95%がAIラベルが必要と回答──しかし定義はバラバラ
では、10月上旬に実施したアンケートの結果はどうなったのでしょうか?
今回VRChatは、アンケートは1週間で21,595人から回答が寄せられたこと、そしてクリエイターへの個別インタビューと社内議論を経て、改めての見解と今後の方針を発表しました。
まずは、ワールドに付与するAI利用ラベルについて。これは回答者の95%が導入を望んでいるとの結果が得られたといいます。
一方で、「なにをもってAI利用ラベルを付与するか」については、アンケート内の8つの例示カテゴリの組み合わせが3141通りにもおよび、かつ、いずれの回答も全体の10%を超えなかったと伝えています。
そしてこの結果から、「拙速な判断を下さず、この問題をより深く理解してから決断すべきである」という見解をVRChat運営は下しています。
なお、AIの支援を受けて制作されたワールドを、意図的に避けると回答したのは全体の3分の1(33%)。そして自由記述の回答者のうち37%から「人間が創作の主体なら、道具としてAIを利用するのは構わない」という趣旨の回答が得られたことも伝えています。
また、回答者の81%が「誤解を招くサムネイルへの対策」を「とても有用」と回答。「品質を評価する発見機能」も72%、「ゲーム内フィードバック」も69%が「とても有用」回答しており、これはAI利用者を含めて見解が割れにくかったともコメント。
一方で、「AIを全面的に拒むことに誇りを持つクリエイター」とその支持層がいること、逆に長年活動しているクリエイターの中にはAIを試しているが、公表すると嫌がらせを受けるのを恐れて作品を出せない人がいることも報告しています。
「犯人探しを招きかねない」──AIラベルの導入を見送った真意
これらのアンケート結果から、VRChat運営はAIを積極的に使う人、絶対に避ける人、その中間に立つ人のいずれも、ガイドラインを守る限り作品を共有する場所があるべきだ、という姿勢を表明。
そして、ガイドライン改定による「正確なワールドサムネイル画像の設定」の遵守推進、ワールドへの高評価・低評価システムの導入(2026年中目標、遅くとも2027年初頭)、サムネイル以外の画像を複数枚ワールドに設定できる機能(2027年上半期)の追加を進めていくと表明しました。
また、AI不使用を自己申告する「Human-authored(人間制作)」マークや、使用ツールの表示欄も検討中としており、2027年第1四半期末までに続報を出すとしています。
導入する場合は任意で、ワールド詳細ページにのみ表示し、ランキングには影響せず、マークが無いことを非難や通報の対象にはしないとのこと。「AI生成」ではなく「人間制作」を示す方向に傾いている理由として、AI利用の申告が"自白"のように感じられてしまう点を挙げています。
また、ワールドに使用したツールの表示欄、クリエイターのフォロー機能なども検討事項として挙げています。
さらに、生成AIを含む特定のツール使用有無に起因する嫌がらせは「ハラスメント行為」とし、こうした嫌がらせからユーザーを保護する姿勢も鮮明にしました。
対して、AI使用ラベルについては、正直に運用する人もいれば偽って運用する人もいること、そしてAIを使っているかどうか嗅ぎ回る行為や、実際にAIを使っていない人への嫌がらせといった、“sleuthing”(いわゆる「犯人探し」)を引き起こしかねないとして、導入はしないと説明。
また、AI製ワールドのフィルタリング機能についても、「一度設定すれば二度とその領域を見ない」と指摘し、そこからさらなる問題が引き起こされ得ることを理由に、導入を見送るとしています。
「誰にとっても未知の領域」を、どう歩むべきか
約2万人もの回答者のほぼ全員が必要性を感じるものの、その具体的な定義はバラバラ。ゆえに、仮にルールを一つ決めてラベルを導入しても、その解釈差により再び論争が起こり得る。
そして、個々人の定義がバラバラな概念をめぐる、いわば“魔女狩り”的な行為が起こり、それを引き金にAI賛成派だけでなく中間層(例えば、無関心ゆえにアンケート回答はしていない人)の離脱、それに伴うプラットフォーム外部への悪評の流布といった連鎖も起こりかねません。
VRChat運営が今回のアンケート結果から、今回明確にAI使用ラベルの導入を見送ったのは、UGCプラットフォームならば絶対に避けたい大事故を防ぎたいという意図も感じられます。
一方、ワールドの品質という根本的な問題へのアプローチとして掲げられている高評価/低評価システムについては、VRChat運営は不正操作や作り込みに時間のかかるワールドが不利になるリスクを認識。「コンテンツを評価したユーザーの活発度合い」などをも考慮に入れたシステム構築を進めるとしています。
「誰にとっても未知の領域」とVRChat運営も認める生成AIの使い方をめぐり、プラットフォームとユーザーの双方のバランスを目指す、難しい舵取りがしばらくは続きそうです。
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