日本銀行が7月3日(水)、千円札、五千円札、一万円札の新紙幣発行を開始しました。
旧紙幣から約20年ぶりにデザインが刷新され、肖像も変更。一万円札の顔は福沢諭吉さんから渋沢栄一さんに、五千円札の顔は樋口一葉さんから津田梅子さんに、千円札の顔は野口英世さんから北里柴三郎さんになります。
日本銀行によれば、新紙幣は順次、準備が整った金融機関の窓口やATMなどから入手できるとのこと。
新紙幣発行に伴い、日本社会にも大きな影響が予想(※)されていますが、メディア・文化・コミュニケーションの領域にも少なからず変化がありそうです。
これまでの肖像の名前が紙幣の比喩表現として使えなくなっていく──福沢諭吉が一万円札の比喩表現として成立しなくなっていくのではないでしょうか。
※第一生命経済研究所は、新紙幣発行に伴う直接的な特需は約1.6兆円見込めると試算しています(外部リンク)。
約40年間、一万円札の顔をつとめた福沢諭吉
明治時代の思想家であり、慶應義塾大学の創立者としても知られる福沢諭吉さん。
福沢諭吉さんが一万円札の肖像になったのは、新紙幣から数えて2世代前となる1984年(樋口一葉さん、野口英世さんは2004年にそれぞれ紙幣の肖像に採用されました)。
約40年という昭和・平成・令和を跨いだ在任期間の長さもあってか、「諭吉が飛ぶ」「諭吉n人分」など一万円札の比喩表現として“諭吉”は親しまれてきました。
“福沢諭吉”という喩えが通じなくなる時代
それはポップカルチャーにおいても同様。
お金に関する表現や演出(お金を使う/お金を稼ぐなど)として、福沢諭吉さんが漫画やアニメの中で描かれたり、歌詞や文学の一節に登場したり……枚挙に暇がありません。
特にお金に関わることを歌うことが多い日本語ラップシーンでは影響が大きそうです。
もちろん新紙幣の発行によって、今すぐに福沢諭吉さんが一万円札の比喩表現として通じなくなることはないでしょう。
しかし、かつて聖徳太子が一万円札の肖像だったことを知らない世代がいるように、いずれ福沢諭吉さんが一万円札の肖像だったことを知らない世代も出てくるはず。
なお、すでにヒップホップクルー・舐達麻は「胸に諭吉の束 栄一にもよろしく」というパンチラインを2019年時点で残しており、慧眼と言わざると得ません(渋沢栄一の地元である埼玉県深谷市に関係の深いBADSAIKUSHさんが歌っている点でも、非常に完成度の高いラインだといえるでしょう)
特定の記号や表象がある意味を獲得する、あるいは喪失することは日々起きていることですが、今まで当たり前だったことが変化していく──なんだか寂しさを覚えてしまうのは仕方がないことかもしれません。
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