歌い手ウォルピスカーター インタビュー「世界一の高音系男子に俺はなる！」

「変化する需要に対応できていない歌い手さんも多い」

──ウォルピスさんが初めて動画を投稿されたのは2012年。それから足かけ4年ほど「歌ってみた」シーンを眺めてこられたと思いますが、以前とは変わったなと思うことがありますか？

ウォルピス　変わった点でいうと、みなさんの「耳」ですね。ユーザーさんも歌い手さんも耳が肥えている方が多いので、今はCD音源レベルのクオリティじゃないと許されないぐらいです。

──現在の「歌ってみた」シーンはクオリティが高くて当たり前という状態なんですね。それはコメントなどで実感するんですか？

ウォルピス　いや、一番はマイリスト数です。歌い手はマイリスト数を重視しますね。僕が長いことやってきて気づいた法則なんですが、マイリストを見れば、だいたいこの動画はこれぐらいまで伸びるなってわかります。

──マイリストに入れられる楽曲の傾向も変化していますか？

ウォルピス　まず、歌ってみた全体のマイリストの数が減りました。昔は、音痴でも許されたし、動画でふざければふざけるほどモテました（笑）。よっぺいさんという歌い手さんとかがすごい人気でした。

──コメントとかもそういう傾向がありましたよね。

ウォルピス　空耳とか、コメントで絵を描いたりする方がいて楽しかったです！　良い意味で「アホなおっさん」が多かったというか。今の歌い手動画のコメントは、歌い手さんへの愛を叫ぶ方が多い印象ですね。

──歌い手側の変化は感じられますか？

ウォルピス　アイドル的な歌い手が増えたように思います。すごいイケメンで、自分の顔写真をアップする方が多くなってきた。女性の歌い手さんがだいぶ少なくなってきたからかもしれませんね。たぶん、リスナーさんの層がさらに若くなってきて、あくまで僕の肌感覚ですが、男女比も男1：女9ぐらいになっているのではないでしょうか。

──すごいですね。そうすると、歌い手さんの戦略も変わってきているのでしょうか？

ウォルピス　プロモーションの方法は大きくは変わっていないと思いますが、昔と同じやり方じゃダメだって気付いてない人が多いのかなと。昔は「カゲロウプロジェクト」とか、人気シリーズの新曲があがった一時間後とかにはもう「歌ってみた」が投稿されてそれも含めて盛り上がったりしていましたが、今は、人気の曲をただ早く歌ってもあまり意味がないように感じます。

──需要が変わったんですね？

ウォルピス　そうですね。昔はTwitterでの毒舌キャラとかも支持を集めたんですが、今やってもボコボコにされるだけ。そういう意味では、歌い手のファンに女子中高生が多い状態ですから、アイドルの歌い手はやっぱり需要が多い。彼らは時代の流れに適応できているんですよね。すごいなって思います。

──2015年にVIP店長が引退されて、歌い手の世代交代を感じた人も多いと思いますが、ウォルピスさんも感じますか？

ウォルピス　世代交代は感じます。自分が目標にしていた方々のマイリスト数や再生数が減ってきていて、悲しいです。それって、いつか自分もこうなってしまうってことじゃないですか。僕も本当に、新世代の人の動画とか見て、歌が上手すぎて「つらっ！ しんどっ！」って思いますもん（笑）。

歌はサブウエポン？

──そういう時代の変わり目ってどれくらいおきにくるものだと感じますか？

ウォルピス　どうなんでしょうね。2、3年に1回とかっていう感覚ですね。

──CD最盛期のオリコンシーンや商業シーンに比べてもはるかに早いスピードだと思います。お話をうかがってきて、かなり冷静に分析されているような印象ですが、目まぐるしく需要が変わりゆく中で、ご自分としてはその中でどう戦っていこうと考えているんですか？

ウォルピス　新しい世代にうまくフィットしたスタイルを今のうちに探すしかないと思います。だから、僕が常にTwitterにいるのも、時代の兆候みたいなのを見逃さないようにしてるからなんです！ 暇だからじゃないですよ（笑）！

今は、歌だけだと絶対無理だと思うんです。これだけ歌い手がいれば、ジャンルも声質もかぶる上、僕より上手い上位互換みたいな存在はいずれ絶対に出てくるということは覚悟しています。僕は本当は「◯◯ができて歌も歌える」というのを目指していて、歌はサブウエポンで、今はむしろメインウェポンがない状態なんです（笑）！

──初アルバムのリリースタイミングでそんなこと言う人も珍しいと思います（笑）。

ウォルピス　もちろん、これからもニコニコ動画が本拠地であることを忘れず、リスナーさんには常々接するようにはしています。けど、今のうちに何か新しいところに手を伸ばして、つかみとっていきたいと思っています。

──いま手を伸ばしているものはありますか？

ウォルピス　なるべくいろんな事にチャレンジしたいと思っていますが、歌以外にも声の仕事をしてみたいと思っています。歌わずに声を使う仕事。話す、演技する、朗読する。あと、あんまり偉そうなことは言えませんが、歌い手目線で、一日特別講師とかできるかもしれません。需要はあると思います。

僕はこういう活動しているんですが、アドバイスがほしいので聞いてくださいという相談をメールで受けるんです。そういうのを知りたい人は多いみたいですから。

──そういう人たちにアドバイスはありますか？

ウォルピス　なかなか難しいですね……！ 普遍的な方法とか価値観ってないような時代なので。でも、一つ言えるのは「時代に適応しろ」ですかね（笑）。

ちゃんと時代の変化に対応していかないと、逆に自分が出せないままになっちゃうんですよ。僕もあまのじゃくなんですけど、否定するんじゃなくて、受け入れた上で逆のことをする。そうやって今があると思っています。