カバーイラストでキュビズムへ挑戦
──今回のカバーイラストですが、『VISIONS 2023』のテーマでこのポーズにしようと思った理由を教えてください。Mika Pikazo 以前に画集を出したときもそうですが、自分が好きなモチーフは、何よりも「そこに生きている人間」ですので、女の子が前面にバンといる構図にしました。「どストレートに見た人とこの女の子の目が合う作品にしたい」と思って描きました。
──顔に焦点を当てているということもありますが、しっかりした順光が目を引きます。また、この髪の毛の色の複雑さは、Mika Pikazoさんの作品でもあまり見たことがない表現だと思うのですが……。
Mika Pikazo キュビズム的な表現が好きなんです。アートでもピカソさんやジョルジュ・ブラックさんなどのキュビズムや、アンディ・ウォーホルさんの作品のようなはっきりした平面的なモチーフがすごく好きです。立体的に仕上がっているより、絵としての1つの完成度を見せる、みたいな作品は、自分の中の原点なんです。パーツや絵の立体感ではなく、デザイン的にもアート的にも見せるという、デッサンにとらわれないものが好きですね。
キュビズムのように直線を使った表現は、ずっとやりたかったことでした。今回のカバーイラストの髪の描写では線や円形を盛り込んでいますが、キュビズムのように幾何学的な線でイラストを描くことに対して憧れがありました。今までもどうにか自分の絵にも取り入れられないかと模索していたんですが、自分の絵とキュビズム的な表現との親和性が低くて……。
今回のカバーでは、それを少しでも表現できないかと思って挑戦しています。髪の毛が髪の毛としてある、というよりは、1つのデザインの入れ込みをする場にする、みたいなことを狙っています。
ロサンゼルスの「Anime Expo」で感じた熱量
──Mika Pikazoさんは日本でコミケやイベントによく出られていますが、先日行かれたロサンゼルスの「Anime Expo」は日本とはまた違う雰囲気だったのでは? Mika Pikazo サイン会をやったときに、ロサンゼルスでは自分の感想を伝えてくれる方がとても多いと思いました。日本でも感想を伝えてくださる方は多いですが、アメリカの方は「俺のこの想いを聞いてくれ!」みたいな熱を感じました。嬉しいですね。──現地で言われて嬉しかった感想はありましたか?
Mika Pikazo 「自分のイラストや関わっているコンテンツは、まだそこまで海外の方に認知されているわけではない」と思っていましたが、ちゃんとアンテナを張って見てくださっていて感動しました。自分がキャラクターデザインをしていて、発表されて間もない『電音部』も、本当に興味を持っていただいていて嬉しかったです。
日本にいると、日本の方に喜んでもらえるようなコンテンツにと無意識的に頭が行ってしまいがちですが、海外の方、アメリカの方もすごく見てくれていることがわかって、そういう方たちにももっと喜んでもらいたいと思いました。
──僕もご一緒させていただいたんですが、海外ファンは個々のイラストというより、著名なコンテンツだけに関心がある人が多いと思っていました。でも、「Mika Pikazoさんのファンです!」という人がかなりたくさんいて、情報をディープにしっかりと押さえていることがわかったのは本当に嬉しかったですね。 Mika Pikazo 「Anime Expo」でも、日本のアニメやゲームのキャラクターを愛している方や楽しんでいる方が本当に多い。純粋に「いい」と思って楽しんでくれているのは、つくり手としてすごく嬉しいです。こんなに世界中に日本のコンテンツやイラストを楽しんでいる人がいる、というのは元気をもらえます。
──現地ではコヤマシゲトさん、hukeさん、田島光二さんなど海外で活躍している日本のクリエイターさんとも会えましたね。
Mika Pikazo みなさん、すごく大きなプロジェクトに関わっていてアメリカでも活躍中で、その合間を縫って会ってくださって本当に嬉しかったです。そしてお会いした正直な感想は「めちゃくちゃ悔しくてたまらなかった」です(笑)。
3人とも世界で大活躍している方たちなので、自分も「負けたくない」という気持ちが強くなって。アメリカに行った感想は、「野心が湧き上がる」でした。もっと頑張らなきゃいけないと、思った以上に刺激されました。 ──これからのMikaさんの目標を教えてください。
Mika Pikazo 20代前半から中盤は、好きなことを仕事にしていく、そしてその業界を知っていくというターンで、がむしゃらにやってきましたが、ここからは自分1人だけでつくれないものをつくっていく、そしてそういうものをつくるためにより自分に向き合うこと、自分の表現したいことを実現するために様々な努力をしていくことが必要だと思っています。
ちょっとでもサボると錆びていってしまうので、もっと描いて描いて、なりふり構わず学んでいく、挑戦していく、もっといろいろな表現を身につけなくちゃいけないし、毎日、起きて寝るまでいつも「なんとかしなくちゃ」と思ってしまうくらい強い強迫観念があります。
不安と焦燥感でいっぱいで、だからこそ何が楽しいか、何が喜びなのかを考えつくっていく。そこは本気でやらなきゃいけない。好きということ以上の何かをつくっていくために、もう一度、Mika Pikazoというものを再始動していきたいと思っています。
──新しいことに挑戦し続けるMikaさんの活躍を今後も楽しみにしています。ありがとうございました。
【画像】Mika Pikazo『VISIONS 2023』カバーイラストのメイキングほか(15枚)
関連商品
頁数: 352ページ
言語: 日本語
定価:3,080円(本体2,800円+税)
判型:B5(縦182×横257mm )
印刷:フルカラー(ブリリアントパレット®)※ブリリアントパレット®は、株式会社廣済堂の登録商標です
ISBN:978-4-04-681637-5
出版社: 株式会社KADOKAWA
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書誌情報
『VISIONS 2023 ILLUSTRATORS BOOK』
- 発売日
- 2022年10月4日(火)
- 頁数
- 352ページ
- 言語
- 日本語
- 定価
- 3,080円(本体2,800円+税)
- 判型
- B5(縦182×横257mm )
- 印刷
- フルカラー(ブリリアントパレット®)※ブリリアントパレット®は、株式会社廣済堂の登録商標です
- ISBN
- 978-4-04-681637-5
- 出版社
- 株式会社KADOKAWA
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Mika
イラストレーター
東京都生まれ。高校卒業後、南米の映像技術や広告デザイン、音楽に興味を持ち、約2年半ブラジルへ移住。その後帰国しイラストレーターとして活動を開始。
鮮やかな色彩感覚、魅力的なキャラクターデザインを得意とし、様々なジャンルでデザインやキービジュアルを手がける。 VTuber「Hakos Baelz」や「輝夜 月」キャラクターデザイン・ライブアートディレクション・アパレルデザイン、初音ミク「マジカルミライ 2018」メインビジュアル、『プロジェクトセカイ』衣装デザイン、『電音部』『Fate/Grand Order』キャラクターデザインなど。
虎硬
イラストレーター・プロデューサー
1986年生まれ。イラストレーター、プロデューサー。ピクシブ株式会社所属。京都芸術大学准教授。アートブック『VISIONS』シリーズ総監修。著書に『ネット絵史 インターネットはイラストの何を変えた?』(ビー・エヌ・エヌ新社)、『はじめてでもわかる!イラストでお金を生み出す秘訣 神技作画シリーズ』(KADOKAWA)。
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