新海誠監督の最新作『すずめの戸締まり』のBlu-ray/DVDが9月20日(水)に発売される。
2022年11月の劇場公開から約10カ月でのリリースとなる。
2022年11月11日の公開から瞬く間に観客動員数を増やし、のべ1000万人以上が劇場で鑑賞。国内での最終興行収入は147.9億円を記録し、大ヒット映画となった。(※1)
歴代興行収入(興行通信社調べ)では15位にランクインを果たし、第46回日本アカデミー賞「優秀アニメーション作品賞」を受賞するなど、数々の快挙を成し遂げている。
海外映画祭での評価も高く、世界三大映画祭のひとつである第73回ベルリン国際映画祭では、日本のアニメ映画としては『千と千尋の神隠し』以来、21年ぶりに「コンペティション部門」に選出。
さらに2023年4月に中国本土での興行収入が日本を上回ると、日本映画作品における海外興行収入1位を達成。まさに世界に誇れる日本のアニメーション作品と言っても過言ではないだろう。
舞台は九州・宮崎県の静かな町。叔母とふたりで暮らす17歳の女子高生・岩戸鈴芽(いわと すずめ)は学校に向かう途中で、謎めいた美青年・宗像草太(むなかた そうた)と出会う。
草太は、地震などの災いを封じる使命を背負った「閉じ師」だ。
鈴芽は椅子に姿を“椅子”に変えられてしまった草太とともに、日本各地にある災いが封じられた「扉」の鍵を締める旅に出る。
『すずめの戸締まり』は、少女と椅子の異色のバディが旅をするロードムービーだ。『君の名は。』『天気の子』から引き続き、男女の恋愛も描きつつ、本作では少女の視点から物語が描かれる。
思い切りがよく行動力にあふれた鈴芽と、椅子の姿でコミカルに動きまわる草太。
ふたりの旅の終着点に待つものは、果たして—―。
それは、災害孤児である鈴芽の設定、冒頭から繰り返される地震の描写、「場所を弔う」というテーマからも明らかだ。
なぜ、新海誠氏は「東日本大震災」を題材にしたのか。
とはいえ、新海作品の劇中で災害を取り上げるのは『すずめの戸締まり』が初めてではない。
『君の名は。』(2016年)では彗星の落下という未曽有の災害が町を襲い、『天気の子』(2019年)では降り続ける雨により水没した都市の風景が描かれる。
これまでの作品では、あくまで架空の災害が扱われていたが、その発想の原点は東日本大震災の体験であり、『すずめの戸締まり』についても「震災と無縁の物語を描くことはできなかった」と語っている。(※2、3)
最新作となる『すずめの戸締まり』では、旧来の作品からさらに一歩、現実に歩み寄り、あのとき失われたものに対する「祈り」をエンターテイメント作品として、物語として昇華させた。
その一例として、物語のクライマックスで草太が言い放つ台詞をとりあげたい。
一方で、現実を生きる私たちは、今なお、どこか窮屈な暮らしを強いられている。毎年報じられる気候変動、たびたび襲いくる地震や洪水などの災害、そして新型コロナウィルス感染症の拡大。ただ、漠然と生きているだけでも、人の弱さや、命の儚さを知るには十分すぎる日々だった。
草太の声は、襲いくる災いに抗う“小さな個”の切実な叫びであり、痛烈な祈りだ。そのメッセージの真摯さこそが、この映画は多くの人々の心に届いた理由ではないだろうか。
なんといっても、物語の冒頭、半袖の制服を着たすずめが旅立つのは夏の終わりのころだ。残暑のさなかに鑑賞すれば、その情景を一層味わえることだろう。
また、DVDおよびBlu-rayのレンタル開始も同日9月20日に予定している。この機会に鑑賞をしてみてほしい。
※2 新海誠監督ロングインタビュー(1)「ずっと考えてきた震災を描く覚悟を決めた」「アニメでなければ」との自負も|時事ドットコム(2022年12月13日)
※3 アニメ映画「すずめの戸締まり」 新海誠監督が東日本大震災を描いたわけは|知っトク東北-NHK(2022年12月13日)
2022年11月の劇場公開から約10カ月でのリリースとなる。
海外興収で歴代1位、日本を代表する新海誠作品に
『すずめの戸締まり』は、新海作品ならではの映像美と、心揺さぶるストーリーが話題を呼んだ長編アニメーション映画だ。2022年11月11日の公開から瞬く間に観客動員数を増やし、のべ1000万人以上が劇場で鑑賞。国内での最終興行収入は147.9億円を記録し、大ヒット映画となった。(※1)
歴代興行収入(興行通信社調べ)では15位にランクインを果たし、第46回日本アカデミー賞「優秀アニメーション作品賞」を受賞するなど、数々の快挙を成し遂げている。
海外映画祭での評価も高く、世界三大映画祭のひとつである第73回ベルリン国際映画祭では、日本のアニメ映画としては『千と千尋の神隠し』以来、21年ぶりに「コンペティション部門」に選出。
