
SCP財団(SCP Foundation)
概要
SCP財団の原点は、2007年6月22日に4chanの「/x/」へ投稿された短い怪談「SCP-173」である。
コンクリート製の彫像のような存在が、人間に見られている間は動かないものの、視線を外すと高速で移動して人を殺害するという内容だった。
SCP-173は、一般的な怪談のように語り手が恐怖体験を説明するのではなく、「アイテム番号」「オブジェクトクラス」「特別収容プロトコル」「説明」といった項目を持つ、無機質な研究報告書のような形式で書かれていた。
その形式が注目を集め、他のユーザーも同様の報告書形式で架空の怪異を投稿。2008年1月には作品を集積するためのWikiが開設され、同年7月には現在につながるWikidot上のSCP Wikiへ移行した。
以降、英語圏だけでなく、日本語、韓国語、中国語、フランス語、ロシア語など複数言語のコミュニティへ拡大した。
ホラー、SF、怪談、コメディ、歴史改変など幅広いジャンルを内包し、特定の原作者や単一の「公式ストーリー」が存在しないことを特徴とする。
ゲーム『SCP - Containment Breach』などを通じて世界的に知名度を拡大。日本では2013年に日本語版「SCP財団」は2013年7月8日に開設。日本独自のSCP作品も多数制作されている。当初は英語版作品の翻訳と並行して、日本独自の作品「SCP-JP」の制作が進み、独自の世界観や創作文化を形成している。
基本情報
- 名称:SCP財団
- 英語表記:SCP Foundation
- 起源:2007年6月22日
- 発祥:4chan「/x/」
- 最初の作品:SCP-173
- Wiki開設:2008年
- 日本支部開設:2013年7月8日
- 主なジャンル:ホラー、SF、怪談、ファンタジー、コメディ、歴史改変など
- 主な作品形式:SCP報告書、Tale、小説、アートワークなど
- ライセンス:Creative Commons Attribution-ShareAlike 3.0(CC BY-SA 3.0)
- 日本支部の作品表記:SCP-○○○-JP
- 主な派生作品:『SCP - Containment Breach』『SCP: Secret Laboratory』『反ミーム部門は存在しない』など
架空の秘密組織
作品世界におけるSCP財団は、人類社会に知られていない異常存在「アノマリー」を秘密裏に確保・収容する巨大組織である。
「SCP」という名称は「Special Containment Procedures(特別収容プロトコル)」を意味すると同時に、財団の理念「Secure, Contain, Protect(確保、収容、保護)」にも対応している。
財団は、超常的な能力を持つ生物、常識では説明できない物体、異常な空間、概念、情報、現象などを一般社会から隔離する。
基本的な目的は異常存在を破壊することではなく、人類社会へ影響が及ばないよう「収容」し、その性質を研究することにある。
この架空組織の設定を共通の土台として、多数のユーザーが自由に怪異や物語を追加していくことがSCP財団の創作システムとなっている。
「報告書」が物語に
SCP財団を特徴づける最大の要素の一つが、物語を「研究報告書」の形式で提示することである。
一般的なSCP記事では、
- 「アイテム番号」
- 「オブジェクトクラス」
- 「特別収容プロトコル」
- 「説明」
- 「補遺」
などが記載される。
文章は行政文書や科学論文のような事務的・客観的な文体で書かれることが多い。
しかし読み進めるにつれて、実験記録、インタビュー、事故報告、削除された情報などから、その異常存在が何を引き起こしたのかが徐々に明らかになる。
「[データ削除済]」「[編集済]」といった検閲表現も多用され、情報が隠されていること自体が恐怖や想像力を生み出す演出として機能している。
文章のフォーマットそのものを物語装置として利用した点は、SCP財団がインターネット怪談文化に与えた大きな影響の一つとなった。
Safe、Euclid、Keter
CPには、その異常存在をどれほど容易に収容できるかを示す「オブジェクトクラス」が設定される。
代表的なものが「Safe」「Euclid」「Keter」である。
Safeは比較的安定して収容できる存在、Euclidは性質が不明確または予測困難な存在、Keterは継続的な収容が非常に困難な存在を意味する。
これらは単純な「危険度」を示すものではない。
