唾奇×Sweet Williamインタビュー 「すべてを完結させる“家”からの発信」

唾奇×Sweet Williamインタビュー 「すべてを完結させる“家”からの発信」
唾奇×Sweet Williamインタビュー 「すべてを完結させる“家”からの発信」
劣悪な家庭環境をメロウなビートの上でラフにラップし、急速に耳目を集めるラッパーがいる。沖縄出身のMC・唾奇さんだ。

彼はビートメイカーのSweet Williamさんとともに、アルバム『Jasmine』を4月に発表。そのサグなリリックからは想像もつかないジャジーかつ洗練されたサウンドでリスナーを魅了し、2017年のマスターピースとの呼び声も上がるほどの反響を獲得した。
唾奇 × Sweet William / Made my day
そんな両者が所属する集団・Pitch Odd Mansion(POM)がMS Entertainmentと共同プロデュースしたコンピレーション「2 HORNS CITY #1 -MARS DINER-」が8月にリリース。それに合わせて、POMの中心的存在となっている唾奇さん、Sweet Williamさんの2人にインタビューを行った。

取材中、一度たりとも「クルー」とは称さなかったPitch Odd Mansionという存在の原動力や、彼らのクリエイティブを支え、大きく飛躍させてきた、映像ディレクター・國枝真太朗さんについても詳しく話を聞いた。

取材:ふじきりょうすけ、わいがちゃんよねや 文:ふじきりょうすけ 写真:ほむらよしかず

Sweet Williamのビートでフリースタイルしていた

──2人は、唾奇さんが働いてた沖縄のバーで偶然出会ったんですよね。一緒に曲をつくろうと声をかけたのはSweet Williamさんからだと聞きましたが、唾奇さんのどういったところに惹かれたんでしょうか。

Sweet William 当時、唾奇が組んでた阿弥陀というクルーのデモを送ってくれて。沖縄にもかっこいいラッパーがいるんだなって思ったんです。

その頃は僕も作品を出したことがなくて。それでフリーダウンロードのEPを出す時に参加してもらったのが最初でした。 唾奇 もう4、5年前ぐらいの話ですかね。阿弥陀では、極端に言うと不平不満を歌うようなわかりやすいラップをしているメンバーばかりでした。当時の僕はラップはじめたてで友達も全然いないし、ヒップホップ自体に詳しいわけでもなかった。

だから、ビートに対する意識も一切なくて、黒くて煙たければいいっていう考えだけでチョイスしてたんです(笑)。YouTubeで「90年代/ヒップホップ/インスト」みたいに調べて、とにかく「攻撃的にいこう」って考えで曲をつくってました。

でも、Willさん(Sweet William)と出会って、はじめてビートをつくってる人にリンクしたんです。自分が全然触れたことがないような音楽で驚きましたね。
CHICO CARLITO/一陽来復 ft.CHOUJI,唾奇 Beats by Sweet William
唾奇 その同時期あたりに、一緒に遊んでいたCHICO CARLITO(※)がMCバトルにハマって。サイファーするようになったから、ビートをディグり出しました。

僕の働いてたバーでも、しょっちゅうCHICOがフリースタイルしてたから色んな種類のビートがあった方がいいなと。それでWillさんのビートを使って、ずっとラップしてました。

Sweet William そのアルバム、全部で20ダウンロードぐらいしかされてないやつなんですよ(笑)。学生の時、本当にやりはじめの時に出したビートで彼らがフリースタイルしてたって後から聞いて、驚きました。

──意外だったのが、唾奇さんのMC名が『ソウルイーター』のキャラクター・椿が由来だというお話でした。

唾奇 アニメはめっちゃ好きなんですよ。最近だと『Re:ゼロ』(Re:ゼロから始める異世界生活)を一気に見ました。

WillさんやPitch Odd Mansionのボスの國枝もアニメを見るタイプじゃないんですけど、僕が勧めたら2人ともハマって、一気に見てましたよね。

Sweet William (國枝)真太朗は元々アニメ好きだったよ。でも、僕らも唾奇がアニメを見ることを後から知りました。 ──オタク的なコンテンツとは無縁そうなイメージだったので驚いたんです。

唾奇 沖縄は県外の情報が全然入ってこないんですけど、イジめすぎて大阪に転校しちゃった幼馴染がいて。そいつが年に1回帰ってくるたびに、流行ってる音楽とかを教えてもらってたんです。

