『攻殻機動隊』素子になりたい──マネキンラップデュオ FEMMが初めて口を開く

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「解散」を想起させた直前の展開「Goodbye.......」の真意

──今回「FEMM 2.0」という次なるステップに向けた展開にはファンも驚いたと思います。YouTubeからすべてのMVが消され、「Goodbye.......」(現在は「Goodbye to FEMM1.0」)のテキストと動画のみが公開される──ファンの中には「解散してしまうのでは」と考えた人もいたのではないでしょうか?

LuLa 「Goodbye.......」という字面だけ見ると終わりなのかなって思ってしまうんですけど、実は「.......」の7文字分は「FEMM1.0」がちょうど入る文字数になっていて……ちょっとわかりづらかったかな(笑)。
Goodbye to FEMM1.0
RiRi 楽曲としてはおよそ1年ぶりのリリースだったので、私たちのことを100%思い出してもらうためのアイディアでした。「FEMMはここからガンガンやっていくからついてきてね!」って。

LuLa ファンの方をびっくりさせてしまったのは心苦しかったのですが、私たちにはどうしても必要な工程だったので。次のステップへ上がるための再起動中だから、ちょっと待っててねという気持ちでした。

──10月16日に新曲「Chewing Gum Cleaner」をリリースされ、2年ぶりのMVも公開(現在は非公開)。さらにはインパクト大のアーティスト写真も公開された直後の出来事だったので、中には「何が始まるんだ!?」と感じていた人もいたかもしれませんね。

RiRi そうだったらいいのですが……。でも実際のところ「Chewing Gum Cleaner」のMVは、2年前のワンマンライブ「DOLLHOUSE」で使ったセットで撮影した映像なんです。

いつ公開しようかと考えていたらタイミングを逃してしまい、結果的にずっと温めている状態に(笑)。アップデート前の1.0時代の曲だったので、私たちとしては2.0になる前にリリースしたい思いがありました。

本来は「男の子なんていらない」って歌なんです。でも「2020年の大掃除にFEMMが来てくれた!」というコメント以外に、「コロナなんていらない!」って意味に受け取ってくれたみたいで。予想外の反響をいただけたので、結果的にこのタイミングで発表できて良かったと思います。

──「解散」をほのめかすような展開でしたが、実際にそういった出来事や困難はこれまであったのでしょうか?

RiRi わかりやすい解散危機はありませんでした。でも、活動を続ける中ではもちろん行き詰まったり、思うように進まなかったり、「このままでいいのかな?」って不安に感じたりする場面はありました。

LuLa 街で人にちょっと意地悪なことをされて凹んだときもあったよね。

RiRi あったね。

LuLa でも、それは異質なものに対する恐怖心の表れだと思って、「まずは私たちを知ってもらうことが大切」と、より強く実感しました。

バーチャルインスタグラマーやVTuberも最初はそうだったように、徐々に受け入れられていきたいと思っています。当然、知らなくていいこともあっていいと思いますが、知らないを理由に跳ね返すのは違うかなって。お互いに知ろうとする努力を続けていきたいですね。

エッジの利いた曲とクリエイターから生まれた『404 Not Found』

『404 Not Found』

──11月20日(金)にリリースされた『404 Not Found』は、今まで以上にFEMMのダークな雰囲気が強調されていて、攻撃性の強いメッセージを含んだ作品が多いように感じます。

LuLa 意図的に「こういう曲でE.Pをつくろう」としたのではなく、たまたまエッジの利いた楽曲が集まった感じですね。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行によって、現状を励ますような、未来へ向けての希望を歌う明るい音楽がたくさん生まれたと思うんですよ。

それはもちろん必要だし、否定する気もありません。ただ「いま聴きたい音楽は明るい歌だけなのか?」って聞かれたら、私は違うと思っていて

いつまでこの状況が続くかわからない中で、不安な気持ちに共感したり、むしろそれに対するモヤモヤとした感情をさらけ出せるような楽曲も必要だと思うんですよね。

──FEMMにとってもコロナ禍が制作に与えたということですか?