例えば、人間を即死させるほど危険でも箱に入れておけば絶対に外へ出ない存在ならSafeになり得る。一方、ほとんど人間へ危害を与えなくても収容そのものが難しければKeterに分類される場合がある。
そのほか、異常存在の収容に利用される「Thaumiel」、収容不能で世界規模の破滅につながる「Apollyon」など、作品の発展とともに様々な分類が生まれている。
「正史が存在しない」巨大な共有世界
SCP財団には、シリーズ全体を統括する単一の「正史」は存在しない。
ある作品では財団が世界各国を上回る巨大組織として描かれる一方、別の作品では資金不足の組織として描かれる場合もある。
財団の設立時期、職員、組織構造、世界の歴史なども作品によって矛盾する。
公式Wikiではこの考え方を一般的に「There is no canon(唯一のカノンはない)」と表現している。
一方で、複数の作者が設定を共有してシリーズを制作する「カノン」も存在するため、「設定が存在しない」のではなく、多数の異なる世界線や解釈が並立している状態に近い。
作者は過去の全作品と設定を一致させる必要がなく、最低限のSCP財団という枠組みさえ共有していれば、新しい世界観を自由に構築できる。特定企業がIP全体の設定を厳密に管理する一般的な作品とは異なり、矛盾そのものを許容することで巨大化してきた共同創作文化である。
多数の作者が作品を追加し、それを別の作者が引用し、ゲームや映像のクリエイターがさらに再解釈することで世界観が拡張してきた。
共有されたフォーマットと最低限の設定、Creative Commonsライセンスによって、数千・数万規模の作品が互いに緩やかにつながっている。
2000年代の掲示板文化、Wiki文化、ネットロア、ゲーム実況、動画文化、二次創作といった複数のインターネット文化を横断しながら成長した点で、SCP財団はWeb時代を代表する共同創作プロジェクトの一つといえる。
A24が『V/H/S』シリーズとして映画化
2026年9月、映画スタジオA24が、SCP財団を題材とする長編映画『V/H/S: SCP』を製作することが報じられた。
A24はSpooky Pictures、Image Nation Studiosと共同で製作し、2027年の劇場公開を予定。A24が同映画の世界配給権を取得している。
本作は、ファウンド・フッテージ形式のホラーアンソロジー『V/H/S』シリーズの新作として制作される。
プロデューサーには、『V/H/S/94』『V/H/S/99』『V/H/S/Halloween』などを手がけたジョシュ・ゴールドブルーム、マイケル・シュライバーらが参加。Spooky Picturesからはロイ・リー、スティーヴン・シュナイダーが製作に名を連ねている。
ストーリーや登場するSCPなど、具体的な内容は2026年9月時点では明らかにされていない。
A24は、インターネット発の怪異「The Backrooms」を原作とした映画『Backrooms』も製作しており、SCP財団の映画化も、ネットロアや共同創作文化から生まれたホラーを劇場映画へ展開する流れの一つとなっている。
SCP Wiki運営は「映画制作側から連絡を受けていない」と声明
一方、映画化発表後の2026年9月12日、SCP Foundation Wikiのライセンスチームは声明を発表。
SCP Wikiのスタッフおよび作者は『V/H/S: SCP』の制作について事前に相談や連絡を受けておらず、映画の製作者や配給会社へ連絡を試みているものの、現時点ではコミュニケーションが取れていないと説明した。
SCP財団の作品群は「Creative Commons Attribution-ShareAlike 3.0(CC BY-SA 3.0)」で公開されている。
そのため、条件を守れば企業を含む第三者がSCP財団を題材とした商業作品を制作すること自体は可能であり、SCP Wiki運営から通常の意味で「映画化権」を取得する必要はない。
一方、SCP Wiki側は、A24を含む特定企業が「SCP財団」そのものについて独占的な権利を取得することはできないと説明している。
また、SCP Wikiをもとに制作した派生作品には、原作者や出典の表示に加えて、原則として同じCC BY-SA 3.0ライセンスを適用する必要がある。
SCP Wikiのライセンスチームは、A24やSpooky Picturesなどと協議し、Creative Commonsライセンスを遵守した形で映画を製作・配給する方法について話し合いたいとの意向を示している。
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