カップル共同アカウントをなぜ作る? Twitter/MixChannelに至った「ゥチら」

カップル共同アカウントをなぜ作る?   Twitter/MixChannelに至った「ゥチら」
カップル共同アカウントをなぜ作る?   Twitter/MixChannelに至った「ゥチら」

@dasoroa0(https://twitter.com/dasoroa0)プロフィール画像より引用

3月30日、ニコニコ動画で活躍している歌い手・蛇足さんと社長兼モデル・楠ろあさんがカップル共同アカウントを開設した。

この二人がお付き合いしているという事実と共に、ラブラブな共同アカウントまで開設されたことから、インターネットがざわざわしていたことを覚えている。

共同アカウントというと、「つくる意味あるの?」「なんでつくるの?」「別れたらどうするの?」という否定的な意見が目立つ。しかし、そんな否定的な意見とは裏腹に共同アカウントという文化がここ10年で発達しているのもまた事実である。

そこで今回は共同アカウントが流行している理由とその歴史を考えてみました

今話題となっている共同アカウントとは?

共同アカウント」とは、1つのアカウントを複数人で共有して更新していく一心同体アカウントであり、通称共同アカ(または共同垢)と呼ばれている。

ちょっと違和感を持つ方もいるかと思うが、KAI-YOUのTwitterも共同アカウントだといえる。KAI-YOUメンバーがIDとPASSを共有してみんなで日々つぶやいているので共同アカウントである(もちろんスタッフ全員ではなく限られた人数で運用している)。

企業体やサークルなどのグループでの運用をのぞくと、共同アカウントは友達とカップルの二つに分類される。今回は代表的な例として「カップル共同アカウント」に限定して説明していく。 共同アカウントがもっとも現在最も多く存在するWebサービスに、10代に爆発的人気を誇るアプリ/SNSであるMixChannelとTwitterがまず挙げられるだろう。

昨今、様々なまとめサイトなどで「カップルの共同垢の末路がひどい……」なんて騒がれているが、別に最近はじまったことではなく、10年以上の歴史があるのだ。

カップル共同アカウントの歴史

共同アカウントの一般層への浸透は、2003〜5年にかけて全盛期を誇っていたガラケーに特化したサービス「前略プロフィール」にその源流を見ることができる。

「前略プロフ カップル」画像検索結果

前略プロフィールとは、数十個の質問に答えていくだけで、自分のホームページ(Webサイト)が作成できるサービス。性別に「パコられるほう/パコるほう」なんて書いてた人はいないだろうか?(KAI-YOU見てるような人にはいねえか)

一番下の外部リンクには、短い文章を記録する「リアルタイムブログ」(通称リアル)を貼っていた人は多いでしょう。当時の中高生の間で現在のTwitterのように使われていたような印象がある。

次に流行ったのは「モバスペブック」「エムペ!」「@peps!」の三大巨頭。その後は「デコリアル」が主流になっていった。

なぜ10代の若者世代が共同アカウントをつくるのか?

さて、ここまで黒歴史を突いてきたが、この歴史を踏まえて問題。

なぜ共同アカウントをつくるのか?

なにもわざわざ一緒にアカウントを運営しなくても、しゃべりたかったら個人アカウントでリプライ飛ばしあえばいいじゃん?! と考える人は多いでしょう。これには大きくわけて5つの理由がある。

1. 仲良しさを強調させたい

これが共同アカウントをつくる最大の理由である。せっかく大好きな彼氏・彼女と付き合ったのだから、2人の親密さをアピールしたいのです。幸せをおすそ分けしたいのです。「けーたん大好き♡」「4ヶ月記念日にディズニ行ったよ♡」と思い出を形に残しておくことで「あ〜〜いいな〜〜〜カップル〜〜〜^^」と周りに思われたいのです。

また、共同アカウントを定期的に更新していくことによって、「彼氏(彼女)いなくて〜〜」という嘘も中々つけない。第三者からしても、仲良く投稿している中に、割って入っていくような人は少ないだろう。つまり仲良しさを強調させることによって浮気防止にもつながるのである。

2. 個人アカとの使い分け

Twitterをはじめとした各種SNSでは、アカウントを複数持つ事も一般的に浸透している。学校の友達用、ネット用、病み用、就活用など表と裏アカウントを使い分けている人は多数いる。様々なシーンでアカウントを使い分けの一つとしてカップル共同アカウントがあるのだ。もちろん筆者も複数アカウントを保有している。

筆者のTwitterより

彼氏ができたら嬉しくて嬉しくて、なにもかもが思い出で残しておきたい。でも個人(表)アカで、ラブラブな日常ばかり呟いていたら、嫌がる人もいるかもしれない……。そんな葛藤から共同アカウントは生まれる。

共同アカウントと分かれば大抵の人は内容を察せる。嫌な人は立ち入り禁止ってやつで、心置きなくいちゃつける。誰にも言えない…。言いたくない…。でも自分の幸せを誰かと共有したい…。そんな乙女心は誰でもある。

このような恋愛承認欲求的な葛藤がカップル共同アカウントを生み出す。

3. カップルコミュニティの形成

全項目で触れた「個人アカとの使い分け」と合わせて、コミュニティの形成も大切な要因となっている。

#カップル #カップルさんと繋がりたい #全国のカップルさんと繋がりたい #カップル共同垢 などのハッシュタグが共同アカウントで散見される。これは「カップル」というキーワードを通しで、他のカップルとのコミュニティを形成する文化の一つ象徴的なものだ。

