「メタバース構想」って結局なんなの? DJ RIOが語るクリエイター経済圏

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「メタバースは寡占化されにくい」並存するn個の世界

──VR空間でいうと、2020年6月「REALITY」はバーチャルSNS「cluster」と共通のアバターを使うことができるアバター連携機能をリリースしました。「REALITY」は今後、各社のメタバースと連携していくことを想定しているのでしょうか?

DJ RIO 他サービスとの連携もしっかりと選択的にやっていきたいと考えています。というのも、「cluster」との連携機能によって、「REALITY」ユーザーは"友達とお出かけする場所"ができたんです。「REALITY」は毎週水曜午後に定期メンテナンスを行っていますが、その時間帯に「REALITY」ユーザーは「cluster」に集まってその世界を観光したりする習慣が出来ているようです。

連携機能によって「REALITY」ユーザーには新しい楽しみを提供できて、clusterさんにとっては集客の一部になっていたりします。お互いのメリットになりますので、今後も連携先は増やしていきたいです。
バーチャルSNS「cluster」を楽しもう!
──例えば自作のアバターを使えるようにするなど、「REALITY」に外部からアバターを持ち込むサービスなども今後は予定されていますか? 

DJ RIO 現状、アバターのオープン化をしていない理由はいくつかあります。

まずひとつは、動作保証ができないので、サポートコストが非常に上がってしまうという課題です。次に、自作データを持ち込めるようになった場合は、著作権違反や公序良俗に反するアバターに対する監視が必要となってきます。

「REALITY」では今年5月に「サンリオキャラクターズ」さんとコラボするなど、IPホルダーとも協業しているので、オープン化して違反コンテンツが出てきたら厳重に取り締まらなくてはいけません。これも、相当のコストがかかってしまいます。

あとは、いろいろなサービスに持っていけるような自作のアバターデータを持っているユーザーはまだ絶対数が少ないのも理由のひとつです。 ──「cluster」との連携も含め、DJ RIOさんは未来像としていくつものメタバースが並存するイメージをお持ちだと感じました。

DJ RIO すごく重要なポイントとして、僕は「メタバースは寡占化されにくい」と思っています。

例えばSNSですら、Twitter、LINE、Instagram、TikTokといったように寡占状態にはなっておらず、多くのサービスが並行して存在しています。みんながそれぞれのSNSで違う使い方をしているのと同じように、メタバースもその用途や空気感、自分が所属したいコミュニティによって使い分けられていくはずです。

SNSは、デザイン性や世界観というよりもツール的な色合いが強いですが、メタバースでは、アバターやワールド(空間)のデザイン・世界観といった要素が見た目にも色濃く反映されます。そこでは、「REALITY」のような日本アニメスタイルだったり、もっとカートゥーンっぽいデザイン、よりフォトリアルな空間など、様々な趣味嗜好に合わせた世界観のメタバースが並存しうるはずです。

そうやって多くのメタバースが並存する中で、「REALITY」がメジャーなメタバースのひとつになりたいと考えています。

ブロックチェーン型経済がメタバースに与える影響

──冒頭、今後の「REALITY」発展の方向性として「①アバターを通じたライブコミュニケーション」を挙げていました。ライブ配信自体は世に浸透しつつありますが、メタバースにどのような影響を与えるのでしょうか?

DJ RIO いわゆる"ライブ配信"とメタバースにおける"ライブコミュニケーション"は、似ているようで必ずしも同じではありません。

例えば、ビデオを介したコミュニケーションでも、クローズドな複数人で会話をする「ZOOM」と、1人が不特定多数に向けて発信するライブ配信である「17 live」や「SHOWROOM」、あるいはVTuberでは、話すトピックやコミュニケーションの作法が違います。

「REALITY」も、"ライブ配信"を通じて1人のパフォーマーが何かをして投げ銭を得ていく従来の使われ方もあれば、ゲームをやりながらダベるだけの"ライブコミュニケーション"としての使われ方もしています。どちらか一方に特化するのではなく、両方の機能を備えていることが大事だと考えています。
「REALITY FESTIVAL3 OPENING SPECIAL KMNZ」2019年8月12日放送 #KMNZ
──REALITYの方向性として「3.メタバース内で実経済としてのお金を稼ぐことができるクリエイターエコノミー」を掲げています。現在は仮想通貨やNFT(非代替性トークン)といったブロックチェーン技術による新しい経済にも非常に注目が集まっていますね。

DJ RIO まず、僕はメタバースをすごくインターネットネイティブな世界だと思っているんです。

アバターというアイデンティティから、その世界内での部屋や持ち物、あるいはそこで生じた人間関係まで、すべてがデジタルで完結している。
しかし、現在の実経済はまだまだアナログです。紙幣や硬貨が流通しているように、お金を下ろすため銀行に行かなきゃいけないし、使用履歴が残らずにトレーサビリティ(追跡性)がなかったりする。

NFTやブロックチェーン技術の本質的な価値は、最初からデジタルでつくられて、すべての取引がトレーサブル(追跡可能)なインターネットネイティブの金融システムを可能にしたことです。これはすごいイノベーションだと思います。

この金融システムを使うことで、メタバース内で行われる創作活動や販売行為、あるいは何かのサービス業を営むといった様々な経済活動を金銭価値に変換することが可能になります。 ──ネット上にブロックチェーン型のデジタル金融システムが存在していて、そこに各メタバースが接続することでエコノミー(経済圏)の自立が可能になる、というわけですね。

DJ RIO アバターから資産データまで、ブロックチェーン型の金融システムにつながっていろんなメタバースがすべて相互接続性のある世界こそが、僕を含めた古来からのインターネット原理主義者の理想像だとは思うんです。

ただ、自社メタバースでの囲い込みを求める会社も多いだろうし、先ほど言ったアバターの問題のように、中央集権的な機関による監視や保護がまったく存在しない世界というのは、実は多くの人にとってはちょっと住みづらい世界だと思うんです。

なので、僕が想像しているメタバース時代の金融システム像としては、ある意味今の現実の金融システムと似ていて、各メタバースに中央銀行があってそれぞれがローカル通貨を発行しているものの、国際送金ネットワークや為替市場によって接続されているイメージです。

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