身内を一番食らわせたい
──率直に、コンピアルバムが完成したご感想を聞かせてください。Sweet William 僕らの界隈でキチンとした作品を出すことはなかったんです。だからみんなでリリースできたのも素直に嬉しかったし、それぞれが本気の楽曲を詰めてきたから新鮮で、やる気に繋がりました。
唾奇 Pitch Odd Mansionは仲間意識は強いけど、熱量の違いもあるので、みんなで動くのがすごく下手なんですよ。
國枝がしっかり舵をとってくれたから、今までにないぐらい綺麗にまとまりました。 Sweet William それに身内でかっこいい曲がつくれるとやっぱり嬉しいですね。RAITAMENってラッパーと僕の曲があるんですけど、僕のトラックと彼はなかなか合わなくて……。
今まで何回かやってたのはボツになることが多かったんですけど、今回はバチっとハマった。余計に嬉しかったです。
唾奇 僕はそれにヤキモチ焼いてます(笑)。仲間がヤバい曲をつくることが1番の原動力になるんですけど、僕にとってはWillさんが1番近い存在だから、他のラッパーといい曲つくったりすると「クソッ!」って思いますね。
──(笑)。今回のコンピに参加してるラッパーやトラックメイカー全員がPitch Odd Mansionというわけではないですよね?
唾奇 違うんですけど、ほとんど全員近いところですね。イベントとかも一緒にやってますし。
ただ、僕は方向性を綺麗に捻じ曲げたかったんですよ。一緒に曲をつくったAvecAvecさんは、唯一今回のアルバムで面識すらなかった方なんです。
シンセポップのような音楽も全然聴いてこなかったんですけど、Willさんか國枝に教えてもらって、一気にハマりました。
Sweet William 僕と國枝がAvecAvecさんや、Sugar's Campaignが好きなのもあって、唾奇とやったら面白いんじゃないかと。
唾奇 AvecAvecさんと一緒にやればそっちのリスナーにも聴いてもらえるし、逆に僕のリスナーにもAvecAvecさんを知ってもらえるし。
スキルトレードの意味も込めて、多方面の方達と色々やっていきたい思いが強いんです。そうじゃないとリスナーに広がりがないじゃないですか。
Willさんとつくってるときの僕は130%の力が出せていると思ってるんですけど、それと同じ感覚の曲ができて。タイミング合えばまた一緒に制作できたらいいなと思います。
──ラップもリリックも、今までの唾奇さんとは全く違うものだと思いました。Sweet Williamさんは、Jinmenusagiさんへもトラックを提供していますよね。
Sweet William ウサギくん(Jinmenusagi)との「Game Over」は、普段と趣向を変えてて、ベースでメロディをつくったゴリゴリな楽曲になりました。
ウサギくんは、物凄いセンスとスキルをもってます。なので、トラックが1ループできた時点で彼に絶対歌ってほしいなって思いましたね。
ビートメイクと似て非なる作曲作業
─お二人のサウンドは新たなシーンの到来を予感させるような音楽だなと感じています。ビートをつくる上でWillさんはどういったことを意識されているのでしょうか。Sweet William ビートメイクというよりは、作曲をするイメージでつくってます。だからメロディーも自分でつくっちゃうんです。それが他のビートメイカーと違うのかもしれないですね。
──メロディーありきで、トラックをつくられているということでしょうか?
Sweet William ありきというわけではなく、楽曲をつくるにあたって、自分のつくりたいメロディーを常に意識してます。
サンプリングをする場合も、その原曲のメロディーを自分で楽器から弾きなおしたり。 ──メロディーが強い曲は、ラップする唾奇さんにとってはとても難しいものなんじゃないかなと思ってしまいます。
唾奇 そうですね。インストとして完成してるビートには「ラップをのせれない」ってなっちゃうものもあって。『Jasmine』では4、5曲ぐらいボツにしましたよね(笑)。
でも、Willさんも本気でつくってるし、僕もめちゃくちゃ本気だし、なかなか「無理です」って言えなくて。それで制作の速度が遅れちゃったくらいです。
ただ、できないままで終わらせたくないから、Willさんじゃない人とも制作して、とにかくラップの振り幅を増やしたいんです。
唾奇 あまり意識してなかったです(笑)。僕は育ちがあんまり良くないんですよ。
親がいないから、ばあちゃんに育てられて……とかをリリックに書くと、真面目に受け取られたり、「聞きづらいんですけど」とか前置きがあったりするんです。
だけど、僕はラップをギャグだと思ってるんですよ。 ──念のためですが、リリックは実話ですよね?
唾奇 もちろん実話です。ただ、それは自分で自分の環境を消化できてるからポンポンと、ウケるようなギャグとしてリリックにできることであって。
当たり前に与えられるものが与えられない環境で育っていると、変な同情とかされるんですよ。何をしても「仕方ない」って許されてしまったり。
それがコンプレックスなのか、目立ちたがり屋な性分になっていったんです。もしラップやってなかったら、ただの不幸な人間だなと思いますよ。
──唾奇さんのリリックとSweet Williamさんのトラック。そして國枝真太朗さんの映像も、お二人の楽曲を広めた重要なファクターですよね。
唾奇 今はSNSが強い時代じゃないですか。僕らがつくった聴くものを國枝が見るものにできる。曲、ラップ、映像で3つのセットです。僕らはそのスピードが相当早い。1週間あれば全部できますね。
今でこそヒップホップはメディアに取り上げられてるけど、飽きられちゃったら終わり。なので僕は、ヒップホップを知らない人でもKICK THE CAN CREWやRIP SLYME、m-floを知ってるように、ちゃんと先々でも聴ける音楽をつくりたいです。 ───Pitch Odd Mansionとして目指してるものはありますか?
唾奇 それはないです。お互いがお互いを刺激しあって、音楽性高めていくだけ。だから仲間意識はあっても、クルー意識はないんです。
Sweet William 集団を大きくしたいとかもないしね。
唾奇 メンツも國枝の趣味嗜好なので、好きな人しかいない。
──今後もコンピを出されるのかなと期待してしまうのですが……!
Sweet William それも真太朗の采配次第だと思います。彼の好きなプレイリストという感じなんで、決れば当然、僕らは真太朗に協力しますよ。
2
この記事どう思う?
関連リンク
2件のコメント
匿名ハッコウくん(ID:2119)
Goood
Goood
匿名ハッコウくん(ID:1171)
唾奇めっちゃイケメン