ハッシュタグ「#全国のカップルさんと繋がりたい」検索結果

コミュニティを形成することによって、自分たちのカップルを応援してくれる人が増えたり、遠距離や年の差など境遇が近い人と知り合い、相談し合える相手を獲得できる。また、仲良くなればダブルデートなんてこともできてしまう。

4. クリエイティブセンスの発信場所

このように様々な承認欲求が見え隠れする共同アカウントだが、創作的承認欲求も重要な要素となってくる。まあ簡単に言うとデコるセンスをアピールしたいってことだ。

この欲求がわかりやすく表れているのはMixChannel。MixChannelのカップルカテゴリ「LOVE」では、出会いから、記念日、日常まで二人のラブラブな動画が可愛く加工されて投稿されている。さらに人気カップルになると何万人からものLIKEが送られている。

MixChannelより

あなたの学生時代にも、クラスに数人はいたのではないではないか? プリ帳にセンス良くイラストやシールを貼っていくやつ、ピコミク(mixiが提供していた携帯ゲーム)が異常に上手いやつ、教師の似顔絵が異常に上手いやつ……。

分かりやすくいえば、勉強や運動、ルックス、金といった点を使って現実世界でアピールするのとは別に、現在ではSNSのアカウントが才能を発表する場となっているのである。オタクがニコニコ動画やpixivに作品と称した承認欲求にまみれた何かを投稿することと何も変わりはない。

5. 憧れの対象はSNSインフルエンサー。他のカップルも憧れの対象になる。

ティーン雑誌『POPTEEN』や『egg』でのカップル特集を見たことがある人はいるだろうか? 容姿端麗な男女のモデルカップルが、デートのフォトスナップや、二人の日常についてインタビューされるなどの特集が安定の人気を保っている。私の中高生時代ではつーちゃんと梅しゃんのカップルが人気だった。

『POPTEEN』表紙を飾るつーちゃんと梅しゃん

少し前まではインターネットが今よりも若者に普及してなく、憧れカップルといえば、雑誌のモデルがインフルエンサーとしての代表格だった(つーちゃんは100億円のギャルなんて呼ばれていましたね)。

大倉士門さんのamebaブログ(http://ameblo.jp/316shimon/entry-11268536394.html)より

しかしインターネットやスマホの共同アカウントの誕生・進化と共に、我々一般人でも外に発信する機会が増えた。センスの良いアカウントや動画をつくり、かれぴっぴとラブラブなところを撮っていれば、おのずと注目は集まる。

実際に、これをきっかけにメディアへの取材まで至ったアカウントも事実少なからずはいる。憧れがすぐ近くになったのだ。

別れたあとの共同アカウントはどうなるの?

さて、ソーシャルメディア上におけるカップルの心理について真剣に考えてきたが、別れた後の共同アカウントについての疑問はやはり解消できなかった。

別れた後の共同アカウントは削除されるのが大半だが、名前を「別れました」としてネットの広大な海へと残しておくケースも少なからず見受けられる。

「別れました」でのTwitter検索結果

なぜ残しておくのか? 次の彼氏に見られてもいいのか? 仮に消したとしても転載によってどこかに残る可能性はある。それでも大丈夫なのか。

共同アカウントを運営していた人は是非心情を教えていただきたいのでご連絡をお待ちしております。

「ウチラ文化」って別に意味わかんないカルチャーじゃなくない?

1980年代〜2000年代の閉鎖的でインテリが多かったインターネットと比べて、2010年代はスマートフォンの普及と共にその空気は一変した。

これまでインターネットは、2ちゃんねるをはじめネガティブな意味で「オタク」と呼ばれる閉鎖的な人間の特権的な持ち物だったが、いまでは一般層、ひいては地方のヤンキーやギャルにまでそれは伝播し、当たり前のように利用されている。

この記事を書くキッカケは、KAI-YOU.net編集長の新見さんに「なんで共同アカウントなんてやるの? 中高生マジイミワカンナイ」というようなことを言われたからだ(もっと難しい言葉で言われたけど難しいから忘れた)。

たしかに、共同アカウントカルチャーは10代カルチャーとしてカテゴライズされるが、それは少し雑ではないのか? もちろん10代にもオタクはいるし、しかし「リア充」や「パリピ文化」とするのも限定的すぎる。

承認欲求(有名になりたい)

変身願望(盛れた自分を撮りたい)

所属欲求(コミュニティを形成したい)

様々な欲求や願望が錯綜した結果、「うちらって〜〜じゃん?」という言葉に集約されるのではないかと私は推察する。共同アカウントカルチャーは現代特有の「ウチラ文化」一つである。

ウチラ文化について、別次元の話のように拒絶する人もいるが、もっと身近なものだと考えてはどうだろうか。衝動的な感情や、誰かに認められたい気持ち、同じ趣味を持つ友達ができた喜び……。あの時の青春がみな一様にあったはずである。

この記事を見て共同アカウントを作ったことない人が少しでも共感してくれたらと思う。早く人類が平和になってくれ……。そして滅べ……。

著者近影

以上、かよちゃんでした〜〜〜〜!L( ^ω^ )┘
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