そのなかに、たまたまらっぷびとさんが『涼宮ハルヒの憂鬱』でラップしてる曲があって。そこから『ハルヒ』にハマって、オタクの友達がめっちゃ増えたんですよ。改造したPSPにエロ本入れてもらったりしてました(笑)。

※CHICO CARLITO…「フリースタイルダンジョン」のモンスターとしても活躍したラッパー。楽曲「一陽来復」では、唾奇さん、Sweet Williamさんが参加している。

Pitch Odd Mansionという"家"から好きな作品を発信していく

──コンピ『2 HORNS CITY #1 -MARS DINER-』が発売となりました。まずはPitch Odd Mansionはどういった集まりなのか聞かせてください。

Sweet William Pitch Odd Mansion代表の國枝真太朗は元々ラッパーで、学生の時からずっと僕と一緒に楽曲をつくってたんですよ。それが1番最初で、後々大きくなっていった感じですね。

唾奇 スケボーやったりとか、映像とかつくってたんでしたっけ?

Sweet William そうそう、真太朗は専門に行ってて映像もやってたから。僕はダンスもしてたので、その映像を撮ってはPitch Odd Mansion名義で出してました。Pitch Odd Mansionっていう名前は、彼の学生時代の卒業制作ですね。意味までは覚えてないんですけど(笑)。 ──今は何人いらっしゃるんですか?

Sweet William うーん……ラッパー6人、ダンサー2人、バンドマン3人、ビートメイカー1人、DJ1人、ボスが1人。全部で14人ですね。

僕らはいつも根詰めて作品をつくる方ではなくて、あくまでPitch Odd Mansionっていう"家"から各々が好きな作品を発信していくスタイルなんです。でも発信する時は、みんなで協力する。

──今も沖縄に住んでいる唾奇さんはじめ、クルーのメンバーが全国に散らばっているのも珍しい印象です。

Sweet William 名古屋、長野、神奈川、沖縄にいるんですけど、もともとの活動拠点だった名古屋のメンバーが中心ですね。

唾奇 沖縄から出る気は一切ないですけど、僕1人なんで寂しいです。

Sweet William めっちゃこっちに来るもんね(笑)。

──唾奇さんは後からPitch Odd Mansionに参加していますが、どんな経緯だったんでしょうか。

唾奇 イベントに呼ばれてライブを見たんです。そしたらラッパー全員がかっこよくて、僕の中でPitch Odd Mansionが理想になったんですよ。

ダンサーやラッパー、ディレクター、プロデューサーがいて、全てのことが1つのMansionで確立しているという形はかっこいいですよね。 ──それで、入ろうとなったんですか?

唾奇 いや、そのタイミングで入る気はなかったです。むしろ同じことを沖縄でやれたらと思って「人塵」ってクルーをつくりました。

でも、そこでバックDJやってるやつの性格がめちゃくちゃ悪くて、僕だけクルーを抜けたんですよ(笑)。

そのタイミングでずっと仲良くしていたPitch Odd Mansionに誘われたんで、入る以外の選択肢はなかったですね。國枝やWillさんみたいな、自分の身内を食らわしたいという気持ちが強くなっていったんです。 ──Pitch Odd Mansionのボスと呼ばれている國枝真太朗さんはどんな方なんでしょうか。

唾奇 仕事だけしっかりやってるけど、めちゃくちゃテキトーです(笑)。

Sweet William でも、とにかく仕事がすごく早いんです。撮った次の日には、もうMVができたりしますね。

僕も真太朗も唾奇も、時間をかけて作品をつくるということに対してマイナスイメージがあるんです。つくった瞬間の熱があるうちに世に発信したいと思っていて。

真太朗は、それが1番強いタイプですね。自分の感覚が尖ってるうちに自分の作品を出したい人間で、映像にもそれが出てる。最近だと、新しくグラフィックを勉強して取り入れてたり。

ビデオだけじゃなくて、全体の脚本づくりや作品のイメージが彼にはあって。コンピをつくりたいというのも彼発信だし、みんなが國枝真太朗のことをすごく慕ってます。
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2件のコメント

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匿名ハッコウくん

匿名ハッコウくん(ID:2119)

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匿名ハッコウくん

匿名ハッコウくん(ID:1171)

唾奇めっちゃイケメン

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