概要
投稿では、現実から誤ってnoclipすると「Backrooms」へ落ち、古く湿ったカーペットの臭い、黄色一色の空間、最大音量で鳴り続ける蛍光灯、約6億平方マイルにも及ぶ無秩序な部屋の中へ閉じ込められると説明された。
さらに「近くで何かが徘徊している音が聞こえたなら、それは既にこちらの存在に気づいている」という趣旨の一文が添えられていた。
この極めて短い設定をもとに、Reddit、YouTube、TikTok、Wikiなどのユーザーが新しい空間、怪物、ルール、物語を追加。後に「Level」「Entity」「Object」などの概念が形成され、巨大な共同創作世界へ発展した。
一方、The Backroomsには単一の公式設定/Canonが存在するわけではない。主要なWiki同士でも設定は異なり、2019年の原典だけをThe Backroomsと捉える作品から、無数のLevelやEntityが存在する巨大異世界として描く作品まで、多数の解釈が並立している。
2022年には、当時16歳だった映像作家・Kane Pixelsことケイン・パーソンズがYouTubeで短編映像「The Backrooms (Found Footage)」を公開。ファウンド・フッテージとアナログホラーの形式でThe Backroomsを映像化し、世界的な反響を獲得した。
同シリーズをもとにA24が長編映画『バックルームズ』を制作。ケイン・パーソンズが監督を務め、2026年5月29日に全米公開された。A24作品として歴代最高の世界興行収入を記録する大ヒットとなり、日本では同年9月4日に公開された。
匿名掲示板に投稿された一枚の写真から、集合的な二次創作によって世界観が拡張され、YouTube、ゲーム、映画へと発展した、2010年代末以降のインターネットホラーを代表するネットロアである。
一枚の「不穏な画像」が起点に
The Backroomsの起源となった写真には、黄色がかった壁紙で仕切られた部屋、ベージュ色のカーペット、規則的に並ぶ蛍光灯が写っている。
家具も人間も存在せず、部屋が何のためにつくられた場所なのかも分からない。写真自体はThe Backroomsという怪談が生まれる以前からインターネット上に存在していた。
確認されている範囲では、2018年4月に4chan「/x/」の「呪われた画像」を共有するスレッドへ投稿されている。
2019年5月12日、「見るとなぜか不安になる画像」を募集する別のスレッドへ再び投稿され、別の匿名ユーザーが短い文章を付けたことで「The Backrooms」という怪談が成立した。
空間が主役
原典の文章では、The Backroomsに「何か」がいる可能性が示唆されている。しかし、具体的な姿は描写されない。
そのため初期The Backroomsの最大の恐怖は、モンスターに襲われることではなく、出口のない空間へ永遠に閉じ込められることだった。
後の共同創作では多数のEntityが追加され、ゲーム作品でも怪物から逃げる要素が一般化した。
一方、原典に近いThe Backroomsを好むユーザーからは、怪物や複雑な設定を増やしすぎることで「何も存在しない空間」の恐怖が失われるという考え方も存在する。
原典には「Level 0」は存在しない
現在The Backroomsを検索すると、最初の黄色い空間は「Level 0」として説明されることが多い。しかし、2019年の4chan投稿には「Level 0」という名称は存在しない。
描写されていたのは、黄色い壁紙、湿ったカーペット、蛍光灯、果てしなく続く空間と、どこかに「何か」が存在している可能性だけだった。
「Level」という分類は、その後ユーザーが世界設定を拡張する過程で生まれたもの。
現在の主要なBackrooms Wikiでは、黄色い空間をLevel 0、その先にある異なる空間をLevel 1、Level 2などとして整理している。
後発の共同創作では、The Backroomsを巨大な異世界と捉え、内部を「Level」と呼ばれる複数の空間へ分類する文化が生まれた。
Levelは必ずしも黄色いオフィスのような場所とは限らない。
倉庫、地下通路、ホテル、学校、屋外、都市、プール、自然環境など、作者によって様々な空間が制作される。
それぞれに危険度、侵入方法、脱出方法などを設定し、「実際にその場所を探索した人物による記録」のような文章で紹介する形式も定着した。
単純な怪談から、無限に新しいマップを追加できるゲームのような世界設定へ変化していった。
SCP財団との類似と違い
ユーザーが怪異を創作し、データベース形式で共有することから、The BackroomsはSCP財団と比較されることも多い。
SCP Foundationでも、不特定多数の作者が架空の怪異や組織を共同で制作する。一方、The Backroomsは創作Wikiそのものからはじまったわけではない。
匿名掲示板に投稿された一枚の画像と数行の文章が先に存在し、その人気を受けて後からWikiや体系化された設定がつくられた。
匿名の一発ネタに近かった怪談が、ユーザーの参加によって後から巨大な共同世界へ変化した点にThe Backrooms独自の成立過程がある。
A24が映画化
2023年、映画スタジオA24がKane PixelsによるThe Backroomsシリーズを『Backrooms』として映画化すると発表。ケイン・パーソンズ自身が監督を務めることになった。
物語では、家具店の地下で現実には存在しない空間への入口を発見した店主・クラークがThe Backroomsへ迷い込む。
原点となった写真が「かつて家具店だった建物」で撮影されていた事実を想起させる設定にもなっている。
YouTubeシリーズでは3DCGによってThe Backroomsを表現していたKane Pixelsだが、長編映画では巨大な実物セットを建設した。セットの広さは約3万平方フィート、約2800平方メートル。テニスコート約10面分に相当する規模で、スタッフが実際に迷子になることもあったという。
一枚の写真から想像された「存在しない場所」が、映画化によって現実の巨大建築物として物理的につくられるという逆転が起きた。
2026年5月29日に北米公開。初週末だけで全米興行収入8100万ドルを記録し、全米1位となった。公開後わずか10日間で世界興行収入2億ドルを突破し、A24史上最高の世界興行収入を記録した作品となった。
2026年7月には世界興行収入3億5000万ドル突破も報じられている。
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