バーチャルライバー・月ノ美兎が10月7日、ソニー・ミュージックレーベルズ(SACRA MUSIC)とにじさんじが共同運営する「しのごのプロジェクト」からメジャーデビューシングル『それゆけ!学級委員長』をリリース。同28日には、にじさんじ初のカバーソングアルバム『Prismatic Colors』が発売された。
この2作は「なぜ今、にじさんじが支持されるのか?」をはっきりと示した作品だといえる。今回は、ライバーたちの人気の秘密を、この2作と周辺状況を通じて解き明かしていきたい。
キーワードになるのは、ネット上におけるファンとの関係性と過去10年分のネットクリエイター文化だ。
文:草野虹
「子供のころからネットサイトばかり見ていた」と語る彼女は、2ちゃんねるとニコニコ動画を中心にしたネットカルチャーに加え、00年代初期から中ごろまでに流行していたFlash文化にも詳しい。
それどころか、グロテスクなカルト映画『ムカデ人間』などのB級どころかZ級とも茶化されるコアな映画、ヨーロッパ企画などの個性派なネットゲームも愛好するなど、コアなサブカル・オタク層の心をくすぐる、とんでもないほどの個性派サブカル・オタク女子だったのだ。10分で分かる月ノ美兎
彼女の配信でのトークや、多人数と絡む配信を見ればわかるように、実のところ社会的な常識をしっかりともった人物なのは間違いない。だが彼女はあえて、ネタをさまざまにぶっこんでいく。
サブカル好きな自身の魂を「清楚系委員長」というキャラクターイメージで包み隠そうとしていたが、それは活動初期にバレてしまう。しかし、そういった二面性や裏と表の顔を含めて、月ノ美兎の活動は、かなり練られたブランディングとバランスによってもたらされている。言うなれば、彼女はVTuber界最高のトリックスターなのだ。
そんな彼女は 「それゆけ!学級委員長」 以前に発表していた「Moon!!」を9月に正式配信した。リリースタイミングが近くなったこの2曲には、深い関係性が感じられる。そこを掘り下げるために、彼女の活動における「アイドルマスター」シリーズとの関わりも振り返っていきたい。月ノ美兎によるシャニマス配信
長年自身が愛してきたアイマス作品を初見でプレイし、「イラストからストーリーを読み解く能力に長けすぎている」「文章や文脈からキャラクターを想像するのが的確過ぎる」など、視聴者もプロデューサー(アイマスファンの総称)にも引かれるほどの読解力をみせていた。
しかも最終的には『アイドルマスター シャイニーカラーズ』公式とコラボし、彼女のファンどころかシャニマスPをも巻き込み、話題をかっさらっていったのは記憶に新しい。
そんな彼女と「アイドルマスターシリーズ」へのオマージュと引用に溢れているのが前述の「Moon!!」。2018年3月12日、月ノ美兎のファンの1人であるクリエイター・iruが、ニコニコ動画にて発表した「月ノ美兎をモチーフにした二次創作」とも言える楽曲だ。
2年の歳月を経て、公式の印を得た形でリリースされたわけだが、基本的な楽曲アレンジメントや、もともとの歌詞からは大きな変化はない。アイマスへのオマージュとして特に色濃く現れているのが、2015年放送のアニメ『アイドルマスターシンデレラガールズ』1期のOP主題歌「Star!!」だ。CINDERELLA PROJECT「Star!!」
正直に言って、パクりスレスレではないか? と感じられる人もいるかもしれない。コード進行を中心にした楽典的な話を少しだけすれば、ところどころで近しいコード進行になっている。特にサビ部分はほとんど同じと言ってもいいだろう。
ブラスサウンドやグロッケンの音が華やかさを彩るアレンジも、両曲に似通っている部分であり、何より「○○!!」というタイトルからしても引用はあきらかだろう。
そして楽曲へのオマージュに気づいた彼女は、この曲を初めて歌ったタイミングで『アイドルマスターシンデレラガールズ スターライトステージ』をオマージュしたMADを制作している。ファンがつくり上げたファンソングを、つくられた側が歌い返す、とんでもなく濃密な関係だ。月ノ美兎の放課後ラジオ #1
この2作は「なぜ今、にじさんじが支持されるのか?」をはっきりと示した作品だといえる。今回は、ライバーたちの人気の秘密を、この2作と周辺状況を通じて解き明かしていきたい。