RiRi 活動の中心だったライブができなくなってしまったのは、本当につらかったですね。とはいえ待っていても仕方がないので、空いた時間でたくさんスタジオに入って、新曲づくりに取り組んでいました。

11月6日に先行シングルとしてリリースされた『Level Up / Summer Dream』は、コロナ禍に制作したものなんです。

──その「Level Up」も収録されたアルバム『404 Not Found』の楽曲は、MVのクリエイティブも際立っています。特に印象的な「Peach」と「SIT DOWN」の制作経緯をうかがいたいです。

RiRi 「Peach」はイギリス在住でAphex TwinのビジュアルコラボレーターでもあるWeirdcoreさんがつくってくれました。

──楽曲はもちろん、どこかレトロさを感じさせるウェイトレスのようなCGアバターの動きが、強烈に印象に残りました。

RiRi ありがとうございます(笑)。自分の世界観を持っている方なので、内容は彼のクリエティビティーにお任せしました。彼がこの曲を聴いたときの心象風景と東京やFEMMのイメージが合わさって可視化されたようです。
FEMM - Peach(Music Video) Prod. Danny L Harle / Radical Hardcore Clique
RiRi 対して「Sit Down」のMVは、昔から一緒の作品をつくってきた最高のオーディオビジュアルチーム・BRDGがCGを手がけてくれた作品です。

可動式の巨大なLEDを複雑に組み合わせた照明を使って、ワンカットで撮影した映像なんですが、以前開催したライブでのパフォーマンスをMVとしてリリースした映像なんです。

あのパフォーマンスはすごく難しくて、リズムの取りづらい「カッカッカッチーン」みたいなカウントを聴きながら動いているんですが、いきなり私だけが違う方向に歩いてしまい、LuLaを困らせてしまうようなことがありました(笑)。

※「Sit Down」MVはFEMM YouTubeチャンネル”FEMM’s Agency Syndicate”にて近日公開予定

── 一方「Level Up」では、多国籍なメンバーで知られるクリエイティブ集団・tokyovitaminがMVを手がけ、さらに楽曲では所属するDuke of Harajukuさんがフィーチャリングとして参加されています。お二人とも以前から交流があったとお聞きしました。

LuLa 原宿にある「Faline」という洋服のお店で、tokyovitaminのVICK OKADAさんと出会ったのが最初ですね。そこから1年くらい経ったとき、VICK OKADAさんから「Duke of HarajukuがFEMMと一緒に曲をつくりたがったいる」というお話をいただいて。私たちは常に新しい音楽表現を模索しているので「ぜひ!」と二つ返事でした。

そんな縁もあって、8月にDuke of Harajukuさんがリリースしたアルバムには、私たちも参加させていただきました。
FEMM - Level Up feat. Duke of Harajuku (Music Video)
──音楽シーンで注目される方々ばかりですが、そういった人たちと関わることは、FEMMの表現にも影響を与えていますか?

LuLa そうですね。ただ以前は、そういった刺激を受けてもあまり表現に還元できませんでした。今後はよりダイレクトに自分たちの表現に落とし込んでいけると思っています。

「強い女性になりたい」FEMMが発信するガールズパワー

FEMM/Photo : Tatsuro Shimizu

──お話を聞いていると何度か“強い女性”というワードが出てきましたが、FEMMを語る上でやはりキーポイントなのでしょうか?

RiRi 私たちはマネキンであると同時に一女性として、よりかっこよく、より強い女性になりたい、そういった女性像を発信していきたいと常に思っています。ガールズパワーという言葉はFEMMの信念です。

LuLa 1stアルバムに収録した「Fxxk Boyz Get Money」が私たちの代名詞になっているのも大きいですね。

「男の子なんて放っておいて、お金を手に入れる」という内容の曲なんですが、本当にたくさんの人に聴いてもらうことができました。それ良かったんですが、一方で、この曲が必要とされるということは「どれだけ女性は強くならなきゃいけないんだろう」と感じた側面もありました。

最近は徐々にですが、女性の発言力が高まってきていると思います。そういう時代が、自分たちの活動と重なったからには、なおのこと音楽を通じて強く発信していきたい。ガールズパワーは「FEMM」にとってずっと歌っていきたいテーマです。

RiRi もし、生き辛いなって感じている女の子がいたら、私たちの音楽を聴いて、少し元気が出たり、前向きになってくれたりしたら嬉しいです。

躍進するアーティストたち

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