映画スタジオ・A24が、ホラー/SF作品群・SCP財団をテーマとした映画『V/H/S SCP』の制作に参加したことに対し、SCP財団の英語コミュニティが声明を発表した。
SCP財団とは、世界中のユーザーが超常現象に関する創作を自由に投稿できるコミュニティおよび、その中で共有される世界観。
声明では、今回の映画化に関してコミュニティ側が連絡を受けていないことや、自由な創作を保証するSCP財団のライセンスと映画配給のバッティングへの懸念を説明。
コミュニティ側は「関係者の皆様と、ライセンスに準拠しながら映画を制作・配給する方法について話し合いたい」としつつ「映画制作者の皆様が、私たちのライセンスに基づく法的義務を遵守してくださることを願っています」と綴っている。
『バックルームズ』のヒットを受け、ネット発ホラーが流行
SCP財団は、超常現象を引き起こす「オブジェクト」と、それを収集・保管しようとする財団の活動を描く作品群。
2007年に匿名掲示板「4chan」に投稿されたエピソードをきっかけに流行し、翌2008年には有志がコミュニティWikiを設立。現在は、日本語版、中国語版、ベトナム語版などのWikiも設立され、世界中のユーザーが自由に創作を投稿している。
A24は2026年に、同じくインターネット上の創作コミュニティで発展した都市伝説「The Backrooms」を題材にした映画を公開。世界興収が630億円を超える大ヒットを記録している。
それ以降、各社がこぞって「Siren Head」「Jeff the Killer」などインターネット発祥の怪談を映画化すると発表。一大ムーブメントとなっている。
自由な創作を保証するSCP財団のライセンスと映画配給の衝突
今回発表されたSCP財団の声明の主軸となっているのは、ライセンスについて。
自由な創作を保証するため、SCP財団のコンテンツには、クレジットやリンクを表示するなどの制限を守れば、商業・非商業を問わず再配布や派生作品の制作をできるようにする「クリエイティブ・コモンズ表示-継承ライセンス」が付与されている。

SCP財団に付与された「クリエイティブ・コモンズ表示-継承ライセンス」の詳細/画像はクリエイティブ・コモンズ公式サイトから
同ライセンスに準じた場合、今回のような映画の制作も自由に行うことができるが、その映画もライセンスの適用を受けることとなる。その場合、制作された映画もまた、第三者によるアップロードや派生作品の制作を許容することとなる。
声明ではライセンスに違反した場合について「その個人または組織は、SCP財団Wikiから派生したあらゆる作品を配布する権利をすべて失うことになります」とされている。
SCP財団は過去、不正に商標を取得した人物に乗っ取られかけたことも
インターネットのコミュニティ上で共有されてきたキャラクターや創作が商業作品の題材として注目される中で、こういったトラブルが発生することは過去にも度々ある。
日本でも2005年に、エイベックスのグループ会社が「2ちゃんねる」発のキャラクター・モナーを模したキャラクター・のまネコを商標登録したことが問題となった。
SCP財団をめぐっては、2019年にロシア人男性・Andrey Duksinさんが商標を取得。SCP財団のファンサイトを商標侵害だと主張し閉鎖させたほか、ロシア版SCP財団Wikiの運営権を獲得しようとするといったトラブルが発生。
SCP財団は寄付をつのり、Andrey Duksinさんが取得した商標が不正なものであるとして訴訟を開始。米メディア「Kotaku」の報道では、2022年に商標が失効したとされている(外部リンク)。
同記事ではまた、「Kotaku」がA24へ行った映画『V/H/S SCP』の権利に関する質問への回答として「SCP財団の世界観やその概念に対する独占権を主張するものではなく、他者が独自のSCPベースの作品を制作することを妨げる権利を主張するものでもありません。このプロジェクトは現在開発中で、この世界を創造したコミュニティへのオマージュとして企画されています」とのコメントが掲載されている。
A24が「The Backrooms」のファン作品を削除し批判殺到も
コミュニティがA24に対して慎重な対応を取った要因の一つとして、映画『バックルームズ』をめぐって発生したトラブルの存在がある。
A24は7月に、「The Backrooms」をモチーフにしたファン作品を、販売サービス「Redbubble」から削除。
米メディア「TheWrap」の報道では、映画『バックルームズ』の監督をつとめ、自身も若い頃から「The Backrooms」のファン動画を作成し注目を集めていたケイン・パーソンズさんが、この件に関してA24に直訴したとされている(外部リンク)。
A24はその後、「Redbubble」への申し立てが自動で行われたものであり、撤回の手続きを行っているとの声明を発表。声明の中では「コミュニティの作品群について、いかなる所有権も主張しません。私たちは、ケインのようにそれにインスパイアされたアーティストたちを、これからも支援し続けます」と述べられている。
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