キーワードになるのは、ネット上におけるファンとの関係性と過去10年分のネットクリエイター文化だ。
文:草野虹
月ノ美兎の2つの顔──サブカル女子と清楚系委員長
バーチャルライバー(バーチャルYouTuber)グループ「にじさんじ」の顔役であり、グループ内において大きな影響力をもつ月ノ美兎。デビュー当初から「夢のバーチャルアイドル」を目指してきた彼女にとって、メジャーデビューシングルは1つの到達点であり、1つの出発点にもなりうる。まずは、彼女について書いていきたい。「子供のころからネットサイトばかり見ていた」と語る彼女は、2ちゃんねるとニコニコ動画を中心にしたネットカルチャーに加え、00年代初期から中ごろまでに流行していたFlash文化にも詳しい。
それどころか、グロテスクなカルト映画『ムカデ人間』などのB級どころかZ級とも茶化されるコアな映画、ヨーロッパ企画などの個性派なネットゲームも愛好するなど、コアなサブカル・オタク層の心をくすぐる、とんでもないほどの個性派サブカル・オタク女子だったのだ。
サブカル好きな自身の魂を「清楚系委員長」というキャラクターイメージで包み隠そうとしていたが、それは活動初期にバレてしまう。しかし、そういった二面性や裏と表の顔を含めて、月ノ美兎の活動は、かなり練られたブランディングとバランスによってもたらされている。言うなれば、彼女はVTuber界最高のトリックスターなのだ。
そんな彼女は 「それゆけ!学級委員長」 以前に発表していた「Moon!!」を9月に正式配信した。リリースタイミングが近くなったこの2曲には、深い関係性が感じられる。そこを掘り下げるために、彼女の活動における「アイドルマスター」シリーズとの関わりも振り返っていきたい。
月ノ美兎のアイマス愛、二次創作ソング「Moon!!」にも
配信初期から「アイドルマスター」シリーズのファンを公言している月ノ美兎。2020年4月からは『アイドルマスター シャイニーカラーズ』(通称・シャニマス)を実況配信している。しかも最終的には『アイドルマスター シャイニーカラーズ』公式とコラボし、彼女のファンどころかシャニマスPをも巻き込み、話題をかっさらっていったのは記憶に新しい。
そんな彼女と「アイドルマスターシリーズ」へのオマージュと引用に溢れているのが前述の「Moon!!」。2018年3月12日、月ノ美兎のファンの1人であるクリエイター・iruが、ニコニコ動画にて発表した「月ノ美兎をモチーフにした二次創作」とも言える楽曲だ。
月ノ美兎のテーマソング「Moon!!」にみるファンとの関係性
「Moon!!」はその後、「月ノ美兎の放課後ラジオ」にて委員長本人が歌い上げ、彼女が出演する音楽イベントで歌われることが多くなり、まさしく「月ノ美兎のテーマソング」に。彼女の音楽活動にとっては欠かせない楽曲だ。2年の歳月を経て、公式の印を得た形でリリースされたわけだが、基本的な楽曲アレンジメントや、もともとの歌詞からは大きな変化はない。アイマスへのオマージュとして特に色濃く現れているのが、2015年放送のアニメ『アイドルマスターシンデレラガールズ』1期のOP主題歌「Star!!」だ。
ブラスサウンドやグロッケンの音が華やかさを彩るアレンジも、両曲に似通っている部分であり、何より「○○!!」というタイトルからしても引用はあきらかだろう。
そして楽曲へのオマージュに気づいた彼女は、この曲を初めて歌ったタイミングで『アイドルマスターシンデレラガールズ スターライトステージ』をオマージュしたMADを制作している。ファンがつくり上げたファンソングを、つくられた側が歌い返す、とんでもなく濃密な関係だ。
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草野虹
ライター/インタビュアー
福島、いわき、ロックの育ち。『Real Sound』『SPICE』や音楽ブログなど、様々な音楽サイトに書き手/投稿者として参加、現在はインディーミュージックサイトのindiegrabにインタビュアーとして参画中である。
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1件のコメント
匿名ハッコウくん(ID:4172)
Vtuber界を牽引してるのはホロライブだぞ。
にじさんじは既に没落してる。