ソフトバンクの孫正義社長が「25年間この日が来ることを夢見て来ました」とまで意気込みを語り、6月に開催された記者会見で発表された世界初の感情認識パーソナルロボット「Pepper」。
制作したのが海外の会社だということもあって、これまでその全容は謎に包まれていた。
そして、9月20日(土)に満を持して開催された「Pepper Tech Festival 2014」では、デベロッパー達が待ちに待った詳細の発表と、Pepperの「デベロッパー先行モデル」の予約が開始された。
今回は、Google Developer Expertの安生真さん・チームラボ代表の猪子寿之さん・ロボット工学者の石黒浩さん・明和電気社長の土佐信道さんに加え、ITジャーナリストの林信行さんが司会をつとめたパネルディスカッション「Pepperのいる未来」の模様をお伝えする。
約1000人ほどの観覧者のスマートフォンに特別なアプリをインストールし、Pepperが振る指揮棒の方向のスマートフォンが一斉に光り出し、まるでPepperが会場中のスマートフォンを操っているかのような魅惑的なショーに、来場者は多いに沸き上がった。
ライブ中継に対して、石黒さんが「Pepperでやればよかったのに」と指摘。
石黒さんは本物の人間と瓜二つのロボットを手がけていることで有名だが、このようなパネルディスカッションで本人の代わりに遠隔操作したロボットで登壇したこともあるという。
「明和電気お馴染みの工員の制服を着ていればPepperでも変わらないよ」という石黒さんのコメントには、会場中も大いに賛意を示し、ディスカッションは笑いに包まれてスタートした。
一番高級なアンドロイドはこれまで1体1億円以上する場合もあったので、「20万円弱という破格の値段で手に入るようになると世の中が変わる」とは石黒さん。
ただ、気をつけなくてはいけないのは、ガジェットなどと違い、ひとたび人型だと脳が認識すると、途端に人は厳しい態度をとるようになることがあるということ。例えばスマートフォンが音声を上手く認識しなくても許されても、ロボットが認識できないと感情的になる人が多いそうなのだ。
既に多くのロボット開発を手がけてきた石黒さんは、まずは社会がロボットとの接し方を理解しなくてはいけない、という。理解が深まった上で、Pepperでの英会話など、言語教育などの教育分野に応用されていけばますます広がっていく。最終的に社会全体でロボットをどう使えばいいかの共通認識が形成されていけば、真の面白さが発揮されてくる、という普及のロードマップを展開。
猪子さんはなんと、Pepperを最初に見たときから、見るたびに虐めたくなって仕方ないそうだ…! いくら叩いても上目遣いで見てくるところが、さらに加虐心を煽るのだとか。
土佐さんは、これまでにPepperの前機種「NAO」を、アートユニット・明和電機としてのパフォーマンスで使ったことがあるそう。しかし、びっくりするぐらい壊れやすいそうだ。
コントロールできないものが家庭の中に入ってくることをどれだけ許容できるかが、ロボットとの接し方を考える上で大切になってくるようだ。
そのアプリとは……まさかのジョジョネタ。「岸辺露伴ごっこ」と名付けられたアプリは、自分で描いた絵をPepperに見せてスタンド名「ヘブンズドア」と叫ぶと、人を本にして情報を解読できる作中のスタンド能力にちなんで、アクションログが出てくるアプリだそうだ。
石黒さんは、来場者の7割がゲーム、3割が教育関係者だろうと予測。だが、自分はそのどちらにも当てはまらない、Pepper王国づくりがしたいそうだ。
具体的には、Pepperが2体いる状態で人間が何か喋りかけたときに、その話は受け流してPepper同士で勝手に「あいつ何言ってるかわかんないよね〜」などPepperの世界を展開させ、Pepperが人間より優位に立ったらどうなるのかを体験したいと語った。 林さんと猪子さんもこの面白さに賛同し、ソフトバンクには2個セットでの販売をしてほしいという結論に至った。
それには猪子さんも「Pepperを見て人類や自分ってなんだろうって考えるきっかけになる。哲学者が増えるんじゃないかな」と応じた。
PepperホテルっていうPepperがいっぱいいるホテルを作ったら、人類って惨めだなと思えていいかもしれないと石黒さん。
石黒さんがM、猪子さんがSとキレイに二分された状況に、会場に笑いが起こった。
土佐さんは、Pepperを使ってみて改善点がかなり多いと感じたそうだ。
具体的には、耳がスピーカーになっているのは横から音が聞こえて気持ち悪いので、前から出るようにしたいと言ってイラストで披露したこのオプション。 次に、肩がすぐにオーバーヒートする点。これに対しては、肩にファンを付けることで解決したいという。シュールなイラストで爆笑に包まれる会場。 さらには、目覚まし時計、ヘルメットなど……豊かな発想の発明品を披露してくれた。 実際に、前から音が聞こえるようにする耳のアタッチメントは3Dプリンターでつくりたいとのこと。
