TikTok:日本で今流行ってる洋楽まとめ
「あれ? スピーカーあるじゃん! これ誰の? 誰の? ダレノガレ?」

週明け、遠征から帰ってきたサッカー部が文化祭の準備に加わると先週までの空気感が嘘だったみたいに教室の色を変えた。

「すげー日焼けしてんじゃん!」

しかも彼らはスポーツ推薦が決まっていて、部活を引退する必要も、受験勉強に精を出す必要もない。文化祭の準備はそんな彼らの自由の象徴みたいなものだった。

誰かが持ってきたスピーカーから今までと毛色の違う音楽が流れる。そのせいなのか空き缶を並べていくペースが急に上がったような気がした。

どうもサッカー部が先頭に立つとクラスの士気は上がるらしく、単調な作業に飽きてきたクラスメイトにとってはいい刺激になっているみたいだった。

はこの単調な作業が嫌いではない。目標がないからだ。しかも、この少しうるさい音楽のおかげで無理におしゃべりをしなくても気まずくならない。

サッカー部の連中は女子と一緒に、音楽に合わせて踊った動画を何度もスマホで撮り合っていた。(彼らが同じ振り付けを何の打ち合わせもなくシンクロナイズドスイミングのように揃えて出来ていたのが個人的に不思議でたまらなかった)

工藤さんの口からは独り言が消え、作業もあまり進まなくなっていた。

おそらく知ってる曲がないのだと思う。



ウチのクラスの女子の大半はスカートを履いたまま教室の床にあぐらをかいて(暑いから裸足になっていたりもする)作業をしている。だから、時々スカートの中が視界に入ったりしてその度に不自然な素振りで夕焼けを見たりした。

工藤さんだけはスカートの下にジャージを履いていた。裸足は裸足だったけれど、その爪にマニキュアを塗ったりはしていなかった。なんか、ピクトグラムみたいなデザインのキーホルダーをさげた鞄の上に、綺麗に折り畳まれた靴下が置いてある。

あまり工藤さんばかりを見ないように周りを見渡すと、女子が男子に団扇や下敷きで扇がせているペアが何組かあって時計とは違う何かが進んでいるような気がした。

「もっと、扇げー。気合いが足りんぞ、気合いが」

そんな女子の尻に敷かれるように、苦笑いしながら男子側が手首をスナップさせる。苦笑いの割にはちっとも嫌そうには見えない。



工藤さんの姿を、穴を開けた空き缶の底から垣間見る。



も団扇で扇いであげようか?」

なんてことは一言も漏らさずに。




1
2
3
4
5
6

プロフィール

ハハノシキュウ

ハハノシキュウ

ラッパー・小説家

青森県弘前市出身のラッパー/小説家。2012年05月、処女作品集『リップクリームを絶対になくさない方法』をリリース。2013年09月、フリースタイルダンジョン初代モンスターDOTAMA とのコラボアルバム『13 月』をリリース。2016年11月、地下アイドルおやすみホログラムの遍歴をエモーショナルにラップした『おはようクロニクルEP』がポニーキャニオンからリリースされ、実質メジャーデビューを達成する。2017年06月、ハハノシキュウ× オガワコウイチ名義で2 枚組アルバム『パーフェクトブルー』をおやすみホログラム所属のgoodnight! Recordsからリリース。さらに、2017年12月には自身のセカンドソロアルバム『ヴェルトシュメルツ』と盟友インプロデュオHUHとの即興コラボアルバム『3年後まで4年かかるタイムマシン』をOOO!SOUNDより2枚同時リリース。そして、2019年04月には念願の小説家デビューを果たし、星海社より『ワールド・イズ・ユアーズ』を刊行する。同年の07月、その小説を買ってくれた人へのサービスを建前に、小説の宣伝ソングという本音を隠して『小説家になろうEP』をデジタルリリース。同時に自主レーベル『猫背レコーズ』を立ち上げ『懐祭り』『顔』『鼠穴』と矢継ぎ早にリリースする。現在、2冊目の小説、Amaterasとのコラボアルバム、自身の3rdアルバムを同時進行で制作中。

コメントを削除します。
よろしいですか?

ページトップへ