ソーシャルVR・VRChatが、日本時間10月29日(木)に「Where we’re landing on AI in VRChat」と題した声明を発表しました。
この声明は、日本時間10月7日に発表した、VRChatの“生成AI製ワールド”についての公式見解の続報。この際に実施したユーザー向け意識調査の結果の一部と、それに対するVRChat側の見解を明かしています。
声明の骨子を簡潔にまとめると、「AI利用を示すラベルは導入しない」「AIへの賛同を問わず、誤解を招かずガイドラインを守る限りは作品を共有する場所があるべき」。
そして、すでに実施した「誤解を招かないこと」(※)を明記したガイドライン更新に加え、ワールドへの高評価/低評価システム、およびワールドの概要を示す画像を1枚から複数枚へと拡張することを決定したと伝えています。
この声明の背景には、直近のVRChat投稿ワールドと、一部ユーザーの動向について理解する必要があります。本記事にて、それらの背景情報も含めて解説していきます。
※ここでいう「誤解を招く」とは、ワールド入場前の情報と、実際にワールドに入った後の体験の差異があることを指す。具体的にはワールドのサムネイル画像。詳細は本文にて。
前提知識:VRChatにおけるワールドと生成AI利用状況
VRChatでは、ワールド(ユーザーが訪れることができる空間)はユーザーが自主的に投稿することができます。
ゲームを楽しめるもの、作品を展示するもの、没入型MVのようなもの、居心地のよい別荘のようなものまで、その種類は様々です。
そして、近年の生成AI発展の影響ももたらされており、とりわけ「ワールドのサムネイル画像にAI出力画像を使う」流れが加速していました。
VRChatワールドは、基本情報として説明文やタグ以外に、サムネイル画像を1枚設定できます。この画像は、ワールドへ入場する前に「どんなワールドなのか」を確認することができる手がかりとなります。
しかし、直近では実際の空間とは乖離した“華美なイメージ画像”がサムネイル設定される事例が増加。「きらびやかな空間を想像して入場したら、実際には簡素なもので肩透かしを食らう」というケースが、たびたびユーザーから報告されるようになりました。
こうしたケースは、生成AI以前からたびたび発生しているもの(いわゆる「釣りサムネ」的な概念)なのですが、生成AIの登場によって頻発するようになっています。

「華美なAI生成ワールドサムネ」の一例(筆者がGeminiで生成)。このサムネイルの光景が、実際のワールドには一切ない or 低質なものであることがたまにある。
そして、9月に公開されたOpenAIの大規模言語モデル「GPT‑6 Astra」が、3DCG制作ソフト・Blenderなどを操作し、3D空間を構築できることが話題になったことで、空間そのものをAIに生成させたワールドも登場しました。
本記事執筆時点でも、そうしたワールドは順調に数を増やしつつあります。
発端は英語圏VRChatユーザーらの「NO AI」運動
そんな中、英語圏VRChatユーザーの一部が「NO AI」というVRChat内グループ(※SNSにおけるコミュニティ機能に相当するもの)を発表。
AI製ワールドなどが増えつつある直近のVRChatの在り方に異を唱え、AI非使用ワールドへの「NO AI」キャンペーンロゴ掲示、グループ加入の呼びかけが行われました。
そして、この呼びかけに呼応した少なくないクリエイターが「NO AI」キャンペーンロゴをワールドサムネイルに掲示。VRChatの新着ワールドコーナーに、「NO AI」の文字列が並ぶ事態になりました。
こうした動きを受けて、VRChat運営は10月7日に「Regarding AI Usage on VRChat」と題した声明を発表(外部リンク)。
この中で、AI製サムネイルによって「ユーザーに誤解を与えること」を問題視したこと、そしてクリエイターガイドラインを更新し、「ユーザーに誤解を与えるコンテンツ」をNGとしたことを伝えました。
一方で、AI利用そのものについては「複雑なテーマ」とコメント。
AIによる粗製乱造コンテンツ(通称「AI Slop」)は問題視しつつ、タグ付けによる棲み分けなどについては複数の検討軸があり、容易に決定できない事案であることを説明しました。
コミュニティの皆さんがこうした問題について議論している様子も、私たちは見てきました。
タグを付けるべきか、付けるならどんなタグにするのか。そのタグは何を意味するのか。AIの使用を検出できるのか。クリエイターが自分のコンテンツに正しくタグを付けると信頼できるのか。ルールに従ったことで嫌がらせを受けたらどうするのか。誤ったタグが付いたワールドを、皆さんが正確に通報してくれると信頼できるのか。通報の正しさをどう確認するのか。このようなコンテンツに、どうすれば責任を持ってタグを付けられるのか。
この数週間、私たちはこれらの問いについて徹底的に議論・調査を重ね、これまでに寄せられたフィードバックにも目を通してきました。「Regarding AI Usage on VRChat」より引用

VRChat運営が明かした「VRChatの制作におけるAI利用」の見取り図/画像は「Regarding AI Usage on VRChat」より引用
そして、現時点ではAI生成であることを示すタグやフィルター導入は「慎重に検討する」とコメントしつつ、ユーザーの見解を集めるためにアンケート調査を実施しました。
この記事どう思う?
関連リンク


0件のコメント