信者としてはチャンスだと割り切るようにしました。やっぱりキャッチーな打ち出し方ではありますから。

※○○全一プレイヤー:そのキャラクターを使って最も高い戦績を残したプレイヤー。keptさんは『どうぶつの森』主人公のむらびとを使う。

競技者と配信者のバランス

──過去のインタビューでは「生活をしていくための『スマブラ』」と「強くなるための『スマブラ』」の違いに触れていました。配信する上で、エンタメとしてより面白くするために心がけていることはありますか?

kept さっきも言った通り、配信者として割り切った考え方が重要ですね。プライドが原因でやることの範囲を狭めてしまうと、活動の幅も狭まってしまう。

もうひとつは常に視聴者のニーズを考えて振る舞うことです。例えば、オンラインの大会で負けたとき「遅延のないオフラインだったら絶対勝ってるぞ!」と思ったとしても、そんな大会を貶めるような発言を視聴者は聞きたくないですよね。

そこはグッとこらえて、視聴者が求めていない発言はなるべく出さないようにしています。配信者としても視聴者からのリアルタイムなリアクションが楽しいので、それを妨げるような振る舞いは気をつけたいところです。

──勝ち負けにこだわるプロゲーマーと勝ち負けに関わらずエンタメ性を追求する配信者とでは、どうしても衝突する面があるのではないでしょうか?

kept それはかなり難しい問題で、配信活動をしている多くのプレイヤーがぶつかっていると思います。

ただ最近になって気づいたのは「競技者としての配信活動」を見たい層もいるということです。 kept 配信活動って、単純に面白おかしくリアクションする方が相性がいいように思いますよね。けど視聴者の中には、競技者として試合に負けたあと、頭をひねって試行錯誤する姿を見たい人もいるんです。その瞬間を共有するからこそ、大会の応援にも熱が入る。

僕自身、どこまで見せるかは日々悩んでいるんですけど、そういう面を見てもらうのも、大会で応援してくれる人を増やすためには重要なのかなと思ってます。

なので、エンタメとして配信するときはガチで悔しがることはないように、真剣に取り組んでいるときはきちんとその姿勢を見せる。ごっちゃにならないことを意識しています……って裏側まで正直に話すと、なんかネタバレみたいになっちゃいますけど(笑)。

ゲーム以外にプレイヤー自身の魅力を掘り下げる

──keptさんは自身の配信活動のほかにも、ゲームメディア・Smashlog(2020年10月に終了)での執筆や動画への出演など、「スマブラ」シーンの中心で活躍されていました。

kept これまでにも攻略記事を書く媒体はたくさんあったと思うんですけど、Smashlogはガチなプレイヤーが顔を出してやるところに新しさがあったのかなと思います。

「スマブラ」について記事を書いたり動画でしゃべったりすることを通して、そのプレイヤー自身にも魅力を感じてもらえる。そんな媒体で自分はゲストを呼んでその人となりを深掘りする番組『ケプトの定時退社』をやってました。
【スマブラSP】第40回「ケプトの定時退社」【ゲスト:宇野昌磨選手】
kept ゲストは有名プレイヤーから、知名度的にはこれからというプレイヤー、さらにはフィギュアスケートの宇野昌磨選手まで。

僕らがいるシーンは、実力や配信者のスキルがあっても、大会で結果を出すとかそういうきっかけがないと、知名度が伸びないケースが結構あるんです。『ケプトの定時退社』はこんなに魅力のある人がいるんだよと、「スマブラ」プレイヤーの認知度にも貢献していきたいという番組でした。
【ダイジェスト】東京2020オリンピック【ぱせりと休日出勤】
kept 続く『ぱせりと休日出勤』も、自分とぱせりまん選手で「スマブラ」以外のゲームをやる、「『スマブラ』じゃない活動もこれだけ面白いんだよ」っていうのを見せる企画でした。

やっぱり「スマブラ」だけを見てもらうとなると、もしゲームの人気がなくなったときに──「スマブラ」にそんなことがあるのかわからないですけど──本当に痛い目を見ますから。

──自身がそこまで考えた企画だっただけに、Smashlogの休止の際には大きな影響があったんではないでしょうか?

kept Smashlog自体にファンが付いていたのもあって「残念だね」と言ってくれる人がたくさんいました。改めてSmashlogって、「スマブラ」シーンに置いて重要な立ち位置だったんだなと思いましたね。

今、毎週更新している『けぷぱせラジオ』も、Smashlogでの発信ができなくなったときに「代わり何かやりたい」と思ったのがきっかけではじまったものです。
スマブラの宅オフを検討している君へ。【けぷぱせラジオ】
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