キズナアイ楽曲のプロデューサー8組を全力解説 独占インタビューも掲載

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Nor - EDMとポップスが生んだ鬼子

Nor(のる)

キズナアイの初リリース楽曲「Hello,Morning」の作編曲も手がけたNorは、EDMとポップスの境界がもはや曖昧となった音楽シーンにおいて、今最も勢いのある若手トラックメイカーであろう。

フューチャーベース的な楽曲から激しいサウンドまでをオールマイティに手がけながら、その根幹には親しみやすいメロディセンスが光る。

2013年に作曲をはじめて以来、SoundCloudにリミックス楽曲をメインに公開していた彼だが、2015年末には、今や世界的なプロデューサーであるbanvoxとの共作EP『Flux』を無料配信。 2人の持ち味が生かされたハイブリッドトラップサウンドと共に、Norの名前がインターネットシーンに知れ渡ることとなった。

その後、声優・花澤香菜の楽曲リミックスアルバム『KANAight ~花澤香菜キャラソン ハイパークロニクルミックス~』に参加、2017年10月には初のアルバム『FUTURE DRIVER』をリリースした。

現在は女性アーティスト・YUC'eとのユニット「Beignet」としても活動、着実にファン層を広げ続けている。

今後も更なる活躍が期待できるNorのワークスをチェックするなら、今のうちがベストだ。

Norコメント
楽曲制作の前にアイちゃんと話し合った時、キズナアイとして目指してるアーティスト性に関してちゃんとお聞きすることができて、初オリジナル曲「Hello, Morning」がつくれたと思います。
アイちゃんが一人のVTuberとして、或いはアーティストとして、また私たちをびっくりさせる日を楽しみにしております!

Pa's Lam System - 超攻撃的覆面ユニット

Pa's Lam System(ぱずらむしすてむ)

都内をメインに活動する、3人組覆面トラックメイカー。

2012年にネットレーベル〈Sasakino Records〉から2曲入りシングル『Space Calamari』を無料配信すると、好事家なリスナーを中心に話題沸騰。

さらに同年末に〈Maltine Records〉からリリースしたダンスチューンシングル『b00mb0x EP』が、kz氏をはじめとする様々なアーティストから絶賛され、瞬く間に日本のネットレーベルシーンを代表する音楽ユニットとなった。

2017年には、アルバム『Whatever』で念願のメジャー・デビューを果たした。

彼らの音楽の魅力は、先進的で激しいベース・ミュージックのエッセンスを詰め込んだ濃密なグルーヴと、きらびやかでハイテンションなサウンドの応酬にある

今や彼らの代表曲となった「TWISTSTEP」は、ユーロビート的なメロディーから雪崩込むような攻撃的な展開、何曲分ものアイデアを詰め込んだガトリング砲式にくるくる切り替わるリズムが非常に挑戦的だが、芯の部分ではずっとキャッチーに、ダンスミュージックに初めて触れた時のようなリスナーの純粋な心をくすぐり続ける。 また、2014年に恵比寿リキッドルームで開催された〈Maltine Records〉のイベント「東京」の主旋律として鳴り響いた「I'm Coming」、同じく若手のアーティスト・PARKGOLFとの叙情的な共作「Fireworks」(『Whatever』収録)など、リリースする曲全てがアンセムのような強度を持っている彼らだが、肝心のリリースペースは遅め(慎重派?)。

きっと今回のリリースも、全ダンスフロアが騒然とする仕上がりになっていることだろう。

こんにちは! Pa’s Lam Systemです。
いつも全力なキズナアイさんと同じように全力でやりましたので全力で聴いてみてください!
あと、キズナアイさん、僕らとも是非友達になってください!

☆Taku Takahashi - 重鎮にして中心

☆Taku Takahashi(たく たかはし)

1998年にデビューして以来、日本の音楽シーンに刺激を与え続け、確固たる地位を確立したm-floのトラックメイキング担当としての活動や、数々のアニメ、ドラマへのBGM提供などで名を馳せている日本のダンス・ミュージックシーンの顔であるTaku Takahashi。

次々とヒットチューンを放つTaku Takahashi氏のキャリアは20年以上にも及び、現在でも精力的に楽曲リリースを続けている。

また、2011年に開局したクラブシーン専門のインターネットラジオ局「block.fm」はじめ、日本のクラブシーン全体の一体化・活性化を図っていることでも知られる。

彼のつくり上げる音楽は、綿密に構想された世界観と骨太なグルーヴによって説得力と求心力を獲得している。2001年に発表され一躍話題となったm-floの代表曲「come again」は、ポップスの土台の上に「2step」と呼ばれる特徴的にシャッフルされたビートが重なり、軽やかかつスタイリッシュな世界観を創造している。 2012年には、EDMのドロップスタイルをいち早く取り入れた上で、キャッチーなリフを取り入れた「So Mama I'd Love to Catch Up, OK?」(m-flo『Square One』収録)をリリースし、全国各地のDJ達によってヘヴィープレイされた。