あれだけのセンサー類などは当然20万円弱でつくれる訳がなく、部品取りして売った方が儲かるらしいのだ。ソフトバンクがどこまでそれを許してくれるのかが最大の焦点だ、とまたもや会場に笑いの渦を巻き起こしてパネルディスカッションは終了。
アートユニットとして活動する一方、さすが吉本に所属する土佐さん、Pepperの魅力を語りながらイベントを盛り上げていた。
スマートフォン市場にいち早く目を付け、日本でのiPhone普及に大いに貢献したソフトバンク社長・孫正義さんが本気で取り組むロボット事業。8月1日には、この事業のために新しくソフトバンクロボティクス株式会社を立ち上げた。それは、Pepperから世界が変わると確信しているからなのかもしれない。
筆者も実際に動いているPepperを見て、少なくともスマートフォン以来の大きなうねりが生まれそうだと確信せざるを得なかった。
秋葉原・3331 Arts Chiyodaに開設された「アルデバラン・アトリエ秋葉原 with SoftBank」を覗いてみたり、「デベロッパー先行モデル」を手に入れることで、このビックウェーブに乗り遅れないようにしたい。
制作したのが海外の会社だということもあって、これまでその全容は謎に包まれていた。
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ソフトバンクのロボット「Pepper」お披露目! 記者会見で大暴れ!?そして、9月20日(土)に満を持して開催された「Pepper Tech Festival 2014」では、デベロッパー達が待ちに待った詳細の発表と、Pepperの「デベロッパー先行モデル」の予約が開始された。
今回は、Google Developer Expertの安生真さん・チームラボ代表の猪子寿之さん・ロボット工学者の石黒浩さん・明和電気社長の土佐信道さんに加え、ITジャーナリストの林信行さんが司会をつとめたパネルディスカッション「Pepperのいる未来」の模様をお伝えする。
チームラボの「光と音のオーケストラ」
パネルディスカッションが始まる前、登壇者のひとりでもある猪子寿之さんが率いるチームラボによる特別ショー「光と音のオーケストラ」が行われた。約1000人ほどの観覧者のスマートフォンに特別なアプリをインストールし、Pepperが振る指揮棒の方向のスマートフォンが一斉に光り出し、まるでPepperが会場中のスマートフォンを操っているかのような魅惑的なショーに、来場者は多いに沸き上がった。
Pepperで登壇するのが正しい形?
土佐さんは、大阪の吉本興業本社よりライブ中継での参加。なぜお笑い事務所の吉本から中継するのかと思われるかもしれないが、じつは吉本は「よしもとロボット研究所」という機関を設立し、積極的にロボット研究を行っている。ライブ中継に対して、石黒さんが「Pepperでやればよかったのに」と指摘。
石黒さんは本物の人間と瓜二つのロボットを手がけていることで有名だが、このようなパネルディスカッションで本人の代わりに遠隔操作したロボットで登壇したこともあるという。
「明和電気お馴染みの工員の制服を着ていればPepperでも変わらないよ」という石黒さんのコメントには、会場中も大いに賛意を示し、ディスカッションは笑いに包まれてスタートした。
Pepperの印象——ロボットとの接し方を社会が理解する過程が面白いはずっ!
まずは、林さんがパネラーにPepperの第一印象を聞いた。 安生さんは「ぶっちゃけ、キモいと思った」と素直な感想。動物型でもなく完全な人型でもない「ロボット型」は、観る人によって様々な感情を想起する。一番高級なアンドロイドはこれまで1体1億円以上する場合もあったので、「20万円弱という破格の値段で手に入るようになると世の中が変わる」とは石黒さん。
ただ、気をつけなくてはいけないのは、ガジェットなどと違い、ひとたび人型だと脳が認識すると、途端に人は厳しい態度をとるようになることがあるということ。例えばスマートフォンが音声を上手く認識しなくても許されても、ロボットが認識できないと感情的になる人が多いそうなのだ。
既に多くのロボット開発を手がけてきた石黒さんは、まずは社会がロボットとの接し方を理解しなくてはいけない、という。理解が深まった上で、Pepperでの英会話など、言語教育などの教育分野に応用されていけばますます広がっていく。最終的に社会全体でロボットをどう使えばいいかの共通認識が形成されていけば、真の面白さが発揮されてくる、という普及のロードマップを展開。
猪子さんはなんと、Pepperを最初に見たときから、見るたびに虐めたくなって仕方ないそうだ…! いくら叩いても上目遣いで見てくるところが、さらに加虐心を煽るのだとか。
土佐さんは、これまでにPepperの前機種「NAO」を、アートユニット・明和電機としてのパフォーマンスで使ったことがあるそう。しかし、びっくりするぐらい壊れやすいそうだ。
コントロールできないものが家庭の中に入ってくることをどれだけ許容できるかが、ロボットとの接し方を考える上で大切になってくるようだ。
Pepperを使って何をつくる?