さらに2023年4月に中国本土での興行収入が日本を上回ると、日本映画作品における海外興行収入1位を達成。まさに世界に誇れる日本のアニメーション作品と言っても過言ではないだろう。
少女と椅子、異色のロードムービー『すずめの戸締まり』
『すずめの戸締まり』は、夏の終わりに心を温める感動を味わいたい方にぴったりの作品といえる。舞台は九州・宮崎県の静かな町。叔母とふたりで暮らす17歳の女子高生・岩戸鈴芽(いわと すずめ)は学校に向かう途中で、謎めいた美青年・宗像草太(むなかた そうた)と出会う。
草太は、地震などの災いを封じる使命を背負った「閉じ師」だ。
鈴芽は椅子に姿を“椅子”に変えられてしまった草太とともに、日本各地にある災いが封じられた「扉」の鍵を締める旅に出る。
『すずめの戸締まり』は、少女と椅子の異色のバディが旅をするロードムービーだ。『君の名は。』『天気の子』から引き続き、男女の恋愛も描きつつ、本作では少女の視点から物語が描かれる。
思い切りがよく行動力にあふれた鈴芽と、椅子の姿でコミカルに動きまわる草太。
ふたりの旅の終着点に待つものは、果たして—―。
なぜ今、”震災の記憶”なのか
ここからはクライマックスのネタバレになるが、『すずめの戸締まり』は2011年3月に起きた「東日本大震災」を強く意識した映画である。それは、災害孤児である鈴芽の設定、冒頭から繰り返される地震の描写、「場所を弔う」というテーマからも明らかだ。
なぜ、新海誠氏は「東日本大震災」を題材にしたのか。
とはいえ、新海作品の劇中で災害を取り上げるのは『すずめの戸締まり』が初めてではない。
『君の名は。』(2016年)では彗星の落下という未曽有の災害が町を襲い、『天気の子』(2019年)では降り続ける雨により水没した都市の風景が描かれる。
これまでの作品では、あくまで架空の災害が扱われていたが、その発想の原点は東日本大震災の体験であり、『すずめの戸締まり』についても「震災と無縁の物語を描くことはできなかった」と語っている。(※2、3)
最新作となる『すずめの戸締まり』では、旧来の作品からさらに一歩、現実に歩み寄り、あのとき失われたものに対する「祈り」をエンターテイメント作品として、物語として昇華させた。
その一例として、物語のクライマックスで草太が言い放つ台詞をとりあげたい。
物語のなかで、草太は災害を封じる役割を担う「閉じ師」として、大きな使命を背負うことになる。彼の犠牲により、世界は救われようとさえする。「命がかりそめだとは知っています。死は常に隣にあると分かっています。それでも私たちは願ってしまう。」
「いま一年、いま一日、いまもう一時だけでも、私たちは永らえたい。猛き大大神よ! お頼み申す!」
一方で、現実を生きる私たちは、今なお、どこか窮屈な暮らしを強いられている。毎年報じられる気候変動、たびたび襲いくる地震や洪水などの災害、そして新型コロナウィルス感染症の拡大。ただ、漠然と生きているだけでも、人の弱さや、命の儚さを知るには十分すぎる日々だった。
草太の声は、襲いくる災いに抗う“小さな個”の切実な叫びであり、痛烈な祈りだ。そのメッセージの真摯さこそが、この映画は多くの人々の心に届いた理由ではないだろうか。
「すずめの戸締まり」公式サイトより
BD/DVDは2023年9月20日に発売
『すずめの戸締まり』は、新海誠さんの過去の作品を知っている方はもちろん、初めて彼の作品を観る方にも楽しめる内容となっている。なんといっても、物語の冒頭、半袖の制服を着たすずめが旅立つのは夏の終わりのころだ。残暑のさなかに鑑賞すれば、その情景を一層味わえることだろう。
また、DVDおよびBlu-rayのレンタル開始も同日9月20日に予定している。この機会に鑑賞をしてみてほしい。
出典
※1 『すずめの戸締まり』興収147.9億円で終映 『崖の上のポニョ』に次ぐ歴代興収14位|ORICON NEWS(2023年5月29日)※2 新海誠監督ロングインタビュー(1)「ずっと考えてきた震災を描く覚悟を決めた」「アニメでなければ」との自負も|時事ドットコム(2022年12月13日)
※3 アニメ映画「すずめの戸締まり」 新海誠監督が東日本大震災を描いたわけは|知っトク東北-NHK(2022年12月13日)
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ハルニレ
フリーライター。アニメ・ゲームを中心に旬なエンタメを話題にした執筆活動に勤しんでおります。マイブームは和菓子。心のふるさとは吉祥寺と京都市。
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