「とりあえず主題歌を依頼した」ではない、様々なクリエイターが集う「ANMC」での制作
──ゲーム、音楽、MVが相互に影響を及ぼしていくという制作過程は、完成度が高まる一方で、完成形が見えづらいという側面もあったのではないでしょうか?
Kazuhide Oka よくおわかりで……まさにその通りなんですよ!
むト・kahoca (笑)。
Kazuhide Oka 『ムーンレスムーン』の場合は、「ANMC」としてKAMITSUBAKI STUDIOとの展開が決まった時点で、シナリオが完成していました。
なので、ゲームの本格的な開発作業と同時並行で、楽曲制作やレコーディングをやっていく流れだったんですけど、本当に大変でした(笑)。
──やはり個人制作とは違いましたか?
Kazuhide Oka そうなんです。「僕たちはいったいどこを目指してるんだ……!?」と、僕自身悩んだところではあります。
ただ、ベースになる物語が完成していて、そこに込めたテーマやメッセージを、コンポーザーやシンガーの方々にも共感いただけたのは良かった。
僕と参加してくれたクリエイターの方々との間で、大きな齟齬がなかったのはとてもありがたかったですね。
「ANMC」というプロジェクトでは、一つの物語や世界観を踏まえて、クリエイターの方々が自分で「私も確かにこう思う、こんなふうに解釈したよ」という風に制作してもらえたらいいと思っています。
──つまり、プロジェクトにおいてご自身でコントロールできない部分も含めて、作品として世に出していくのが「ANMC」であると?
Kazuhide Oka そうですね。確かに方向性は多少ブレるかもしれない。でも、根底にあるテーマについてはブレない──ここまでの制作期間で、クリエイターの方々とのやり取りを踏まえて、そう確信しています。
クリエイターそれぞれが解釈した『ムーンレスムーン』が集まることで、『ムーンレスムーン』というコンテンツは完成する。それこそが「ANMC」としてやるべきことだと考えています。
結果的に、こうした制作方法が『ムーンレスムーン』はもちろん、「ANMC」の特徴になりました。一般的な「主題歌を依頼/担当しただけ」という方法とは異なり、「ANMC」のアイデンティティと言えるような部分として、手応えを感じています。
初めて触るテキストアドベンチャーとしての『ムーンレスムーン』
──『ムーンレスムーン』は8月8日にリリースされました。最後に、プレイされる方には、どのように楽しんでもらいたいですか?
kahoca 『ムーンレスムーン』の世界観はすごく綺麗で、現実離れしてるようでいて、ちゃんと寄り添ってくれるものだと思います。
自分と向き合う中で生まれるどうしようもない気持ちや、どうしてそう感じるのかわからない寂しさが、ずっと潜んでるような印象を受けました。
純粋に情景や曲の美しさを楽しんでいただくのもいいし、自分の経験と重ねて没入してもらうのも素敵なんじゃないでしょうか。
むト Okaさんのお話でもあったように、ゲーム内ではヨミチが迷って悩んで、いろいろな世界を経験して、自分の世界のあり方を探していきます。
それはヨミチに限らず、みんなそれぞれ「自分はどこに行けば、何を目指せばいいんだろう?」と考えたり、学校や会社とまた別のコミュニティがあったりするように、誰しもいろいろな世界の中で、悩んでいる部分だと思います。
自分だったらどうするかと考えながら、『ムーンレスムーン』を通して自身が生きる世界と向き合ってもらえたら嬉しいです。
Kazuhide Oka 僕はいまだに、KAMITSUBAKI STUDIOで前例のないテキストアドベンチャーゲームをつくるというのは、本当に途方もないことだなと感じています(笑)。
今一番気になっているのは、『ムーンレスムーン』が、KAMITSUBAKI STUDIOのファンの方、kahocaさんやむトさんら参加してくれたクリエイターのファンの方に、どう受け止められるのかということです。
「ANMC」として参加した8月8日の「KAMITSUBAKI FES ’24」で、このゲームを知ってくださる方もいたと思います。
そういう方々に、「むトさんのこういう歌い方も素敵だね」とか、「kahocaさんのこういう曲もいいね」とか、もっと言うと「KAMITSUBAKI STUDIOがゲームをやっていくのもいいかもね」と思ってくれるようなものになっていたら──それが今の正直な気持ちです。
──『ムーンレスムーン』でテキストアドベンチャーゲームを初体験するという人も多いかもしれません。
Kazuhide Oka 実は「プレイできるミュージックビデオ」というコンセプトも、普段ゲームをしないような人でも手に取りやすいようにと思って考えました。
初めて触れるテキストアドベンチャーとして、MVのような画面の『ムーンレスムーン』なら、多少ハードルは低くなるかな……?
そういう人たちに「テキストアドベンチャーゲーム、いいじゃん!」「このジャンルを知れて良かった」と思ってもらえたなら、僕としては最高に嬉しいですね。
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