アイドルの情報量に学ぶコミュニケーションのあり方
パネルディスカッションには、au未来研究所の特別研究員である、ウォンテッドリー株式会社代表取締役CEOの仲暁子さん、批評家の濱野智史さんのお二人と、HCI(Human-Computer Interaction)研究者でH2L Inc.発起人の玉城絵美さん、モデレーターとしてWIRED日本版編集長の若林恵さんが登壇しました。まずは、アイドルに夢中になりすぎて自身もプロデューサーをつとめるまでになった濱野さんによるアツいアイドルトークからスタート。
濱野さんがアイドルにはまったのは、握手会などの物理的な接触による情報量に圧倒されたからだそう。視覚や聴覚、言葉だけでは満たされない欲求を満たす機能がアイドルにはあるというのです。つまり、フィジカル(身体的)なコミュニケーションの持つ情報量は他の媒体では替えがきかないということです。
最近、ワークスタイルについてもそのような視点が見直されつつあるのだとか。ソーシャルリクルーティングサービス「Wantedly」を運営する仲暁子さんは
「一時期、トレンドとしてノマドとかリモートで働こうみたいな流れがあった。だけど人のコミュニケーションは9割が言葉以外で行われている。リモートになった瞬間に、その隙間を埋めるための膨大な努力が必要になる。最近は、一周してオフィスに定時で集まって働くという旧来のワークスタイルに戻ってきている。イノベーションは一人では生まれないので、どれだけ良質なコミュニケーションをとれるかが鍵になってくる」
と話していました。
それに対して、玉城さんはフィジカルなコミュニケーションがリモートで行える時代がくるのではないか、と未来の可能性を提示しました。
玉城さんが行っている研究で、筋肉に電気信号を与えて手の動きをコンピュータで制御する「PossessedHand」が実現しています。今後、その場にいなくも五感すべてを共有できるようになれば、ようやく本当の意味でのノマドが実現できるようになると意気込みました。
質疑応答よりも手っ取り早いコミュニケーションとは?
さらに、玉城さんは非言語コミュニケーションの重要性を指摘。「『暑さ』という問題を話し合うときに、一緒に暑い部屋の中で話し合うのと、涼しいところにいる人とビデオチャットで話すのとでは、出てくるソリューションに大きな差がある」
と、同じ空間を共有することの大切さをわかりやすく例示しました。 一方で、タイムテーブルもあるので質疑応答に移ろう、と若林さんが提案したところ、濱野さんが反対。「今まで一度たりとも質疑応答が面白かったことがない」という発言も飛び出し、これには他の3人も苦笑。
濱野さんは、少しでも触覚の情報量の多さについて知ってもらうため、握手会をしたいと提案。そこで急遽、登壇者との握手会が開催されることに。
結局質疑応答も行われ、「キテる感=モメンタム」を感じるのはどんなときか、との質問に、偶然の出会いの連続性がモメンタムを生むという結論に至った。
握手会・懇親会
パネルディスカッション終了後は、濱野さんの提案通り、握手会兼懇親会が行われました。トークショーでの握手会はとても珍しく、最初は躊躇していた参加者でしたが、最終的にはほとんどの人が握手を交わしていました。
筆者自身、握手をしてからお話すると、通常のトークショーでの質疑応答や懇親会とは違った距離感で新鮮な体感ができました。
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