本書は1997年に刊行され2010年に増補版が出たクラシカルなノンフィクション『Altered State: The Story of Ecstasy Culture and Acid House』の日本語訳版で、1990年代に勃興した音楽ムーヴメント「レイヴ・カルチャー」の全貌が語られる。
著者は英国人ジャーナリスト・作家のマシュー・コリンさん。
BBCやアル・ジャジーラ、AFPで海外特派員を経験したのち、現在はバルカン調査報道ネットワークで編集者として勤務している。
あれは「特別な時代」以上の何かだったのだろうか? ドラッグ熱に浮かされた享楽主義に過ぎなかった? それとも、我々の多くがそう強く信じたがっているように、それ以上に重要な何かだったのか? アシッド・ハウスの誕生以来、「じゃああれは一体なんだったのか」の疑問は何度もしつこく繰り返されてきたし、本書はそれに対する幅広い回答のあれこれを含んでいる。そのいずれも必然的に個人的な視点に依るものであり、どれひとつとして決定的な回答ではない。もしかしたら、今にして思えば、あのとんでもない時代を実際に生き抜いただけで充分だったのだろう。共同体の全員と共に我を忘れるあれら歓喜の瞬間の数々を味わったこと、おそらくそれ自体が、我々にはあれ以上を望めない素晴らしい体験だったのかもしれない。(本文より)
音楽で朝まで踊り明かす「レイヴ」
レイヴは、1980年代後期の英国で起こった音楽ムーヴメントの一つ。ダンス音楽を夜通し流し続ける、野外での大規模な音楽イベントやパーティーのことを指し、当時の若者が新たなパーティ形式や音楽を追い求め、廃屋や農場などを利用したフリーパーティーを始めたのが起源とされている。
アシッド・ハウスやテクノなどは、レイヴを通じて世界に広まった代表的な音楽だ。
レイヴとドラッグの強い結びつき
当時、イギリスでは「エクスタシー」などの多幸系ドラッグが流行しており、レイヴとドラッグには強い結びつきがあった。これによりレイヴはドラッグが広範的に取り扱われる場であるという認識が濃くなり、当時の英国政府や警察はレイヴを危険視し法律で取り締まりを強化。
現在ではゲリラ的なフリーパーティーとしてのレイヴは減少し、商業的で大規模なダンス・フェスティバルとしてレイヴが定着。
日本では、90年代の小室哲哉さんとエイベックスによる「avex rave」が有名だ。
目次
前書き(長い歳月の後で)
序幕 八〇年代のとある晩
第1章 快楽のテクノロジー
第2章 サマー・オブ・ラヴ
第3章 マジカル・ミステリー・ツアー
第4章 東への旅
第5章 フリーキー・ダンシング
第6章 テクノ・トラヴェラーズ
第7章 都市のブルーズ
第8章 ケミカルな世代
謝辞
索引
脈々と受け継がれるレイヴの精神
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