「フリーブックス」という海賊版の漫画投稿サイトが、ここ数日で大きな注目を集めていた。
2016年に開設されていたサイトだったが、広く知れ渡ることになったきっかけは、DDoS攻撃を受けてサーバーがダウンしTwitterのトレンド入りしたことや、はてな匿名ダイアリーに5月1日に投稿されたエントリーだった。 それまで、ひっそりと利用していたユーザーが大半だったと見られるが、それらをきっかけに、「フリーブックス」についての議論がにわかに盛り上がったのがここ数日の出来事だった。
様々な検証がなされ、以前からその動向に注目していた方もその実態についての分析をブログに公開(外部リンク)。周到な運営の身元特定は困難ではないか、とされていた。
しかし、事態が急変したのは、本日5月3日(水)。突然、この「フリーブックス」が閉鎖されたのだ。
アクセスすると、そのトップページには「当サイトは閉鎖致しました。短い間では御座いましたが皆様ありがとうございました。」と短い文章が日本語・英語で掲載されている。
漫画や小説、雑誌、写真集、そのほかあらゆるものが無料で公開されていた。
例えば最近では、「2017年本屋大賞」の特集が「フリーブックス」で組まれていた。書店員が売りたい本を選ぶはずの賞が、キャッチコピーもそのままに、違法サイトで大々的に特集されている。なんという地獄。
当然、出版社もその存在は認識していた。ただ手をこまねいていたわけではなく、Googleの検索結果から著作権を侵害しているものを強制的に除外するよう求めるDMCA侵害申し立てを行ってきた。
その格闘の様子は、各出版社からの「フリーブックス」に対するおびただしいDMCA侵害申し立ての記録が物語っている。(「LumenDatabase」から「フリーブックス」ドメインを検索すれば、誰でも目にすることができる)
しかし、仮に警察が介入しようにも、ドメインもサーバーも海外に置いているため日本での法律は適用できない。かつ、運営者の身元特定も困難という状況だった。
度重なるサーバーへの攻撃が関係しているのかもしれないし、注目を集めすぎてこれ以上の運営は厄介だと判断したのかもしれない。
しかし、いずれにしろそのノウハウは確実に積み上がっていたはずだ。1年経たずに「フリーブックス」をここまで大きく成長させたことを考えれば、名前を変えて同じ手法でいつでも再開が可能だからこそ、呆気なく閉鎖したと考えることもできる。
実際、ドメインの登録情報を検索できる「Whois」で調べた結果、サイト名は伏せるが、別の大手違法サイトの運営者と合致するという調査も出ているようだ。当然、そちらは閉鎖していない。
「フリーブックス」がなくなっても、利用するユーザーがいる限り、海賊版とのイタチごっこは続いていくだろう。
正義面するつもりはさらさらないが、いち漫画ファンとして、出版社と作家に利益が還元されず、その影響から自分の楽しむジャンルが痛めつけられる状況は残念だ。
「違法ダウンロードする人間は、無料で公開されていなければもともと購入することはない層だ」という意見も度々目にする。
しかし、創作活動とは過酷なもので、自分の作品が違法でばら撒かれているという事実に心を痛め、筆を折る作家がいないと誰が言い切れるだろうか。事実、違法ダウンロードに屈して創作活動を辞めた作家は存在する。
2010年には、個人利用の範囲であっても、違法配信されたものであることを知りながらダウンロードする行為は違法となったが、刑罰は存在していなかった。
そこで、2012年には、有料販売または配信されているもので(追記:ただし音楽や映像に限る)、それが違法配信されたものであることを知りながらダウンロードした場合には、「2年以下の懲役または200万円以下の罰金(またはその両方)」が科される刑罰が盛り込まれることになった(外部リンク)。
しかし、お小遣いも少ない、まだ分別もつかない子供たちが、無料で利用できるサイトにいつでもアクセスできる環境にいるのに、理性だけで踏みとどまることは難しいだろう。
「フリーブックス」に限らず、世界的なコンテンツ無料化の流れを押し止めることはできない。いくら法整備をしたところで、誰にも見咎められずに軽々と飛び越えられる法律に抑止力があるとも思えない。