近年では、m-floのオリジナルボーカル・LISAのメンバー復帰後のリリースとなった「No Question」(m-flo『the tripod e.p.2』収録)でも、引き続き最新のクラブサウンドをキャッチアップしながら、J-POPとしての強度を保つ職人技とも言えるトラックメイクが冴え渡っている。

日本のクラブシーンの仕掛人としての役割も担う彼の最新のサウンドは一体どの方角を向くのか、そういった楽しみを持って今回のリリースを期待するのも良いかもしれない。

☆Taku Takahashi(m-flo, block.fm)コメント
キズナアイさんのプロジェクトは元々大好きだったので、オファーをいただいてとても嬉しかったです。
日本全国でとても愛されているキャラクターなので、彼女の良さを出しつつ、新しい部分も引き出せるよう心がけてつりました。気に入っていただけると嬉しいです。

TeddyLoid - 飽くなき求道者

TeddyLoid(てでぃろいど)

18歳でキャリアをスタートし、約10年に渡り音楽シーンの最前線に立ち続けているTeddyLoid。

彼の楽曲では、☆Taku Takahashi氏が音楽プロデュースを手がけたアニメ『パンティ&ストッキングwithガーターベルト』の挿入曲としてつくられたキャッチーで硬派なエレクトロ・ハウス「Fly Away」が有名だが、近年では数々のプロデューサーやMCとのコラボレーションをテーマにした『SILENT PLANET』シリーズをリリースし、更なるサウンドの先鋭化と進化を続けている。

2016年にリリースされたKOHHとのコラボレーション楽曲「Die Younger」は、KOHHが傾倒しているパンク・ロックと、先進的な激しいダブステップサウンドが高水準で融合された楽曲で、多くのリスナーを驚かせた。 他にも、和のエッセンスを取り入れたEDMに挑戦した「Sleeping Forest(feat. ボンジュール鈴木)」、ボーカロイドキャラクター・IAをフィーチャリングしたデジタルバラード「Invisible Lovers(feat. IA)」など、TeddyLoidは様々なサウンドに果敢に挑戦する

11月リリース予定のコラボレーションシリーズ最新作『SILENT PLANET: RELOADED』では、世界的ダブステップアーティスト・Virtual Riotとの共作も収録されるとのこと。

TeddyLoidコメント
アイちゃん、初めまして。
先日、HIKAKINくんとの対談動画を見ていた所なので、コラボレーションのオファーを頂けてとても嬉しいです。
今回は一緒に作品をつくれる事、とても楽しみにしています。

バーチャルとリアルがコネクトする現代社会。
世界のあらゆる人々へインターネットを通じてこの曲が届き、笑顔が増えますように。

Yunomi - コミカルとシリアスのあわいを泳ぐ

Yunomi(ゆのみ)

Yunomiは北海道出身、東京在住の次世代ポップ・ミュージック・プロデューサー。

2015年に「サ・ク・ラ・サ・ク(feat. nicamoq)」をリリースしYunomiとしての活動をスタートして以来、現在に至るまで数多くの楽曲をリリースしてきた。

非常にレベルの高いサウンドプロダクションと、楽曲ごとに綿密につくり上げられるファンシーな世界観によって、J-POPサウンドの新たな可能性を切り開き続けている10年代最重要プロデューサーと言えるだろう。

その一例を取り上げるなら、まずEDM以降のピースフルな世界観を日本語の複雑な音節と和風音階に濃縮した「大江戸コントローラー(feat. TORIENA)」。

そして、底抜けに明るいメロディ進行と攻撃的なドロップを並列させ、結果としてポップスの全く新しい地平に突入した「インドア系ならトラックメイカー(Yunomi & nicamoq 名義)」などが挙げられる。 どの楽曲にも、クリエイターの目線からしても刺激的なアイデアが非常に盛り沢山で、正直悔しいところもある

コミカルとシリアスを自在に行き来するYunomi氏の楽曲の世界観に触れたくなったら、キズナアイとの楽曲はもちろん、彼のSoundCloudに大量に公開された楽曲も忘れずにチェックしてほしい。

Yunomiコメント:
遠い未来を想像しながら何かをつくることがこんなにもワクワクするんだって、キズナアイさんは教えてくれました。僕たちの目の前に広がるもの……締め切りだけじゃないですもんね。

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和田瑞生

トラックメイカー/編集/執筆

1992年、東京生まれ。学生時代にMiiiとして音楽のキャリアをスタート、日本のネットレーベル文化の中で活動を続ける。2013年から、音楽メディア「UNCANNY」を中心に音楽批評文を執筆開始。2015年には〈Maltine Records〉の10周年を記念して作られた書籍『Maltinebook』に共同編集者/インタビュワーとして参加している。

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