デジタルの進化やインターネット登場以降、音楽の作り方~伝え方~伝わり方に変化が起きている。
イトヲカシという2人組ユニットをご存知だろうか?
『ニコニコ動画』を中心に活動している人気の歌い手、伊東歌詞太郎と、人気ボカロPとして活動しているレフティモンスターによるデュオだ。
彼らのサウンドは、誤解を恐れずにいえば、路上ライブがキーワードとなっている。メディアやネット上ではお面を被り顔出ししていないので、“覆面をしているゆず”とでもいえばわかりやすいかもしれない。歌詞、サウンド、歌唱がエモーショナルでストレートに胸に突き刺さってくるナンバーを発信している。
若い世代に人気な『ニコニコ動画』での活躍から、全国の中高生に絶大なる人気を持つイトヲカシ。二人のTwitterフォロワー数は合わせて30万を越えている。ソロとしてのそれぞれの活躍は、『ニコニコ動画』に詳しい人ならば説明の必要がないほどの人気クリエイターなのだ。
実は、中学時代からの同級生で、もともとバンド仲間だった伊東歌詞太郎とレフティモンスターが、1stミニアルバム『ホシアイ』を自主制作盤でリリースしたことで、新たなプロジェクトは加速する。『ホシアイ』に手応えを感じた二人は6月にイトヲカシを結成。その後、10月に2ndミニアルバム『音呼治心』、そして2013年11月には3rdミニアルバム『軌唱伝結』をリリースしたことで、さらなる人気を集めてきた。
もともと、バンド志向の強い二人はライブ活動を大事にしていたが、ネットに楽曲をアップしてきた『ニコニコ動画』での人気から、地方にもたくさんのファンが生まれていた。しかし、距離の問題でライブを直接生で届けることは出来ていなかった。
そんななか、ある思いが生まれたという。
「本当にみんなに歌が届いているんだろうか? みんなに感謝の気持ちが届けられてるんだろうか? もっとライブをやって直接歌を届けたい。直接会って感謝を伝えたい。でも都市圏だけのライブでは、イトヲカシのライブが見たくても、遠方で見に行けない人がいっぱいいる・・・じゃあ自分たちで会いに行こう!」
そこで、2013年3月~4月には『イトヲカシ全国路上ライブツアー~はるかぜのやくそく~』を実施。文字通り、全国のストリートで、メンバー自ら会場の許諾申請をおこない、自ら車を運転することで大規模なツアーを続けてきた。収入源は自ら手売りするCDアルバムだ。
結果、北は宗谷岬、南は鹿児島まで、「個々のライブで度々訪れている東名阪を除いた」31箇所の路上で12,000人以上を動員。CD手売り枚数は1万枚を越えている。
ネット発ということで、海外からの人気も高かった彼らは、同年11月に『Anime Festival Asia 2013@Singapore』、2014年6月には『Funan Anime Matsuri@Singapore』へ出演。さらに『世界路上ツアー』としてタイ~シンガポール~フランス~オランダでも路上ライブを実現している。
これらの経験から、全国路上ライブ完走を受けて作られた、ファンへの感謝として生み出された楽曲「やくそく」も存在する。ミュージックビデオでは全国を巡られた模様が、ドキュメンタリー風映像に仕上がっていて感動的だ。
20世紀的な考えであれば、かつてのスターは、ストリートライブを重ねることで人気を集め、メディアに登場し、CDアルバムをリリースすることで人気を獲得してきたことだろう。しかし、順番が真逆となるイトヲカシは、インターネット上で楽曲をオープンに発表することで人気を獲得しファンを形成した上で、全国のストリートへ自らがファンに会いに出向いている。ストリートでの良き雰囲気、熱量の高さは、ライブ写真を見ていただければ伝わることだろう。
音楽活動でデジタルやインターネットを使うことに否定的な方はいるかもしれない。しかし、イトヲカシは自分たちの音楽を、デジタルやインターネットを“ツール”として活用し拡散させ、アナログ的に全国をくまなく巡ることで収束させていく。そこでの生ライブによって熱量は人づてに伝播し、『ニコニコ動画』での再生回数や、Twitterフォロワーがアップしていく好サイクルは見逃せない。
イトヲカシは、2014年も「去年行けなかった所にも全部行く!」というコンセプトのもと、9月2日の北海道から、10月4日の沖縄まで全国路上ライブを実施。結果2年かけて、個人でのライブも含めた形で、全都道府県での歌唱を達成したのだ。
彼らの音楽はとても王道のポップミュージックだ。突飛なものでは決して無い。そんなサウンドを中高生がフラットに楽しんでいること、手売りのCDを喜んで購入していること。そしてメンバー自ら日本中を、そして世界を練り歩いている姿に、音楽シーンの希望を感じたのだ。ネットやソーシャルはあくまでもツール。それを動かすのは楽曲であり、それを届けたいと願う信念だということを、イトヲカシは教えてくれた。
今後もイトヲカシとして様々な活動を予定しているとの事で、今後の展開が楽しみだ。
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