例えば、日本でも、漫画家自身が海賊版に対抗するために、絶版を公開して広告収益を権利者に還元する「マンガ図書館Z」といった取り組みも始まっている(関連記事)。
また、近年では、取り締まりが難しい海外サーバー経由の侵害サイトを強制的に遮断する「ブロッキング」の導入についても議論されている(外部リンク)。
根元を絶つか遮断するかして環境自体を変える、あるいは収益モデルを変革する必要に迫られているのかもしれない。
ただ、「フリーブックス」が急激に注目を集めた結果として閉鎖に至ったように、ネット上で取り沙汰されることで、多少なりと運営がやりづらくなるとは言えるだろう。
たとえそれが終わらないイタチごっこだとしても、声を挙げることは決して無駄ではない。
2016年に開設されていたサイトだったが、広く知れ渡ることになったきっかけは、DDoS攻撃を受けてサーバーがダウンしTwitterのトレンド入りしたことや、はてな匿名ダイアリーに5月1日に投稿されたエントリーだった。 それまで、ひっそりと利用していたユーザーが大半だったと見られるが、それらをきっかけに、「フリーブックス」についての議論がにわかに盛り上がったのがここ数日の出来事だった。
様々な検証がなされ、以前からその動向に注目していた方もその実態についての分析をブログに公開(外部リンク)。周到な運営の身元特定は困難ではないか、とされていた。
しかし、事態が急変したのは、本日5月3日(水)。突然、この「フリーブックス」が閉鎖されたのだ。
アクセスすると、そのトップページには「当サイトは閉鎖致しました。短い間では御座いましたが皆様ありがとうございました。」と短い文章が日本語・英語で掲載されている。
利用者が急増していた違法サイト「フリーブックス」
はてなで話題になったのは5月のことだったが、2017年に入って以降、「フリーブックス」という単語はネット上で見かけるようになっていた。匿名掲示板「2ちゃんねる」にも「フリーブックス」にまつわるスレはいくつも存在する。自作の創作物を共有するサイトと銘打たれているが、その実態は、いわゆる海賊版を共有する違法サイトの一つ。海賊版サイトは、「フリーブックス」以外にも数多く存在しているが、サイトとして使いやすかったのか、中でも利用者が急増していたようだ。自作の漫画コミック・雑誌・同人誌・小説を自由に投稿し皆で共有&読み放題にできるファイル共有サイト 「フリーブックス」より
漫画や小説、雑誌、写真集、そのほかあらゆるものが無料で公開されていた。
例えば最近では、「2017年本屋大賞」の特集が「フリーブックス」で組まれていた。書店員が売りたい本を選ぶはずの賞が、キャッチコピーもそのままに、違法サイトで大々的に特集されている。なんという地獄。
当然、出版社もその存在は認識していた。ただ手をこまねいていたわけではなく、Googleの検索結果から著作権を侵害しているものを強制的に除外するよう求めるDMCA侵害申し立てを行ってきた。
その格闘の様子は、各出版社からの「フリーブックス」に対するおびただしいDMCA侵害申し立ての記録が物語っている。(「LumenDatabase」から「フリーブックス」ドメインを検索すれば、誰でも目にすることができる)
しかし、仮に警察が介入しようにも、ドメインもサーバーも海外に置いているため日本での法律は適用できない。かつ、運営者の身元特定も困難という状況だった。
「フリーブックス」は氷山の一角でしかない
その周到さからして、明らかに組織だった運営がなされていたと思われる「フリーブックス」は、あっけなく閉鎖された。なぜか?度重なるサーバーへの攻撃が関係しているのかもしれないし、注目を集めすぎてこれ以上の運営は厄介だと判断したのかもしれない。
しかし、いずれにしろそのノウハウは確実に積み上がっていたはずだ。1年経たずに「フリーブックス」をここまで大きく成長させたことを考えれば、名前を変えて同じ手法でいつでも再開が可能だからこそ、呆気なく閉鎖したと考えることもできる。
