『たんもし』と一緒に勧めたい『秘密結社デスクロイツ』
さて、そんな『たんもし』とあわせてオススメしたいライトノベル作品が、同じくアクション、ギャグ、ラブコメと様々な要素が入り乱れた、林トモアキ『秘密結社デスクロイツ』(星海社FICTIONS)である。著者の林トモアキは2001年に『ばいおれんす☆まじかる!』(角川スニーカー文庫)でデビュー。『戦闘城塞マスラヲ』(角川スニーカー文庫)や『ミスマルカ興国物語』(角川スニーカー文庫)が代表作の林にとって、本作が初めて角川スニーカー文庫以外から刊行されたシリーズとなる。2021年6月に第1巻が刊行されたばかりの新作だ。
タイトルにも冠されている秘密結社デスクロイツとは、主人公・不夜城織太が属する悪の組織。この世界ではヒーローと悪の組織が企業として多数存在していたが、メディアの普及とともに続々と悪の組織が廃業に追い込まれ、デスクロイツもすでに社員5名と家族経営の危機に瀕している。
加えて総統である姉・不夜城あびす(悪の組織を率いる立場でありながら、成人マンガ家としても活動)はやる気がない始末……。そこで織太は悪の組織の矜持を守るべく、美少女ヒーローたちを迎え撃つ。
春クールにアニメ化もされた暁なつめ『戦闘員、派遣します!』(角川スニーカー文庫)と同じく、悪の組織側が主人公となる本作。その魅力はやはり、一癖もふた癖もある構成員たちと、美少女ヒーローたちとの戦いと掛け合いにある。
一筋縄ではいかない林トモアキ流“ダークヒーロー”
悪の組織が再起を図って行動を起こすというだけなら、ダークヒーローものにもなるかもしれないが、そこをそう一筋縄ではいかせないのが林トモアキ流。そもそも編集者からのオーダーが「テンションの高いラブコメ」であったことから自明であるが、深夜に出歩く人々を襲うという悪らしい行動を起こしながらも、そこに登場する美少女ヒーロー・超装姫エクサージュとはコミカルな会話を交わし、読者の笑いを誘う。
そして彼女はデスクロイツに敗北することになるのだが、基地に連れていかれたあとどんな酷いことをされるのかと思いきや、これまた笑える展開が待ち受けている。
第1巻の巻末では今秋に続巻の刊行も予定されており、これからさらなる「抗争」も予感させる本作。前述の『戦闘員、派遣します!』や『俺、ツインテールになります。』などの特撮ヒーローチックでありながらギャグも多めなコメディが好きな人にはぜひオススメしたい作品だ。
コロナ禍ということもあり、例年以上に外出を避けるであろうこの夏。家で冷房を効かせながらどうやって過ごすか悩んでいる人にも、『探偵はもう、死んでいる。』と『秘密結社デスクロイツ』をぜひオススメしたい。
これも推したい! 今月のプラスワン
YOASOBI、ヨルシカといったボーカロイド出身のコンポーザーとシンガーとのユニットがヒットを飛ばす昨今。本作はそんな音楽ユニット「満月の夜に咲きたい」(通称・まんさき)推しの男子高校生・夜宮光助が、「まんさき」ボーカル・U-Kaの正体がクラスメイトの花房憂花であると知ったことではじまるラブコメディ。推しに繋がってはいけない、という奥ゆかしいオタク心で自制する光助と、本性を知られたことで徐々に彼に心を許していく憂花の甘酸っぱい日々がたまらない一作だ。
ラノベの変遷をもっと知る
2
この記事どう思う?
関連リンク
連載
毎クールごとに膨大な量が放送されるアニメ。漫画やライトノベルを原作としたもの、もしくは原作なしのオリジナルと、そこには新たな作品・表現との出会いが待っている。 連載「アニメーションズ・ブリッジ」では、数々の作品の中から、アニメライター兼ライトノベルライターである筆者が、アニメ・ラノベ etc.を橋渡しする作品をピックアップ。 「このアニメが好きならこの原作も」、そして「こんな面白い新作もある」と、1つの作品をきっかけにまだ見ぬ名作への架け橋をつくり出していく。
0件のコメント