TREKKIE TRAXインタビュー 「物語が最高のパーティをつくる」

海外アーティストは増えたけど全員友達

──5周年のタイミングで2枚目のベストアルバムもリリースされました。レーベルのカラーが前回以上に明確になったと感じたのですが選曲について思い入れはありますか?

futatsuki 選曲は僕が中心でやったんですけど、単純に印象的だった曲です(笑)。ただ、前回よりも楽曲ジャンルの幅を取れるようになった。 futatsuki レーベルのリリースが増えるにつれて音楽性がたまたま広がっていったんですよね。これまでリリースしてこなかったボーカルがあるポップスや、フューチャーベース、もちろんEDMやベースミュージックなど、なんでも入っていて…。選曲の意図というよりはレーベルの流れがそうだったというのが正しいです。

──今回のベストに含まれている2年間のレーベルの流れとして大きな変化はなんでしょうか。

andrew 一番の違いは海外のアーティストをめっちゃ出したことでしたね。凄くフラットな環境ができて……クラブで「あの海外のアーティストが!」と騒ぐだけじゃなくて、もっと対等になれたというか。日本と海外との壁を感じなくったんです。

僕らも去年アメリカツアーに行きましたけど、逆にアメリカのアーティストを日本に呼んでいたり。

futatsuki ただ、海外アーティストのリリースは増えたんだけど、友達しか出していないんですよ(笑)。FoxskyとかMaxoとかもそう。

Carpainter Lil Texasもそうだし、Pixelordも元々連絡を取りあって曲を交換してたりとか。以前からTREKKIE TRAXのことを好きでいてくれたりする人しかいないですね。

Seimei なので、向こうから「TREKKIE TRAXから曲を出させてくれ」って言ってくれる。

その理由は単純で、リリースする1年以上前から「曲聞いてよ!」ってやり取りを続けてるから。本当にそれだけしかやってなくて──だから「曲ができたから出させてよ」っていうノリなんですよね。

futatsuki レーベル初期から続いているクラブで会った人の曲を出すというのが、インターネットやSNSを通じて世界規模で続いている感じなんですよね。 ──レーベルの芯は変わらずに、規模が大きくなっている。

futatsuki ぶっちゃけ全く知らないアーティストからもデモ音源が毎日のように来てるんです。7対3ぐらいで海外の方が日本より全然多いんですけど……でもリリースしたことはほぼないですね

andrew なぜかというと、リリースしてからの展望が見えないんですよ。例えば、ただ「曲聞いてくれ!」って曲が送られてきても…それがピンと来なければそこで終わってしまうじゃないですか。

でも仲が良かったらコミュニケーションをとって「こういう曲にしたら?」とか言ったりできるし。もし可能性を感じた曲ならそこから連絡をとり始めて仲良くなることももちろんあります。

僕らはレーベルとして、マネジメントもやってるから「今後どういう風になりたいのか」という部分が見えないと。その後のサポートの仕方も悩んでしまいますし、リリースし辛いんです。

パーソナルな部分をサポートしていきたい

──リリースすることのみだと強い意味を感じないんですね。現場で曲をどう育てていくか? というところを意識されているんでしょうか。

futatsuki 普通はレーベルって売り上げをあげるために曲を出す部分があるから、売れそうな曲があったら出していくわけじゃないですか。でもTREKKIE TRAXってほぼほぼ無報酬で自分たちのやりたい音楽をやってる。全然ビジネスじゃないんですよ。じゃあどこでモチベーションが上がるのか? ってことで。

アーティストではなく、僕たちがどこにやりがいを感じれるのか。それがジャッジの対象になっている。

Seimei だから友達のサポートをしてあげたいってことですね。Lil Texasの MaxoもFoxskyも、すごいいいヤツらなので…!(笑) 俺らが金稼げなくても全然やるぜって。それがフィルターになって、TREKKIE TRAXってレーベルの個性になってる。

futatsuki リリースして終わりじゃなくて、ブッキングや、他の仕事のアサインもするし、外国人アーティストは日本を含めたアジアツアーまで組んだりしますしね。

──穿った見方かもしれませんが、こうしてレーベルが成長して注目されるようになった今、もっとマネタイズをしていく方向にもできるんじゃないかと思ってしまうんですが……。

andrew CarpainterやMasayoshi Iimoriは他のアーティストのプロデュースやリミックスの提供が増えてきました。それにともなって僕たちのアーティストマネジメントみたいな仕事も少しずつ増えてきてはいます。

なので、ちょっとずつお金になる話は増えてきてるんですけど、スピードはゆっくりだし自分たちのレーベルのコンセプト変えずにやりたいんですよね。
Y!mobile「アンドロイドワン部」篇
※「Y!mobile『アンドロイドワン部』篇」ではMasayoshi Iimoriさんが音楽を担当。地上波でも頻繁に放映された。

futatsuki 売れる、かっこいい音楽をつくればある程度のお金にはなるんですけど、そこは僕らのポリシーが許さない。

素晴らしい音楽をつくれるアーティストをリリースして、彼らが活動していけるようにサポートしていきたい。だから必然的にアーティストのマネジメント的な部分もやっているんだと思います。