実際、ドメインの登録情報を検索できる「Whois」で調べた結果、サイト名は伏せるが、別の大手違法サイトの運営者と合致するという調査も出ているようだ。当然、そちらは閉鎖していない。
「フリーブックス」がなくなっても、利用するユーザーがいる限り、海賊版とのイタチごっこは続いていくだろう。
正義面するつもりはさらさらないが、いち漫画ファンとして、出版社と作家に利益が還元されず、その影響から自分の楽しむジャンルが痛めつけられる状況は残念だ。
「違法ダウンロードする人間は、無料で公開されていなければもともと購入することはない層だ」という意見も度々目にする。
しかし、創作活動とは過酷なもので、自分の作品が違法でばら撒かれているという事実に心を痛め、筆を折る作家がいないと誰が言い切れるだろうか。事実、違法ダウンロードに屈して創作活動を辞めた作家は存在する。
理性に呼びかけたところで、海賊版利用者は減らない
海賊版を巡っては、実に様々な議論が行われている。著作権に関する法律も、目まぐるしく変動する環境にあわせて、変化を余儀なくされている。2010年には、個人利用の範囲であっても、違法配信されたものであることを知りながらダウンロードする行為は違法となったが、刑罰は存在していなかった。
そこで、2012年には、有料販売または配信されているもので(追記:ただし音楽や映像に限る)、それが違法配信されたものであることを知りながらダウンロードした場合には、「2年以下の懲役または200万円以下の罰金(またはその両方)」が科される刑罰が盛り込まれることになった(外部リンク)。
しかし、お小遣いも少ない、まだ分別もつかない子供たちが、無料で利用できるサイトにいつでもアクセスできる環境にいるのに、理性だけで踏みとどまることは難しいだろう。
「フリーブックス」に限らず、世界的なコンテンツ無料化の流れを押し止めることはできない。いくら法整備をしたところで、誰にも見咎められずに軽々と飛び越えられる法律に抑止力があるとも思えない。
例えば、日本でも、漫画家自身が海賊版に対抗するために、絶版を公開して広告収益を権利者に還元する「マンガ図書館Z」といった取り組みも始まっている(関連記事)。
また、近年では、取り締まりが難しい海外サーバー経由の侵害サイトを強制的に遮断する「ブロッキング」の導入についても議論されている(外部リンク)。
根元を絶つか遮断するかして環境自体を変える、あるいは収益モデルを変革する必要に迫られているのかもしれない。
ただ、「フリーブックス」が急激に注目を集めた結果として閉鎖に至ったように、ネット上で取り沙汰されることで、多少なりと運営がやりづらくなるとは言えるだろう。
たとえそれが終わらないイタチごっこだとしても、声を挙げることは決して無駄ではない。
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1件のコメント
L1Nk 1NV1S1BL3
ブロッキングの導入については、絶対にしてはならない事だと私は考えている。
理由としては単純で、ブロッキングが存在しない国外のサーバー経由でブロッキングされているサイトに入る等の手段を用いて結局の所、技術的ハードルをほんの少し上げただけ、それも単に国外サーバーを経由させる機能を持つだけのプログラムに対し法的な制限は無いのだから、不正の踏み台に出来る(というより不正を前提とした)建前上「不正行為に使わないでください」と言っているだけのプログラマに収益の入りうるプログラムが公開される事が容易に推測できる事から、防止効果は薄い。
防止効果は薄いのに対して、ではブロッキングはどのような基準で、どのような手段で遮断するのだろうか。無意味な人件費を費やす事になりかねず、正当なサイトが誤ってブロッキングされる自体を招きかねず、悪意のあるブロッキング(例として中国の金盾等)に変貌してしまう可能性もある。
最終的にはビジネスモデル的な可能性として、本を買わないと手に入らない特典を付けた上で公式的に無料配信して、自社の他製品の宣伝や、Youtubeなどのように広告を加える事で対抗するのが最も効果的であると私は考えている