安生さんは既に簡単なアプリをつくってみたそうだ。そのアプリとは……まさかのジョジョネタ。「岸辺露伴ごっこ」と名付けられたアプリは、自分で描いた絵をPepperに見せてスタンド名「ヘブンズドア」と叫ぶと、人を本にして情報を解読できる作中のスタンド能力にちなんで、アクションログが出てくるアプリだそうだ。
石黒さんは、来場者の7割がゲーム、3割が教育関係者だろうと予測。だが、自分はそのどちらにも当てはまらない、Pepper王国づくりがしたいそうだ。
具体的には、Pepperが2体いる状態で人間が何か喋りかけたときに、その話は受け流してPepper同士で勝手に「あいつ何言ってるかわかんないよね〜」などPepperの世界を展開させ、Pepperが人間より優位に立ったらどうなるのかを体験したいと語った。 林さんと猪子さんもこの面白さに賛同し、ソフトバンクには2個セットでの販売をしてほしいという結論に至った。
土佐さんのユニークすぎるアイデア連発に会場は笑いの渦!
林さんがパネラーに「今後Pepperにどう進化してほしい?」と聞くと、石黒さんはやはりソフトウェアを進化させ相互連携してほしいという。街でPepper同士がすれ違ったときに互いに挨拶したり、他のPepperが困っている時に助けるなどの連携機能が付けば、まさに“Pepperという種族”がいるかのようになる。それには猪子さんも「Pepperを見て人類や自分ってなんだろうって考えるきっかけになる。哲学者が増えるんじゃないかな」と応じた。
PepperホテルっていうPepperがいっぱいいるホテルを作ったら、人類って惨めだなと思えていいかもしれないと石黒さん。
石黒さんがM、猪子さんがSとキレイに二分された状況に、会場に笑いが起こった。
土佐さんは、Pepperを使ってみて改善点がかなり多いと感じたそうだ。
具体的には、耳がスピーカーになっているのは横から音が聞こえて気持ち悪いので、前から出るようにしたいと言ってイラストで披露したこのオプション。 次に、肩がすぐにオーバーヒートする点。これに対しては、肩にファンを付けることで解決したいという。シュールなイラストで爆笑に包まれる会場。 さらには、目覚まし時計、ヘルメットなど……豊かな発想の発明品を披露してくれた。 実際に、前から音が聞こえるようにする耳のアタッチメントは3Dプリンターでつくりたいとのこと。
Pepperは分解した方が儲かる!?
時間もすくなくなってきたとのことで、締めを頼まれた土佐さんは「じつはPepperは分解して部品を売った方が儲かる」という問題発言!あれだけのセンサー類などは当然20万円弱でつくれる訳がなく、部品取りして売った方が儲かるらしいのだ。ソフトバンクがどこまでそれを許してくれるのかが最大の焦点だ、とまたもや会場に笑いの渦を巻き起こしてパネルディスカッションは終了。
アートユニットとして活動する一方、さすが吉本に所属する土佐さん、Pepperの魅力を語りながらイベントを盛り上げていた。
Pepperの登場で人間観が変わる
世界中がロボットで満たされたとき、我々人類はいままでに体験したことがないような、人間観の転覆というコペルニクス的転回を味わうことになるのかもしれない。スマートフォン市場にいち早く目を付け、日本でのiPhone普及に大いに貢献したソフトバンク社長・孫正義さんが本気で取り組むロボット事業。8月1日には、この事業のために新しくソフトバンクロボティクス株式会社を立ち上げた。それは、Pepperから世界が変わると確信しているからなのかもしれない。
筆者も実際に動いているPepperを見て、少なくともスマートフォン以来の大きなうねりが生まれそうだと確信せざるを得なかった。
秋葉原・3331 Arts Chiyodaに開設された「アルデバラン・アトリエ秋葉原 with SoftBank」を覗いてみたり、「デベロッパー先行モデル」を手に入れることで、このビックウェーブに乗り遅れないようにしたい。
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