だから、楽曲のリリースのみでマネタイズしようとはあんまり思ってない。最終的にはトータルでお金がちょっとでも入って来ればいいなぁっていうテンションは最近あります。

Seimei 多分それがいま音楽業界でお金を稼ぐっていうことのメインなんじゃないかな。アメリカとかだとストリーミングで、めちゃくちゃ稼いでるレーベルも知ってるけど、音源で稼ぐっていうのはそこまで考えてない。

今の日本においてはアーティストのマネジメントもしっかりやって、企業案件などで楽曲をプロデュースするぐらいしか稼ぐ方法がないかもしれませんね。

futatsuki 最近まわりのアーティストたちが「音楽で人生を豊かにする」みたいなこと言うんです。「音楽で食う」んじゃないんですよね。自分たちの人生を豊かにするための現実的な音楽との接し方として、こういう形が主流になってきている。

Carpainter 日本だけじゃなくて、全世界的に音楽に対するライフスタイルってそういう風に変化してきてますよ。DTMで個人制作もできるし、SoundCloudみたいな発表の場もたくさんあるし。

futatsuki レーベル活動を日本で5年間頑張ってきたけど、いまいち食えないなあというのがわかってきて──僕とかSeimeiはいまも働いてるし。基礎の生活があった上で楽しいことをするためにレーベルをやってる。だから、今後もそのテンション感を大切にしたいですね。

TREKKIE TRAXとパーティは切っても切れない

──TREKKIE TRAXは特にイベントに力をいれているレーベルですよね。頻度もそうですし、周年イベントは15時間ぶっ通しだったりしたじゃないですか(笑)。

andrew そもそも僕らがレーベルをやる理由の1つに「パーティの告知になるように」という動機があったんです。「U-20」って未成年の集まる……TREKKIE TRAXを結成するきっかけになったパーティがあって。それをもっといいものにしたかった。

結局主宰はみんなDJで、現場が好きすぎる。だからその延長なんです。もっと踏み込んで言うと、パーティをやることによってシーンの雰囲気もわかるし、それがレーベルのリリースにもリンクしていく。だからTREKKIE TRAXとパーティは切っても切れないですね。 futatsuki アメリカから友達を呼んで、旅行みたいなテンションで一緒にツアーしたら楽しいんじゃない? みたいな(笑)。

andrew それによってお互いの世界/フロアがリンクするんで、曲の雰囲気も変わると思うんです。日本ではこういう曲がかかっていたなぁとか、このタイミングでこういう曲をかけたら盛り上がるんだなって生きた情報がアメリカに行く。

Carpainter リリースしている曲がクラブミュージックだって以上、その真価が発揮されるのはやはり現場なので。

andrew そうだね、例えば俺らがエレクトロニカとかアンビエントとかばかりリリースしてたんだったら、そんなにパーティやらないと思う(笑)。

──アーティストとの関係性、純粋な楽しさから来るものなんですね。一方で今パーティ不況、なかなかイベントに人が来ないとも言われていますよね。そのなかでパーティを続けていくために考えていることを聞きたいです。

Seimei 例えば一昨年の3周年はCola Splashという謎の人間が──今までは一切DJしたことのないアーティストが、TREKKIE TRAXからリリースしたことでファンが生まれて。「Cola Splashどこで見れるんだよ!」みたいな空気感ができたんですよ。

andrew 周年に照準を合わせたレーベルの動き、プロモーションがバチっとハマりましたね。

ストーリーがパーティをつくりあげる

futatsuki でも一番はストーリーですよ。繰り返しになるんですけどTREKKIE TRAXはリリースして終わりじゃない。今回の5周年だとFoxkyやMaxoが来日することの思い入れも、各々のTwitterとかラジオだとかで意識的に発信してるんですね。

きっとほかのパーティも各々のストーリーがあって──例えばMaltine Recordsだって10年以上やってきたストーリーがあって今のイベントが成り立ってるはずし、2017年の夏にageHaであった「Anthem」もそれまでの長い積み重ねがあったからこそ、ひとつの集大成としてみんなに支持されたんだと思います。その結果、良いパーティになった。

Carpainter やっぱりストーリー性がないパーティーは「アレ?」ってなりますよ。

Seimei 外タレが来るときもその人とずっと仲良い人が前座をやる時と、そうじゃない時は全然パーティーの雰囲気が違うと思います。 ──たしかに行きたくなるパーティは出演者に必然性が見えてくるというか。

futatsuki 僕たちはインデペンデントなレーベルなので、いわゆる有名なアーティストを集めてイベントをやる!みたいなことはできないんですよ。基本はTREKKIE TRAXからリリースしたアーティストしかパーティーにもブッキングしませんし。

その中でどう盛り上げていくか──それがリリースであったり、前後の文脈をお客さんにもしっかり伝えて。その結果にパーティがあるというのが大事なんです。だから質問の答えはストーリーですね。

Carpainter それやったらめっちゃ続くだろうね。たとえ一度、人がバーっと入っても、その次に来なければあまり意味がないから。

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